もはや社会課題ともいえる夏の暑さ対策として、東京五輪に向けて注目されているミスト式冷却機。中でも濡れ感のほとんどない極微細ミストは、エアコンと比べヒートポンプ方式の熱交換による排熱がなく、ヒートアイランド現象を助長しないため、社会インフラとして設置が進んでいる。イベント会場や公共施設、小学校の校庭などのほか、全長約800メートルの通りすべてにミストを設置した商店街まで現れた。常設としては“日本一”の規模となるミストは、新たな“おもてなし”として集客につながるか。商店街の試みを紹介する。

濡れ感のないミストで歩行者に快適な涼空間を提供

JR常磐線、東京メトロ日比谷線・千代田線、東武伊勢崎線、つくばエクスプレスが乗り入れる北千住駅。江戸時代から五街道の一つである日光街道の宿場町として栄え、今も駅前には駅直結のマルイやルミネ、活気ある商店街が軒を連ねる。近年、5つの大学が開校したことで、若者も増えてきた。

そんな北千住でミスト式冷却機を大規模に設置したのは、北千住駅西口駅前から日光街道までつながる北千住駅西口美観商店街だ。1932年(昭和7年)の区画整理で誕生した商店街は「きたろーど1010(千住)」の愛称で親しまれ、バス通りの国道をはさんだ両側に約100店舗が並ぶ。雨よけのアーケードが整備された商店街は片側約400メートル(両側で約800メートル)。駅前らしく全国チェーンのドラッグストアや携帯ショップ、不動産屋、飲食店が多く、最近は流行のタピオカや高級食パンを販売する店舗も開店した。昨年3月には2016年に閉店していたイトーヨカードーの1号店も再開し、両側合わせて1日約40万人の人通りがあるという。

北千住駅西口美観商店街(写真:丸毛 透)

同商店街振興組合ではこれまでもアーケードや防犯カメラの設置、照明をすべてLEDに替えるといった、時代に即した設備のリニューアルを図ってきた。「自分たちでやれることはやり尽くした」(宗像宋次・同組合理事長)なか、課題となっていたのが夏の暑さ対策だった。

宗像理事長は「北千住は高齢の方も多く、30度を超えると外へ出るのもつらくなります。歩行者に涼しいイメージを持ってもらうため、我々ができることはミストしかないと考えました」と語る。資金面で一度は断念したが、東京都の商店街向け補助事業の活用等で設置費用の問題をクリア。実現にこぎ着けた。

北千住駅西口美観商店街振興組合 理事長 宗像宋次氏(写真:丸毛 透)

商店街計800メートルすべてにミストが設置されたのは昨年9月末。ミストは粒が極めて小さく、すぐに蒸発するため濡れ感がほとんどないタイプで、体感温度が4度下がるというデータもある。昨年の稼働期間は短かったが、気化冷却しやすい地上2.8メートルの高さから全アーケード内にミストが噴霧される光景は圧巻で、組合員からも利用者からも「清涼感がある」「濡れないので驚いた」と好評だったという。

800メートルある商店街の端から端までミストが設置されている(写真:丸毛 透)

宗像理事長は「歩道の真上からミストを出せたことがよかったと思います。ミストを避けて通る人が多いと思っていたが、多くの人がミストの下を歩いて楽しんでいました。ミストのメリットは、やはり話題性です。今年は5月頃から稼働していく予定で、どのような効果が出るのか、組合員もみなミストに期待しています」と話す。

同組合の田中貢事務局長も「お年寄りも小さいお子さんも安心安全にお買い物できる商店街であることが大前提」としたうえで、「我々の仕事は、いかにお客さんに足を運んでもらうか。よそにはない、これだけの規模のミストはインパクトがあり、大きな宣伝にもなると思います」と集客効果に期待を寄せる。

北千住駅西口美観商店街振興組合 事務局長 田中貢氏(写真:丸毛 透)

独自の技術で設置場所の自由度を広げる

設置されたのは、パナソニックのミスト式冷却機「グリーンエアコンFlex」。独自開発の2流体ノズルから平均粒径6~10マイクロメートルの極微細ミスト(シルキーファインミスト)を噴霧する最新型のミストシステムだ。極微細ミストは従来のミストより気化冷却効果が高いだけでなく、人が直接浴びてもすぐに蒸発するため肌に当てて体温を下げる効果も期待できるという。

2流体ノズルから極微細なドライ型ミストを噴霧する(写真提供:パナソニック)

環境面でもエアコンより排熱が少なく、ヒートアイランド現象を助長しない。屋外の暑さ対策の効果的なソリューションとして注目の技術だ。とりわけ「グリーンエアコンFlex」は、よりフレキシブルな施工ができることが強み。ミストノズルは低圧エアでミストを微細化している。耐久性に富む軽量の樹脂によるノズルの成型に成功したことで、設置場所と利用シーンの自由度が広がった。

北千住駅西口美観商店街のケースでは「アーケードの端から端までミストを設置したい」という要望に応えるため、アーケードにワイヤーを渡し、そこに配管パイプとミストノズル235個を取り付けた。歩道の中央ではなく少し車道側寄りに取り付けたのは、店舗に陳列した商品などが濡れないようにするためだ。また、コンプレッサーなどを内蔵する機器BOX47台は、アーケードを支える柱の上部に固定。機器BOXは歩行者からは全く見えない位置に設置されており、邪魔になることもない。

パナソニック株式会社アプライアンス社事業開発センターミスト事業推進室主務の赤澤国生氏は「社内でも、これだけの距離にミストを設置するのは初めてで、設置にあたってはパナソニックグループ2社の協力を得て、ワイヤーの素材まで検討しました。最終的に選んだのは、石川県のファブリックメーカー、小松マテーレの軽くて強いカーボンワイヤー「KABKOMA(カボコーマ)」です。夏の暑さに課題を抱えている方は多いと思いますので、今回の事例を生かし、さまざまな場所の課題解決につなげていきたい」と話している。

パナソニックアプライアンス社 カンパニー戦略本部事業開発センターミスト事業推進室 主務 赤澤 国生氏(写真:丸毛 透)