「地域循環共生圏」。環境省は、サーキュラーエコノミーと同様の概念に基づいたまちづくりを推進しようとしている。まず重視しているのは、IoT(Internet of Things)やAI(人工知能)といった技術をフル活用し、循環/共生の発想に基づいて、個性的で自立した地域社会を作っていくこと。それらをつないでいくことで、豊かな循環社会が出来上がるという考えだ。

サステナブルな社会――。SDGs(Sustainable Development Goals)の認知度が高まりつつある中で、資源を効率的に活用し、環境にやさしく、安心して暮らせる社会づくりは、いまや多くの企業が事業の目標に挙げるテーマである。実現に向けたポイントの一つは、資源を循環させ、自立した経済圏を作ることだ。

この考え方は循環経済(サーキュラーエコノミー)と呼ばれる。再生可能エネルギーとCO2排出量削減はもちろんだが、それだけではない。サーキュラーエコノミーには、プラスチックなど廃棄物からのリサイクル、植物由来の原料の活用、食料品の再利用によるフードロス抑制、さらにはシェアリング、サービサイジングといったものも含まれる。

概念としては、環境省が掲げる「地域循環共生圏」もほぼ同じだ。この地域循環共生圏は、2018年4月に閣議決定した「第五次環境基本計画」に盛り込まれている。

従来も、地域循環共生圏と似たコンセプトはあった。モノやエネルギーの生産/生成から消費を地域内で完結させる地産地消がその一つ。サステナブルな社会づくりを目指すスマートシティも同様である。

地域循環共生圏がこれまでのコンセプトと違っている点は、生産から消費までのチェーンだけでなく、消費から生産に戻る部分を含めた「循環」と「共生」を意識していること。加えて環境省は、人工知能(AI)やIoT(Internet of Things)、ブロックチェーンといった先進技術を活用した「人間中心の社会づくり」、つまりSociety 5.0を地域ごとに作り出していくことを意識している。

未来社会づくりの核となる地域循環共生圏の考え方について、環境省の森本英香・事務次官に聞いた。(以下、敬称略)

古くて新しい「地域循環共生圏」、価値観・ニーズの多様化が追い風に


― 環境省では「地域循環共生圏」を訴求しようとしていますね。言葉から、なんとなく想像できることもありますが、なぜ今なのか、なぜ「地域」と「循環」と「共生」なのか、想いを教えてください。


森本 世界的にSDGsへの意識が高まっています。ただ、今の社会はIoTをはじめとした技術の進歩とともに猛烈なスピードで変化しています。SDGsに対応して問題解決を大掛かりにやろうと思っても、社会の変化に間に合わない可能性があります。いきなり大きな仕掛けを考えるのではなく、地域に着目して足下を固めて取り組むことでSDGs実現の可能性が高まると考えています。

いわゆるThink globally, Act locallyですね。重要なのは、潜在的な地域資源を有効活用し、できるだけ自立的な社会を作っていくことです。地域資源とは、地域の人材、自然環境、農業などの地域産業、文化や歴史といった、地域ごとの「個性」にあたるものです。高齢化、人口減少と悲観的な見方が広がっていますが、日本は、世界に類を見ない豊かな自然資源や若手を中心に人材が豊富です。この「個性」を生かすことで、多様な個性をもった循環社会を地域毎に作っていくことが可能です。

個性を持ち自らの足で立っている地域社会を作ったうえで、他の地域社会あるいはもっと大きなシステムと連携していく。多様な地域社会群で構成される社会は、言ってみれば、一つのエコシステム、総体として見れば強靭な社会になっていくと考えています。