ICTやロボット技術の進化により、空港は日々進化を続けている。特に、2020年の東京オリンピック・パラリンピックにおいて、東京への玄関口となることが期待される東京国際空港(以下、羽田空港)国際線ターミナルでは、UD(ユニバーサルデザイン)ソリューションを活用した様々な開発、取り組みが進められており、外国人観光客をはじめ増え続ける利用者にストレスなく過ごしてもらうためのソフト、ハード面での仕組みが実現しつつある。今回は、その中でもパナソニックが技術提携をするUDソリューションにICT技術を加えた取り組みに注目し、変革し続ける羽田空港の姿についてお話を伺った。

空港をもっと楽しく、ストレスフリーなおもてなしのスペースに

ここ数年、急速に増え続けている訪日外国人旅行者。2012年におよそ835万人だった訪日外客数は2015年には1973万人と約2.4倍に跳ね上がっており、2016年も既に7月の時点で前年の約70%に達していると推測される(出典:日本政府観光局(JNTO))。政府では、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年には訪日外国人を4000万人に、2030年には6000万人に増やす方針を掲げており、その中心となる東京では多言語対応のサインの導入をはじめ多くの取り組みが進められている。

特に、羽田空港国際線ターミナルは訪日外国人をはじめ車椅子で移動される方、高齢者、小さな子どもを連れたお客様など多くの人が移動の拠点として利用する場所となる。そういった人たちの快適なアクセシビリティをサポートしていくため、UD(ユニバーサルデザイン)にICTの技術を加えた取り組みが注目されている。

パナソニックが描く、新たなUDソリューションのイメージ

「羽田空港では、現在1日に出入国合わせて約4万人~5万人ほどのお客様にご利用いただいています。訪日外国人を含め、増え続けるお客様にシームレスにストレスなく過ごしていただき、“空港”という環境を楽しんでいただくということは大きな課題。そのための施策として進めてきたのがUDをコンセプトとしたターミナル作りです」

そう話すのは、東京国際空港ターミナル 旅客サービス部 マネージャーの山下慎一郎氏だ。

東京国際空港ターミナル
旅客サービス部 マネージャー
山下慎一郎氏

2010年10月にオープンした同ターミナルは、ハード・ソフト両面においてUDをベースとした快適さ、使いやすさを追求し続けている。

例えば、オープン前には車椅子利用者にターミナルビルのモックアップを体験してもらったうえで動線に配慮した設計を行い緊急時のボタンの位置を工夫したり、エレベーターの非常ボタンは聴覚障害者が利用できるようモニターにメッセージが表示されるタイプのものを設置するというように、実際に利用するお客様の視点に立った使いやすさを重視。ハード面での利便性だけでなく、サービス介助士の資格を保持したり語学、手話が堪能なスタッフを揃えたコンシェルジュも常駐させたりするなどソフト面でも高度なサービスを目指す。

さらにオープン後も、実際にターミナルを運営する中で生じてくる不具合や改善点などを検証するため「スパイラルアップ検討委員会」を設け、有識者、障害者、健常者を含めたメンバーで検討会を開き問題解決に努めているという。

「障害者の方も含め、皆さんが安心してきていただける場所として羽田空港を進化させていきたいと考えています」(山下氏)

そんな中、最先端技術を駆使する新たな空港モデルとして、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催までの実現に向けて日本電信電話株式会社、パナソニックと共に実証実験が進められているのが、ICTの技術を加えたUDソリューション高度化への取り組みだ。

パナソニックの技術を活用した実証実験は、光ID技術を使用して商業エリアなど空港施設の認知や情報の取得とBluetooth(R)ビーコンを用いた施設内の誘導。空港内での移動をより快適に行えるようにし、空港で過ごす時間に楽しさを生み出すソリューションだ。

高指向性ビーコンによる屋内ナビ。
電波が拡散しないよう制御し、GPSの届かない屋内でも正確な位置情報に基づくナビを実現。

「最先端技術は、海外からのお客様が東京に期待するものの一つ。そういう意味で羽田空港はショウケースの役割も担っていると考えています。さらに、ここは日本に着いて最初に出会うおもてなしでもあります。空港を起点とした移動や空港での滞在をサポートする高度な技術と、心の通ったおもてなしの両輪で世界一の空港を目指したい」と話す山下氏。

羽田空港が取り組む新たなUDソリューションは、すべての人にとって快適さと安心、優しさを提供するものであることは間違いない。