「フェムテック」が脚光を浴びている。フェムテックとはfemale(女性)とテクノロジーを掛け合わせた言葉で、女性の健康課題をテクノロジーで解決するサービスやプロダクト群を指す。女性の社会進出や晩婚化を背景に注目が集まっており、2025年には世界で5兆円規模の市場になるとされる。このフェムテック分野で何が起きているのか。実は女性だけでなく男性そして企業にも変化を促す可能性がある。フェムテックの概況について、フェムテック分野に詳しいランドリーボックス代表の西本美沙氏が解説する。

女性の健康課題をテクノロジーを通じて解決するサービスやプロダクト「フェムテック」。2013年頃、ドイツの月経管理アプリ「Clue(クルー)」の代表Ida Tin(アイダ・ティン)氏が自身のサービスのビジネスカテゴリを称するためにつくった言葉で、female(女性)とtechnology(テクノロジー)を掛け合わせている。

昨今、これらフェムテックに取り組む企業が増え、資金調達額も増加している。また、2025年には世界で5兆円規模の市場になると予想されている(米市場調査およびコンサルティング会社であるフロスト&サリバンの調査レポートより)。

フェムテックカオスマップ。29カ国318 社(日本以外)の企業が掲出されている(出所:フェルマータ)
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フェムテックのカバー領域は広いが、主要なカテゴリとしては「妊娠/不妊」「月経」「更年期」「産後ケア」「婦人科系疾患」「セクシャルウェルネス」などが挙げられる。サービス自体も幅広く、アプリケーションなどのソフトウェアから医療機器や製品、診断サービスなど多岐に渡っている。

例えば「妊娠/不妊」でいうと、オンラインでの不妊治療相談サービスや、自宅でできる妊孕(にんよう)力の検査キットなどがある。

その一つが、米「KindBody(カインドボディ)」だ。2019年にGV(前グーグルベンチャーズ)などから資金を調達し、総資本額は約3200万米ドルとなっている。2018年創業のミレニアル世代をターゲットにした不妊治療サービスで、移動式のポップアップカーでAMH(アンチミューラリアンホルモン)検査を無料で受けられるほか、検査結果に応じて実店舗で有償のカウンセリングなどを受けることができる。

体外受精、卵子凍結、代理出産など様々な不妊治療の選択肢を包括的に提供しているが、中枢となる卵子凍結においては、テクノロジーを活用することで運用コストを下げ、市場と比べ安価で提供している。

企業への福利厚生としての導入も進めているが、同社に限らず、卵子凍結など不妊治療にまつわるサービスを福利厚生として提供するサービスは増えている。米フェイスブックやグーグル、アップルなども福利厚生として導入している。

国内でも、同様の動きが出てきている。小田急電鉄や全日空、伊藤忠商事労働組合などが福利厚生として導入しているのが妊活コンシェルジュサービス「ファミワン」だ。同社は2020年4月にプレシリーズAラウンドで1.5億円の調達を発表した。

「月経」の分野では、「ルナルナ」(エムティーアイが提供)のような月経管理アプリの他にも、米「Cora」など、素材やデザインにこだわった生理用品を届けるサブスクリプションサービスや、ナプキン不要の吸水型サニタリーショーツを手がける「THINX」など、新しい生理用品を開発提供する企業も登場している。

生理にもテクノロジーの恩恵

これまで生理だから仕方ないと諦めていた生理用品にも変化が訪れている。

「FLEX Disc」のパッケージおよび製品外観(出所:FLEX)

例えば、米FLEX(フレックス)は、新たな生理用品として、膣内に挿入し使用する月経ディスク「FLEX Disc」を開発販売している。膣内で経血を溜めることができるため、生理ナプキンによるムレなどを防げるほか、水泳などの運動時にも活用できる。

ゴム製の円盤にフィルムが貼られており、子宮頸部と恥骨にひっかけて装着し、フィルム部分に経血をタンポン3本分留めることができる。一見硬い円盤型のディスクだが、体温で温めることで自分の膣の形に合わせてフィットするという。2018年には360万ドル(約3億9000万円)を調達している。

そして、産後ケアで注目を集めているのは英国のElvie(エルビー)だ。2013年設立の同社は、骨盤底筋を鍛えるトレーニングデバイス「Elvie Trainer」とハンズフリーで搾乳できるサイレントウェアラブル搾乳器「Elvie Pump」を開発販売している。2019年4月には約48億円を調達した。

「Elvie Trainer」の商品画像(出所:Elvie)

Elvie Trainerには、膣内の圧力を感知するセンサーが内蔵されており、Bluetoothを通じて専用アプリケーションに自身の運動状況がトラッキングされる。これまで可視化されてこなかった、膣内の圧力が把握できるほか、自身の状況に応じたトレーニングメニューが提案される仕組みだ。

「Elvie Pump」の商品画像(出所:Elvie)

また、トレーニングを少しでも楽しくできるように、アプリデザインに加えて、トレーニング自体がゲーム感覚でできるようになっている。自身の筋肉の締め具合に応じて画面上の宝石が持ち上がるというような具合だ。本デバイスは、英国の国民保険サービスであるNHSでも認可されており、同社は医療機関を含めた研究やマーケティングにも注力している。

Elvie Pumpは、ブラジャーにもおさまるコンパクトなウェアラブル搾乳機だ。静音かつ電動で搾乳してくれるだけでなく、アプリ連動で搾乳の強さをコントロールできるほか、搾乳量も確認、記録することができる。これならビデオ会議しながら搾乳することもできるだろう。