2016年4月、「ネットの高校」としてN高等学校は開校した。ネットによる授業をメインとした通信制高校で、KADOKAWAとドワンゴが設立母体となる学校法人角川ドワンゴ学園が運営している。在籍する生徒数は1万944人(19年8月末時点)のマンモス校だ。通学コースで通うことができるキャンパスは全国13校。開校以降、VR(仮想現実)技術を活用した「バーチャル入学式」や、ゲーム「ドラゴンクエストX」を活用した「ネット遠足」、高校生の起業支援を行う「N高起業部」、旧「村上ファンド」の代表を務めていた投資家・村上世彰氏がバックアップする「N高投資部」などが相次いで発表され、「新しい高校」として注目を集めている。開校から3年を経て感じる手応え、そして未来の教育についてどう考えているのか? N高等学校校長 奥平博一氏に話を聞いた。

N高等学校校長 奥平博一氏

――どのような経緯で開校するに至ったのでしょうか?

奥平 私自身、30年に渡り小学校や通信制高校など教育事業に携わってきていました。しかしながら、教育を新しくしていくことを考えた時に、教育事業会社だけでは難しいと感じていました。教育が担う責任は、子供を未来に送り出すこと。しかし、私が所属していた教育事業の組織では、世の中の動きや未来の教育について考える環境もゆとりもありませんでした。

これまでの教育は、今まで培われてきた教育を継続し、積み上げていくことを大事にしていた。しかし、仕事のあり方も変わり、AIや新しいテクノロジーも出てきた。そんな状況に対して、従来の教育事業だけで教育を考えられるのか。それで、思い切ってIT事業会社であるドワンゴにN高の企画を持ち込みました。

2017年のVR入学式(写真提供:N高等学校)

―― 全く違う環境の企業とプロジェクトを進めることに不安はなかったんですか?

奥平 最も教育と縁遠い会社かもしれませんでしたが、漠然と「若者にリーチするものを持っている会社と組む方が新しい教育を目指せる」と思っていました。

実際、驚かされることも多かったですよ。最初は、突拍子もないことを言ってくるので、教育を軽く見ているのかと思ったこともありました(笑)。ただ、真理は突いていた。超会議(ドワンゴが主催するニコニコ動画のオフラインミーティング)で文化祭を開催すると言われた時も最初はびっくりしましたが、子供たちからすると不思議なことでもなんでもなかった。ただ、子供たちの未来に責任を持つためには、突飛なことばかりではダメです。学校としての制度的な部分も含めて、両軸をやっています。

超会議による文化祭も開催(写真提供:N高等学校)

―― 現在は生徒数が1万人を超えています。開校当初と比べ、生徒や保護者の方の反応に変化はありましたか?

奥平 N高は、従来の通信制高校でもない。第三の新しい高校として開校しました。ネットであることの利点を前面に出し、「通信制高校」という言葉が抱えるネガティブなイメージを払拭するため通信という言葉は使わずに運営してきました。

開校当時も今も、入学する生徒たちは新しいもの、新しい教育を求めて入学してくれる子が多いです。ただ、当時と比べると、卒業生を輩出している分、N高を選ぶハードルが下がっているとは思います。

入学理由は様々です。通信制高校というと不登校の子のための学校というイメージが強いですが、N高で増えているのは自分がやりたいことに集中するために入学する子です。プロスポーツ選手も入学しています。オンラインで高校卒業のための学習を終えることができるので、空いた時間を自分の好きな時間に充てることができます。

―― 実際に卒業生はどのような進路を選んでいるのでしょうか?

奥平 進学は多いです。ネットの高校なので効率的に受験対策の勉強が行えますし、独自の受験コンテンツも開発しています。

ただ、同時にメルカリやクックパッドなどIT企業へのインターン、職業体験に進むケースも増えています。将来、その職業につくかどうかは別ですが、社会や職業に触れることで自分なりの職業観や、自身がやってみたいことを見つける機会を提供しています。その上で、大学進学を選ぶのか、就職を選ぶのか。

オックスフォード、スタンフォードと提携し、夏季プログラムも提供していますので、今後は留学コースにも力を入れたいと思っています。単に偏差値で縛られるのではなく、学びたいものを見つけ、自らが行きたい学校に向けて、自らが計画を立てていくのがN高のスタイルです。