訪日旅行者の快適性のために双方向翻訳も

多言語音声翻訳が果たす大きな役割として「安全・安心の確保」だけでなく、「外国人旅行者の快適度向上」にも着眼した。

「外国人旅行者の快適度向上」に必要なのはホテルやレストラン、観光案内所などでの双方向の「自由文翻訳機能」だ。クラウドに音声認識・翻訳の機能を持たせ、Wi-Fiを通じてタブレットで音声や言語表示をアウトプットする。これは観光案内所やホテルなどで実証実験を重ねている。

タブレット型多言語音声翻訳機の使用イメージ

旅行者の行動を広げ、日本人の世界観を豊かに

多言語音声翻訳はどんな未来を実現するのか。前述のソリューション開発部の田中課長は「このプロジェクトでは、技術者たちが想い描く未来を押し付けるのではなく、外国人と接する現場の人々の問題解決や不満解消から未来を一緒に考えることを目的としている」と語る。タブレットによる双方向の「自由文翻訳機能」の開発を担当する戦略開発部 ビジネス開発1課の生田久敏主務は「言葉の壁が無くなることで、旅行者の世界は確実に広がる」と指摘する。

「言葉が通じない経験を1回でもすると、行ってみたい場所があったり、気になる商品について話を聞きたかったりしても尋ねるのを躊躇するものです。こうして彼らの経験が一つ少なくなることは、日本人と外国人の両者にとって残念なことです。観光案内所や交通機関、ホテルなどインフォメーションカウンターに多言語音声翻訳サービスがあれば、彼らの1歩は確実に広がり、日本の魅力に触れていただくチャンスも増えるはずです」(生田主務)

タブレットによる双方向の「自由文翻訳機能」開発に関わったパナソニック AVCネットワークス社イノベーションセンター 戦略開発部の担当者。左から、生田久敏氏、山宮修吾氏。

そして、多言語音声翻訳の技術進化の可能性は無限大だ。現行の訪日外国人の上位の3言語の翻訳精度をさらに高めることに加え、現在タイ語の対応を進めており、順次対応言語を拡大していく予定。戦略開発部 ビジネス開発1課の山宮修吾主務は、「現在は、人間同士が対面する場面をサポートすることを目的としていますが、人工知能(AI)などと融合できれば、人が対応しづらい深夜や早朝などの時間帯に無人インフォメーションカウンターで多言語音声翻訳機が活躍することも十分にあり得ます」と未来の可能性の一つを示唆する。

労働人口の減少に悩む日本にとって多言語音声翻訳の技術は、インバウンドの盛り上がりを成長に取り込むための重要な役割を担うが、それだけではない。海外から訪れる外国人と正確なコミュニケーションにより、最高のおもてなしをしたいと考える様々な現場の願いを実現する技術でもある。訪日外国人たちの世界を広げるだけでなく、深まる交流により日本人の世界観も多様化するだろう。4000万人の外国人が日本を訪れるようになった時、日本人はどんなおもてなしで日本の魅力を世界の人々に伝えようとしているのだろうか。

先行事例紹介~成田国際空港株式会社ご担当者様の声~
様々な国から観光客やビジネスパーソンが訪れる成田国際空港だが、自然災害や飛行機のトラブルなどによる緊急の案内などで、特に空港利用頻度の高い中国や韓国からの来日客へのアナウンスは大きな課題だった。
「メガホンヤク」の実証実験の依頼を受けた時、その場ですぐに案内することに役立つ点で、メガホンによる多言語音声翻訳は非常に有効だと感じた。実際に空港内の訓練などで使い、様々な部署からは現場で使用する際の具体的な要望が出たが、改良を重ねていく中ですべて対応してもらえた。なかでも重要だと感じたのは、緊急時に誰でも扱えるシンプルな操作性。液晶の文字やボタンの大きさが見やすいこともお願いした。
試験配備中に一度風の強い日があり、発着時間やゲートの変更などの案内をした際、メガホンでご案内すると館内アナウンスよりも注意を集められることが分かった。また、音声が自動で流れるので、緊張することもなく体力的にも非常に助かった。
現在、全館に設置してあるが、使用している場面を見て想定していなかった部署からの設置を求める声が予想される。緊急時の対応を目的に導入したが、幅広い場面で使用できるポテンシャルを備えている。
お話しいただいた成田国際空港株式会社 IT推進部 情報企画グループのお二人。マネージャー の松本英久氏(左)と坂野 巧氏(右)。