様々な犯罪やテロ、広域災害などに怯えることなく暮らせる安心・安全な社会。そのニーズはいつの時代も変わらない。その実現の仕方は徐々に進歩している。カギを握るのは人工知能(AI)やセンシングを中心とするデジタルテクノロジー。安心・安全はどこまで進化するのか。これからの警備の姿を見てみよう。

日本での警備会社のスタートは、1964年の東京オリンピックのころに遡る。海外の動向を受けて、国内でも警備会社を、として1962年に起業したのがセコムである。その後、東京オリンピックで選手村の警備を請け負ったことが契機となり、企業向けの警備サービスとしての「ガードマン」の認知度が高まった。

東京オリンピックの翌年、1966年には綜合警備保障(ALSOK)が企業。国内で警備サービスが本格化していった。

実は、警備サービスの歴史はICTとともにある。当初、警備サービスはすべて警備員の派遣によるものだった。その後、認知度の高まりとともに需要が増え、警備員の数も増加した。ただ、警備のためだけに多くの人手を充てることは、社会全体での生産性向上に結びつきにくい。それが増え続けていくことを問題視したセコムが考えたのが、契約先の状況を遠隔監視するオンラインセキュリティだった。

それから約50年。セコムもALSOKも、ホームセキュリティ、サイバーセキュリティなどサービスの幅を広げ、防犯だけでなく、防災、さらには医療・介護、生活支援までを含めた、社会の安心・安全を追求してきた。

そして今、取り組もうとしているのが、最新のデジタル技術を活用した「新しいおもてなし」(ALSOK)である。

画像認識✕AIで「ゾーン」を守る

ALSOKは2018年1月、三菱地所と共同で「新しいおもてなしサービス」の実証実験を行った。実験の場は東京・丸の内の新丸の内ビルディング。ビル内のあちらこちらに設置したカメラで撮影した映像をリアルタイム解析し、道に迷って周囲を見渡している、体調が悪くてしゃがみこんでいるなど、ビル内で「困っている人」の行動と位置を自動検知する。

これは、オフィスセキュリティやホームセキュリティといった施設警備、輸送警備、身辺警護といった各種警備サービスのうち、雑踏警備と呼ばれる、「ゾーン」を守るサービス。画像認識などのデジタル技術が進歩したことで、今後、高度化が期待されている領域である(図1)。テロリスト対策なども、この領域だ。

(図1)AIを駆使して「ゾーン」を守る
(ALSOKの説明資料から引用)

監視映像から人の行動を解析した結果を、エリアを巡回する警備員/係員のスマートフォンに通知し、現場に係員を急行させるなど状況に応じて適切な対応をする。従来はパトロール要員の目視により行っていた「見回り」を、デジタル技術で補助することで、きめ細やかな状況把握を可能にする。

警備というと防犯を考えがちだが、デジタルテクノロジーを駆使した防犯システムは、こうした一種の「おもてなし」にも役立つ。エリアのセキュリティ向上、各種事故防止にもつながる。

肝になるのは画像認識のAIである。例えば広角の監視カメラで撮影した映像で、数百メートル以上離れた場所の異常を見つける場合を考えよう。人の眼では、動きの変化が小さすぎて、変わっていることを識別するのは難しい。これに対してコンピュータ解析なら、わずかな画像の変化も捉えられる。

これにディープラーニングを組み合わせれば、鳥が飛んでいるのか、もっとずっと遠くを航空機が飛んでいるのかなど、その変化が何を意味するのかを自動識別できる。人のわずかな行動の変化や、平常時との動きの違いを見分けられれば、群衆の中で発生した異常も見つけられる。これを、「人が何かに困っている様子」という観点で使えば、「新しいおもてなし」を実現できる。

ALSOKは過去の経験などから、人の行動・動きのパターンによって何が起こっているのかを判別するノウハウを持っている。これをディープラーニングエンジンに学習させ、人が何に困っているのかを判別できるAIを作り出した。人の動きから、ディープラーニングに基づいて行動を解析するアルゴリズムを開発したのは、国内のAIベンチャー、パークシャ(PKSHA)テクノロジーである。