ポストコロナの社会をどうデザインするのか。様々な立場から社会や世界を注視しているプロフェッショナルが提言していくシリーズ『「コロナ後」の時代をデザインする』。第2回に登場するのは、ITを使ったイノベーションやマーケティングに詳しい藤元健太郎氏である。江戸の町人のように人生を謳歌できる「超江戸社会」を藤元氏は提唱する。テクノロジーは我々に「懐かしい未来」をもたらしてくれるという。

藤元 健太郎(ふじもと・けんたろう)
D4DR 代表取締役社長。野村総合研究所に在職中の1994年からインターネットビジネスのコンサルティングを開始。日本発のeビジネス共同実験サイトサイバービジネスパークを運営。2002年よりコンサルティング会社D4DRの代表に就任。ITによるイノベーション、事業戦略再構築、マーケティング戦略などの分野で調査研究、コンサルティングを展開する。経済産業省産業構造審議会情報経済分科会委員、情報サービス・ソフトウェア産業小委員会委員、青山学院大学大学院国際マネジメント研究学科ExectiveMBA非常勤講師などを歴任。

「沢山の人が過密する都市の、しかも同じ場所になぜ毎日通わなければいけないのか」

コロナ禍が我々に突き付けた問いの一つである。あちらこちらで自粛の話が出始めた3月でも通勤電車は満員の状態で「こればかりは仕方がない」というムードがあった。そこに緊急事態宣言が出され、一気にリモートワークが増え、「なんだ、できるじゃないか」と多くの人が気付いた。

ここにアフターコロナ時代の社会デザインを考える上でのポイントがある。

新型ウイルスは「工業化社会の終わり」を加速させる

パンデミックが結果として社会に何をもたらすのか。14世紀のヨーロッパのペストの時を見てみよう。ペストの大流行により、ヨーロッパの全人口の4分の1から3分の1が亡くなったとされている。

このため人手不足になり賃金上昇が起こり、農民達が都市に解放され、あわせて実力主義が進み、身分制度を解体していった。神が救ってくれなかったことで教会の権威が失墜し、科学と国家が台頭することになった。ペストの流行は「中世の終わり」を加速させたと言われている。

一方、我々は情報革命を中心とするテクノロジーの発達とともに、近代以降の工業化社会からICTによるポスト工業化社会への緩やかな切り替えの中にいた。今回のパンデミックがもたらしたものは「工業化社会の終わり」の加速と言えるのかもしれない。

工業化社会は都市に資本を投下し、会社や工場を作り、労働集約と大量生産によって生産性を高めるモデルであった。しかし工業化社会の象徴であった大量生産の工場は無人化がどんどん進み、ロボット化の進展もめざましく、もはや土地の高い都会に立地する必要はないため郊外への移転が進んで久しい。

気が付くと都心には本社機能などホワイトカラーの職場とサービス業の集積が進んだ。だが、知的労働はほぼネットワーク上で可能になり、サービス業もICTにより労働集約型から価値提供型に転換しつつあった。

そうなると工場でものを作っているわけでもないホワイトカラーがなぜ毎日、会社に行き、朝から晩までいる必要があるのか。コロナ禍はこの矛盾をあぶりだした。