「ナノイー」によってもたらされる効果

「ナノイー」技術がもたらす様々な効果は、定量的なものとして実証されている。例えば脱臭の効果については、付着臭の除去性能を測定した実験などがあり、自然減衰させた場合と比べても、臭気強度で1.0程度の差が生まれている。これは1.0違うと臭気を感じる濃度が10倍違うといわれており、脱臭効果の高さがエビデンスとして表れている状況だ。このエビデンスについては、付着アレル物質・カビ菌・浮遊菌などの抑制性能など様々なものが提示されている。特にパナソニックでは、「ナノイー」デバイスそのものの性能結果だけでなく、製品に組み込んだ状態での性能評価もしっかりエビデンスとして提示するなど、ほかのメーカーとはアプローチが異なっているという。

付着臭の除去性能(※1)
脱臭(※1):効果は、周囲環境(温度・湿度)、運転時間、臭気、繊維の種類などによって異なります
冷蔵庫内の脱臭(※2)効果
脱臭(※2):【試験依頼先】近江オドエアーサービス(株)【試験方法】6段階臭気強度表示表【対象臭気】冷蔵庫内想定臭気6食材(焼き餃子、玉ねぎ、たくあん、納豆、ポテトサラダ、いわし)を冷蔵室に入れ2日間放置後取出し、24時間経過した臭気【脱臭の方法】「ナノイー」、触媒【報告書番号】10-0817号

今回の取材では、実際にその脱臭効果についても体験する機会を得た。一般的なシャツの繊維に某ハンバーガーチェーンのポテトのにおいをつけ、「ナノイー」を放出している空間に90秒置いたものと自然に放置したものを比べてみるという実験だ。結果としては、「ナノイー」によって脱臭された繊維からはにおいが消えていた。自然に放置したものからはポテトの強いにおいが残っていたところから、実際の環境によって感じる効果は異なるものの、目の前で脱臭効果の高さを実感することができた。

実際の脱臭効果を体感。「ナノイー」空間に置く前と比べてまったくにおいがしない。かなりの脱臭効果が期待できる

「ナノイー」技術が展開されている事業領域

臭気成分を溶かす水の性質に着想を得て、1997年から住環境の空気浄化をテーマにした研究がきっかけとなって生み出された「ナノイー」技術。2003年には「ナノイー」技術を搭載した空気清浄機が初めて市場に投入され、現在では家電分野はもちろん、自動車業界をはじめとした車載分野や住宅関連分野、鉄道やアミューズメントホールなどに代表されるパブリック分野にまでナノイーによる空質改善技術が広がっている。これら重点領域への展開を推進することで、2018年には年間1000万台、累計で5000万台の「ナノイー」デバイスを出荷することを目標にしている。

家電領域では、エアコンや空気清浄機、ヘアードライヤーなど自社の商品を中心に現在は15製品に搭載されており、中国や台湾、ASEANなどアジアを中心にグローバル展開にも力を注いでいる。また、車載分野では空調システムやカーユーティリティ(ナビゲーションシステム、ライティング)を国内の自動車メーカー向けに提供しており、トヨタでは30車種までライン搭載が進められている。海外ではジャガーランドローバーへの搭載が予定されるなど、欧州メーカーへの展開も徐々に始まっている状況だ。住宅分野では、トイレやバスなど自社の住設機器や空調設備に搭載し、スマートシティ、カフェ、ホテルなどの様々な施設への展開を行っている。

そしてパブリック分野では、JR東日本の山手線新型車両やJR九州のクルーズトレイン「ななつ星 in 九州」をはじめとした鉄道業界やアミューズメント業界、さらには非居住空間の植物工場など幅広い業界へ「ナノイー」技術を展開している状況だ。中でも期待しているのが車載分野であり、「ナノイー」技術による脱臭などの効果に期待するユーザーの声が自動車購入の動機付けのひとつに挙げられるなど、今後のさらなる需要拡大に向けて自動車メーカーとの開発連携にも積極的に取り組んでいる。

「ナノイー」が描く未来像

産業革命以降、工業化の波はイギリスから世界中に広がり、高度経済成長期に日本が経験した環境汚染が社会問題化した状況は、今後も世界のどこかで繰り返されることだろう。「工業化のサイクルは以前に比べて短くなっており、生活レベルが上がってくるにしたがって、世界の中で大気汚染が加速度的に進んでくることも懸念されます。「ナノイー」を中心とした空質改善技術を、そんな空気に関する課題を解決する手段の1つとして提供していきたい。安心・快適な空質環境をすべての人に提供することが、「ナノイー」事業の目指す姿です」と松前氏は語る。

今後も空質改善技術としてユニークな「ナノイー」の認知度をグローバルで広めていくことで、「ナノイー」と聞けば子供であっても笑顔になる、そんな環境を作り上げていきたいという。「様々な機器に「ナノイー」デバイスが装備される“ナノイー・インサイド”な世界を広げていきたい」と中村氏は今後について語った。