2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け、増加する訪日観光客の移動手段をどう確保するか? その解決策として期待されているのが「サイクルシェア」だ。このサービスの肝を握るのが、ユーザーの利便性を高め、坂道なども楽に走れる電動アシスト自転車。環境にも優しく免許も不要なため多くのユーザーが対象になるだけでなく、気分転換や健康増進にもつながる、ある意味「一度で何度もおいしい」画期的なサービスと言えよう。その一方で移動距離の拡大と共に消費されるバッテリーの充電をいかに効率よく行うかという課題が見え隠れする。こうした課題を解決すべく、バッテリーをシェアリングしながら利用者を拡大させようという新たなコンセプトのプロジェクトがスタートした。今回はその関係者に狙いと今後のビジョンを取材した。

社会課題を解決するパナソニックの5つのスマート

「新幹線やモノレールなどが造られた前回の東京オリンピックがそうであったように、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを契機として、私どもは“5スマート”によって後世に残るレガシーを形成していきたい――」

パナソニック
東京オリンピック・パラリンピック推進本部 戦略企画部 アライアンス担当
松井次郎主幹

4年後のビッグイベント開催に向けて本格化するパナソニックの取り組みについて、同社の東京オリンピック・パラリンピック推進本部 戦略企画部 アライアンス担当の松井次郎主幹はこのようにビジョンを語った。

“5スマート”とは「スマートトランスポーテーション」「スマートコミュニティ」「スマートコミュニケーション」「スマートペイメント」「スマートセキュリティ」という5つのスマートを実現し、現在、東京をはじめとする日本の都市が抱える社会課題を解決しようとパナソニックが進めている取り組み。

この春、同社はNTTドコモ、ドコモ・バイクシェアとタッグを組み、東京臨海地区で電動アシスト自転車を使った「サイクルシェア」及び「バッテリーシェア」の実証実験をスタートさせた。これは、渋滞緩和や訪日観光客の移動手段の整備と言った課題に対する「『スマートトランスポーテーション』実現のためのプロジェクトの1つ」(松井氏)である。

共有できるバッテリーで次世代のサイクルシェアを実現

「バッテリーシェア」とは言葉の通り、バッテリーをシェアリングするという考え方。今回の実証実験では電動アシスト自転車の「サイクルシェア」サービスにおいて、車載バッテリーを常時充電し、登録会員が自由に共有できる仕組みを構築し、利用者の動向を把握・分析していく。その結果をサービスの利便性向上に役立てていく考えだ。

ドコモ・バイクシェア
坪谷寿一社長

具体的には、車載バッテリーの充電ステーションを、サービスエリア内の各ポートやコンビニエンスストアなど複数の場所に配置する。充電ステーションはバッテリーを充電しながら保管でき、利用者は走行中に電動アシスト自転車のバッテリー残量が少なくなったら、その近くの充電ステーションに行く。ここで新たなバッテリーに交換し、使ったバッテリーは充電ステーションにセットする。そうしておけば、次の利用者が使うまでにバッテリーが充電される訳だ。

このプロジェクトの事業主体であるドコモ・バイクシェアの坪谷寿一社長は、その目的についてこう語る。

「各自治体様が運営されている、自転車のシェアリングサービスのオペレーションを担うのが、我々の主な事業です。この事業において、電動アシスト自転車によるサービスの提供は大きなアピールポイントになると考えています。電動アシスト自転車は長距離の移動ができることが魅力ですが、当然、走行距離が長くなれば、バッテリーも早く減ります。そうなると、これまでのように我々がバッテリーを1日1回の頻度で交換するのでは追いつきません。『バッテリーシェア』が実現できれば、そのようなオペレーション上の課題を解消できると考えています」

「バッテリーシェア」イメージ図
シェアリングの結果、利用者自らの手によりバッテリーが充電されるため、バッテリー交換における運営側の作業負荷も軽減する

実証実験におけるNTTドコモとドコモ・バイクシェアの役割は「サービス提供側として運営のノウハウを提供し、その中で技術や仕様の課題をフィードバックしていくこと」である。一方、パナソニック側の役割は「バッテリー充電システム」「電動アシスト自転車及びその技術」などだが、技術的な部分を下支えする同社に坪谷社長が寄せる期待は大きい。

「パナソニックさんには、今回の実証実験で電動アシスト自転車を納めていただいていますが、すでに様々な要望に応えていただいています。また、2020年に向けて、『サイクルシェア』用の自転車はより高度化していく必要があります。バッテリーの性能や乗りやすさというベーシックな部分もそうですし、優れた運動性能やIoTといった領域も含めて――。そういう部分を実現していくためにも、電機メーカーであり、通信メーカーであり、自転車メーカーであるパナソニックさんが持つ幅広い資産は非常に魅力的です」(坪谷社長)