パナソニックが提供するスタジアムソリューション

パナソニックシステムネットワークス株式会社
社会システム本部 社会システムセンター
放送・映像メディアシステム部 総括
佐藤 雅郎氏

もともと楽天野球団とはAV関連ソリューションに関する取引は経験がなく、スタジアム内の大規模な改修に合わせてAV関連を強化するという話を聞いたのが提案のきっかけだったとプロジェクトを推進した パナソニックシステムネットワークス株式会社 社会システム本部 社会システムセンター 放送・映像メディアシステム部 総括 佐藤 雅郎氏は振り返る。

「選手を強化するチーム戦略に活用するためだけでなく、スタジアム内の演出や番組販売するための中継映像、館内配信、スマートフォン配信など、映像と音声やアセットデータをシームレスに活用できるシステムを構築したいというお話をいただき、提案させていただくことになったのです」。

パナソニックシステムネットワークス株式会社
社会システム本部 社会システムセンター
放送・映像メディアシステム部 3課 担当課長
正木 宏之氏

今回パナソニックが手掛けたのは、スタジアム総合演出マネジメントシステムを中核に、中継映像制作やビデオボード送出、SNS映像配信、チーム戦略分析などスタジアム運営に欠かせない各種システムだ。そして大型LEDビジョン、スマートフォンを活用したスタジアムオーダー、そして球場内のインフラ網、さらにはスマートフォンからフードやグッズの発注ができるスタジアムオーダーなどの整備も同時に行っている。「映像・音声・データ機器など演出に活用する機材の数は、日本ではおそらく最大級の規模であると思われます。メジャーリーグと同等、もしくはそれ以上に充実した環境を整備することができました」と大型LEDビジョンを中心に担当した同部 3課 担当課長 正木 宏之氏は説明する。

パナソニックが手掛けたスタジアム運営に欠かせない各種システム
顧客と店舗オペレーション、それぞれから見たモバイルオーダーの流れはこのようになっている。

なかでも、スタジアム演出に不可欠なコンテンツの一元管理から映像や音声機器などの電源投入から終了まですべての操作が可能な「スタジアム総合演出マネジメントシステム」が大きな提案の要だ。既設の大型LEDビジョンやスピーカーなど異なるメーカーの機器を一括で制御できるようになっている。「今後新たな機器を導入してもインターフェースを合わせることで対応できるよう、拡張性の高い仕組みを構築しています」と佐藤氏は説明する。また拡張性を持たせるために、インフラ側にも工夫が施されている。「さまざまな制御をすべてIPによって行えるよう、IP化を強力に推進しました。多芯の汎用シングルモードファイバをスタジアム内に張り巡らすことで、機器の入れ替え時にも敷設したケーブル更新が必要ないようになっています」と佐藤氏。

なお、制御を行うコントロールルームには、各種機器にシームレスにアクセスできるような環境が設置されており、コンテンツ制作や映像配信などを制御するPCにアクセスするためのKVMマトリクスを用意。席を立つことなくあらゆるPC・サーバーにアクセス可能な状況を作り出しているのも特徴の1つといえるだろう。

コントロールルームは、スタジアム統合マネジメントシステムの中枢をなしている。

要求されるスタジアム演出を実現するためのプロセス

今回の仕組みでは、スタジアム演出に関する要求が高く、楽天野球団が望む環境を整えるには、日本で取り扱いのない海外製品を軸にコンテンツマネジメントシステムを構築する必要があった。「日本には導入実績がなく、調達から実装まで初めて行うことばかり。コンテンツを一元管理するCMSも含め、我々が実現したいスタジアム演出の基盤を構築していただくことができました。真摯に対応いただき本当に感謝しています」と渡辺氏は評価する。

パナソニックシステムネットワークス株式会社
社会システム本部 社会システムセンター
放送・映像メディアシステム部
永松 明 氏

実績のない海外製ソリューションを新たに調達すること自体、パナソニック社内としても難易度は決して低くない。同部の永松 明氏は「社内の厳しい検査を通過させるため、品質を1つずつクリアしていくことに腐心しました。金額も決して安いものではないため、仕入れも含めて決められたスケジュールに合わせて納品できるよう調整するのはそれなりの苦労も」と振り返る。実際のデバック環境も現地にしか環境がないため、ハードウェアの調整やスタジアム演出のためのソフトウェアデバックなど、24時間体制で現地調整していったと佐藤氏は振り返る。

また、大型LEDビジョンをはじめメーカーの異なる既存設備を一括制御できるよう、各社とAPI交換を行うためのインターフェースサーバーを設置して制御を行っている。「APIを公開することには当初は各社から抵抗もありましたが、結果として異なるメーカーの機器をシームレスに制御できる、拡張性の高い仕組みが構築できました」と佐藤氏。このインターフェースサーバーを設置したことで、照明がLED化した際には演出の中に照明も組み込むなど、新たな機器追加でも一括制御できるような仕組みを作り上げることに成功している。

ほかにも、万一マネジメントシステムが停止しても運用が止まらないような工夫をはじめ、コンパクトな回転台に設置する35mmフル4Kカメラの設計や10年間使用できるインフラ作りを前提に大型LEDビジョンの選定まで含め、楽天野球団の要求に応えるべくさまざまな環境整備を行ってきた。「観覧車にLEDビジョンをつけて演出に使いたいという話をいただき、安全面の配慮や丸形のLEDビジョンの設計など、これまで手掛けたことのない仕組みを構築する機会も多くいただけました。苦労はしましたがお客様に喜んでもらえる仕組みができたと思います」と正木氏は力説する。

スタジアムには、屋外リモコンカメラとして中継制作用全天候型フル4K仕様及び4倍速HS仕様カメラ(VARICAM35及びHS)が設置されている。

スタジアム演出として目指すべき未来像

今後については、先行する米国プロスポーツが行っている演出を学んでいきながら、独りよがりなものにせず、テクノロジーの進化に応じて先進的なサービスを提供していきたいと渡辺氏は語る。「照明のLED化はもちろん、可視光による情報発信が可能な光ID技術やVR装置によるこれまで見たことのないリッチな映像提供など、いろいろ試していきたいと考えています。すそ野を広げるためにインターネットなど各種メディアを通じて情報提供していきながらも、スタジアムに来ることでしか経験できない価値を最大化していけるよう、うまくバランスをとりながらさまざまな施策を行っていきたい」。そのためにも、楽天野球団をショーケースとして、新しいことに一緒に取り組んでもらいたいと渡辺氏はパナソニックに期待を寄せている。

スタジアム演出については、日本のスポーツ界は保守的な部分があり、それを支援するメーカーサイドも同様の傾向があるという。例えばワイヤーを使ったカメラ映像やマウンド内に設置された映像、フィールド内を映し出す映像など、未経験なものになかなか踏み込めていない部分も少なくない。だからこそ、これまでにはない新たな映像も提供できるような環境づくりにも積極的に取り組んでいきたいと力説する。「観客席すべてをビジョンにするといった、これまでにはないスタジアム演出を実現するなど、未来のスタジアムソリューションを創造していくお手伝いができればと考えています」と佐藤氏は今後について語った。

現場に足を運ぶことで得られる感動と興奮を演出し、日本のプロスポーツのすそ野を広げていくことに貢献していくパナソニックのスタジアムソリューション。これからもスポーツ観戦に欠かせないスタジアムの進化を支えていくことだろう。