茨城県つくば市の新型コロナウイルス対応は、独自かつ迅速だった。例えば2020年3月2日から全国でスタートした小中高の臨時休校に際して、学校での自主登校の受け入れや給食の提供を発表。児童生徒の自主学習をつくば市内の研究者がサポートする「つくばこどもクエスチョンオンライン」なども開始した。休校対応のほかにも、国に先駆けた飲食店や観光地への支援など、様々な独自施策をいち早く開始している。このような迅速な対応ができた背景の一つに、つくば市が以前から実践してきた「アジャイル行政」で培った経験がある。五十嵐立青つくば市長に取り組みを聞きながら、「コロナ後」の自治体行政と市民社会の在り方を探る。
──新型コロナウイルスが流行し始めてから、つくば市は教育関連の対応など、様々な施策を短期間の間に素早く実行してきました。それぞれの施策について、アイデアの検討から実行までの所要時間はどの程度だったのでしょうか。
五十嵐氏(以下、敬称略):休校への対応の場合、(2020年)2月27日の夕方に「全国の小中高校に3月2日からの臨時休校を要請する」という発表があり、その日の夜には自主登校の受け入れ方法についての大体のイメージをしていました。そして翌28日の朝から会議を重ねて、しばらくすると国からの正式な通知があったので、午後を少し過ぎたあたりに自主登校の受け入れを発表しました。
3月5日に発表し、6日からスタートした「つくばこどもクエスチョンオンライン」については、発想からローンチまで1週間でした。休校要請があってすぐに、大体こういうことをやりたいということを職員に伝えて、その後細かい部分を詰めてもらってからスタートした、といった流れです。
市独自の施策を矢継ぎ早に投入
五十嵐:観光地、飲食店、宿泊施設などへの支援は3月半ばに発表しています。飲食店や宿泊施設を利用する方向けに大きな割引をする、という内容です。「感染状況を見極めてから4月以降に事業を開始します」という留保をつけての発表だったのですが、危機的な状況に不安を持っている皆さんに「我々は支援の準備ができていますよ」というメッセージを示して、安心してもらうことが重要だと考えました。考え方としては国の「GoToトラベルキャンペーン」を先取りしたものだと思います。
実際には4月になって緊急事態宣言が出たことで、早い段階で飲食店や宿泊施設への給付に切り替えました。一度施策を提示したとしても、状況に応じて立ち止まったり変化することは厭わない、という姿勢でやっています。
医療関係では、新型コロナウイルスに感染した軽症者の方を対象に公共施設での受け入れを実施しました。つくば市は感染症などの保健所機能を持たない自治体なので、通常であれば感染症患者への対応は県が責任を持つことになっています。ですが、感染の急拡大で受け入れができない、また調整が進まない状態になってしまっていました。
そこで、市から県に施設を提供するモデルを作りました。この施設は今も県の軽症者療養の中心として稼働していて、専門家の方からも「茨城県の感染拡大を防ぐターニングポイントになった」とご評価いただいています。

学校再開に向けて、全児童・生徒の体温管理の仕組みを、つくば発のスタートアップ(筆者注:医療相談アプリ「LEBER」を提供する株式会社AGREE)にお願いして導入しました。学校の昇降口で体温を計り、紙ベースでチェックをするのが一般的ですが、密になるし、手間もかかります。これを全てアプリ上で完結できるようにしました。朝7時にリマインドが来て、子供の体温の入力を促すようになっています。今では市内の約9割のご家庭でダウンロードしていただいています。
この他、買い物エチケットのポスターを作って無料でご利用いただけるようにしました。自治体やスーパー、百貨店で随分ご利用いただいているようです。