年々温暖化が進む中で、「暑さ対策」は重要な社会課題の一つとなっている。暑さが高齢者や子どもをはじめ人々の健康に影響を及ぼすことはもちろん、冷房の過剰な使用によるエネルギー問題も深刻で、特に都市部においては解決すべき多くの問題を抱えていることは確かだ。パナソニックでは夏季の暑さ対策の一環として「グリーンエアコン」の開発に取り組んでおり、2016年8月5日から東京都港区と共同で実証実験を開始している。2020年に東京オリンピック・パラリンピックを控える中、暑さを軽減し、新たな”おもてなし”を生み出すソリューションとして注目される「グリーンエアコン」の仕組みや期待される展開などについてお話を聞いた。

都心部の暑さを軽減するクールスポット「グリーンエアコン」

今年もまた、“暑い夏”がやってきた。年々温暖化が進み、30℃以上の真夏日、35℃以上の猛暑日も珍しくなくなった昨今、夏の暑さ対策は社会的に重要な課題の一つとなっている。

特に東京都を始めとする都市部においては、人口が集中し、事業活動や建物、交通網が密集していることなどが要因で、ヒートアイランド現象の進行による熱中症の増加が深刻な社会問題だ。過去100年間の平均気温の推移を見ると、中小規模の都市における平均気温上昇が1℃であるのに対して東京は3℃と圧倒的に高い(気象庁のデータより)。体力の弱い高齢者や子どもなどにとって、ますますストレスの多い環境になっていることは間違いないだろう。

そんな中で、パナソニックが夏季のヒートアイランド対策における新たなソリューションとして開発を進めているのが、微細なドライ型ミストで空間を冷やす「グリーンエアコン」だ。オープンスペースの暑さを軽減し、多くの人に快適さを提供する商品として注目を集めており、2018年度の商品化を目指し、2016年8月5日からはJR新橋西口駅前広場において東京都港区(以下、港区)と共同で実証実験をスタートした。

(写真1)2016年8月5日から9月20日(予定)の期間、JR新橋駅前西口広場に設置されている「グリーンエアコン」。藤棚をイメージしたパーゴラで直射日光を穏やかに遮り、エアカーテンでドーム状に形成した空間の中にドライ型ミストを噴霧することで冷却空間を効果的にキープする。冷却スポットは直径4m。
パナソニック アプライアンス社
事業開発センター 事業企画部 カンパニー連携課
仲野章生課長

「暑さを軽減する手段は、これまでも様々なものが講じられてきました。昔ながらの”打ち水”をはじめ、遮熱塗料や保水性舗装、ビルの屋上、壁面などの建物緑化といった手法が一般的ですが、それぞれにマイナス面もあり抜本的な暑さ対策には至っていないのが現状です。『グリーンエアコン』は、こういった従来の方策のメリットを組み合わせることで、より複合的に暑さ対策の効果を発揮させる機器として開発を進めてきました」。そう話すのは、パナソニック アプライアンス社 事業開発センター 事業企画部 カンパニー連携課 仲野章生課長だ。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックも、最も暑い時期である7月~8月に開催される。海外からの選手団、国内外から多くの観光客の来訪が見込まれる中で、公共空間での暑さ対策は“日本のおもてなし”を印象付けるうえでも急務となっており、まずはそこに目標を定めたのが今回の「グリーンエアコン」なのである。

今回、共同で実証実験を行うことになった港区でも、慢性的にヒートアイランドの課題を抱えていた。

港区街づくり支援部
土木課 事業推進担当  三石貴史係長

「東京オリンピック・パラリンピックを契機に、東京のおもてなしの中心ともなる港区でもヒートアイランド対策の取り組みを強化する中、地元企業であるパナソニックさんの技術開発のお話を聞き共同での実証実験に至りました」と話すのは、港区街づくり支援部 土木課 事業推進担当 三石貴史係長。

今回、JR新橋西口駅前広場に設置されているのは、日本古来の藤棚をイメージさせるパーゴラタイプ。

直射日光を効果的に遮蔽し、自然な木陰を形成する「エアリーシェード」の下に濡れにくいドライ型ミストで周辺の大気を冷却する「2流体ミストノズル」を設置。さらに冷却空間が屋外風に乱されないようエアカーテンでドーム状の空間を形成し、ミストや地中からの水分を保持し、蒸散によって路面の熱放射を軽減する保水性ブロックを敷くことで快適な冷却空間が生み出されている。

この場所は、平成17年度に暑さ対策で三石氏が担当者として路面温度低減効果のある保水性ブロックを広場全面に敷いていたが、それだけではなかなか涼しさを体感することができないのが現状だった。

「以前から対策を行っている場所で、“空間温度の低減効果”という新たなソリューションを加えることでどのような効果が出るか。私自身も実際に『グリーンエアコン』の心地よさをパナソニックさんの工場で実感して、とても期待しています」と三石氏は話す。