成長が速く、資源として長く活用されてきた竹。しかし近年、増えすぎた竹が「竹害」とも言われる環境破壊を引き起こしている。その竹を活用したビジネスで注目を集めているベンチャー企業がある。東京都と山口県に拠点を置くエシカルバンブーだ。第2の工場と竹分野の協働施設を2月29日にもオープンする。日本の「竹産業」の将来を描く旗手に話を聞いた。

(写真提供:エシカルバンブー)

縄文時代の遺跡からも利用の跡が見られ、日本文化の象徴といえる植物、それが竹だ。

堅牢で成長が速く、大型の竹なら全高は15~20メートルにもなる。古くからかごなどの日用品や建築物などの材料として幅広く使われてきた。しかし高度経済成長期以降は、プラスチックなどの代替品におされて活躍の場を大きく減らしている。

そんな中、竹が備える特性や可能性に着目し、現代的な視点で商品化を進めているのが、東京都内と山口県防府市に拠点を構えるベンチャー企業、エシカルバンブーだ。なお、山口県は全国の自治体の中でも竹林の面積が大きい県と言われている。

同社の代表取締役社長・田澤恵津子氏は、「エコな商品だからといって商品の魅力に妥協しない。また、人、環境、ものを尊重する。これらを掲げて事業を進めている」と語る。

製造・販売している製品は3つ。竹による天然成分100%の洗濯用洗剤「バンブークリア」、虫除けスプレーの「バンブーミスト」、そして竹繊維によるタオル「初肌(ういはだ)」である。洗剤と虫除けスプレーは天然素材に由来する安全性を強調した商品で、健康や環境保護に意識の高い層から注目を集めているという。

地域への貢献を意識し、地元生産にもこだわる。洗剤と虫除けスプレーについては山口県防府市の工場で製造、地元の高齢者が積極的に参画していることもポイントだ。2月29日には山口県宇部市に2つ目の工場と竹分野に特化したインキュベーション施設をオープンする。

竹素材を単に利活用しようとするだけでなく、地域の活性化、さらには「竹害」とも呼ばれる環境問題の解決も視野に入れているというエシカルバンブー。竹事業の未来について田澤氏に話を聞いた。

田澤恵津子(たざわ・えつこ)氏。エシカルバンブー代表取締役社長。1973年東京生まれ。百貨店勤務、カナダ留学を経て商社へ。その後は大手電機メーカー、外資系家庭用品、化粧品会社、広告代理店でマーケティングを担当。2010年に独立し竹の有効活用事業に着手。2016年、山口県防府市でエシカルバンブーを設立(写真撮影:筆者)

竹100%、かつ商品としての魅力にこだわる

──竹を原材料とした虫除けスプレーの「バンブーミスト」、私も使ってみました。刺激感の少なさと、竹由来の香りをほんのりと感じさせるのが印象的でした。

田澤氏(以下、敬称略):バンブーミストはアウトドア目的の虫除けスプレーとして開発しました。竹を中心とした天然成分100%で出来ていることがポイントです。工場で抽出した竹酢液を中心に、エッセンシャルオイルを複数入れています。エッセンシャルオイルはオーガニック認証を受けたものを採用しました。(筆者注:竹酢液は竹炭を焼くときに出てくる煙を冷却し、液体にしたもの)

バンブーミストには化学物質、アルコール、エタノールを使っていないことも売りです。顔にも吹きかけたいというユーザーや、お子さまと一緒に利用できるものを探している母親層を中心に売れています。

最近は清掃の専門業者がバンブーミストを消臭用具として購入するケースが増えています。閉鎖空間で働いている航空機のキャビンアテンダントの方々にもご購入いただいています。

エシカルバンブーが開発・製造・販売している虫除けスプレーの「バンブーミスト」。組成のすべてを天然の成分で構成していることが売り。竹酢液とエッセンシャルオイルを含んでいる。細かな濾紙や濾過機を複数併用し、油と竹酢液が分離しないように工夫しているという(写真提供:エシカルバンブー)

──国内の工場で生産しているのですよね。

田澤:はい。バンブーミストは2016年にオープンした山口県防府市の工場で生産しています。主な原料である竹は近隣の竹林から調達しています。国内の竹を使い、国内で作るという国内生産にこだわりました。なお、山口県は全国でも特に竹林の面積が広い自治体と言われています。

もう1つ、国内生産にこだわった製品がありまして、それが洗濯用洗剤の「バンブークリア」です。竹炭に含まれるミネラルを地元の地下水で抽出して作り出したもので、洗剤の液体に含まれる竹由来のアルカリ成分が、衣類についた皮脂を吸着します。

原料は本当に竹と地下水のみで、私も最初に知ったときはこれで洗剤などが作れるのかと驚きました。この洗剤には、考案者である地元のおじいちゃんたちによる独自のノウハウが詰め込まれていて、高い洗浄力があります。

素材はシンプルですが、製造工程は独特なものがあります。季節に応じて様々な竹炭と灰をブレンドしており、そこから濾過・攪拌・静置を繰り返して作っています。環境分野の研究機関に検証を依頼したところ、おじいちゃんたちが見出した工程にはすべて根拠があると言われました。ちなみに、この地元の地下水が備える特性も洗浄力に効いています。

しかも、洗剤液の中身は天然素材100%なので、口に入れても問題がありません。それはバンブーミストも同じでして、私たちはここにとにかくこだわりました。お子さんのいるお母さんが安心して使えるようにしたかったからです。

元々、そのおじいちゃんたちは竹による洗剤を、各地からの依頼に応じて作っていました。そこで私もOEM(相手先ブランドによる生産)でおじいちゃんたちに作ってもらおうと交渉し始めたのですが、「80歳を超えたのでもう止めることにした」とおっしゃる。私が「そんなことを言わずに続けてください」と食い下がったら、「作り方も何もかも全部教えるから、ちゃんと商売として成り立つようにしてくれ」と言われて。ちなみに、多少メンバーの入れ替わりはありましたが、皆さん、当社の工場で働いています。

竹炭を作るために切り出された竹(写真撮影:筆者)
窯で焼かれて出来上がった竹炭。窯では竹炭と同時に竹酢液も取れる(写真撮影:筆者)
エシカルバンブーに竹炭を供給している「地元のおじいちゃん」の一人、西村治氏。年齢は88歳。元々は学校の校長を務めていた(写真撮影:筆者)