欧米を中心に研究・実装が進んでいるインダストリー4.0やスマートファクトリー、IoTが日本でも積極的に実践モードに入りつつある。世界レベルで決して高くない生産性を高め、新たなビジネスチャンス創出に機会を与えるとして製造業を中心に普及が拡大している。最新事例とともにトレンドを探る。
先進7か国で20年連続最下位の生産性
モノづくりの環境の変化、技術の進化などによって日本でもインダストリー4.0(第4次産業革命)やスマートファクトリーなどの重要性が叫ばれるようになっている。日本のモノづくりというと、いわゆる小さな町工場から大規模な製造工場まで多岐にわたるが、そのほとんどは現場で人が様々な工程をチェックすることで成り立っていた。
インダストリー4.0によって、最先端のICTや製造技術を利用しながら効率的な生産やより精度の高い製品の供給が可能になり、工場生産の多くの部分を占める人件費コストの削減にもつながる。それは世界的な潮流として広がりつつあるが、日本ではなかなか進んでいないのが現状だ。
公益財団法人 日本生産性本部の調査「日本の生産性の動向 2014年版」によると、日本の労働生産性(就業者1人あたり名目付加価値)は、OECD加盟34か国の中では第22位。先進7カ国の中では1994年から20年連続で最下位となっており、国際的に見ると低いことがわかる。
1970年 | 1980年 | 1990年 | 2000年 | 2013年 | |
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1位 |
ルクセンブルク![]() |
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ルクセンブルク![]() |
ルクセンブルク![]() |
ルクセンブルク![]() |
2位 | 米国![]() |
ドイツ![]() |
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米国![]() |
ノルウェー![]() |
3位 | カナダ![]() |
米国![]() |
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ノルウェー![]() |
米国![]() |
4位 | ドイツ![]() |
オランダ![]() |
ベルギー![]() |
ベルギー![]() |
アイルランド![]() |
5位 | オランダ![]() |
ベルギー![]() |
イタリア![]() |
イタリア![]() |
ベルギー![]() |
6位 | ニュージーランド![]() |
カナダ![]() |
フランス![]() |
アイルランド![]() |
スイス![]() |
7位 | オーストラリア![]() |
イタリア![]() |
カナダ![]() |
フランス![]() |
フランス![]() |
8位 | ベルギー![]() |
オーストラリア![]() |
オランダ![]() |
オーストリア![]() |
イタリア![]() |
9位 | スウェーデン![]() |
フランス![]() |
オーストリア![]() |
スイス![]() |
オーストラリア![]() |
10位 | イタリア![]() |
オーストリア![]() |
アイルランド![]() |
カナダ![]() |
オーストリア![]() |
ー | 日本(18位) ![]() |
日本(19位)![]() |
日本(13位)![]() |
日本(21位)![]() |
日本(22位)![]() |
製造業に限っても2000年代以降順位が後退
製造業の労働生産性に関しては、1990年代にはトップクラスだったものの2000年代に入って順位が後退。近年では少しずつ回復傾向を見せている。ICTや高い製造技術を持って付加価値のある製品を生み出すメーカーが数多くなっていることが大きな要因で、日本がグローバルに競争力を取り戻していくためには変革が不可欠であることがよくわかる。
こうした背景から、工場という環境では基幹システムや製造管理システム、ファクトリーオートメーション機器などをネットワークでつなぎ、工場全体の動きと経営を最適化していく、「つながる工場(=スマートファクトリー)」の重要性が多くの企業で認識されつつある。

モータビジネスユニット マーケティング総括
手塚 幹雄氏
同市場ニーズを汲み取って開発され、注目を集めているのがパナソニック株式会社 オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社(以下、AIS社)のメカトロニクス事業部モータビジネスユニット(以下モータBU)の「MINAS(ミナス)」シリーズ。
「インダストリー4.0の考え方から、ITとモノづくりの融合は不可欠です。また、人件費高騰を防ぐ自動化・省人化の必要性、ウェアラブル市場の拡大によって製造する機器の小型化、薄型化などを背景に、現場での問題点は日々増え続けています。そういったお客さまのお困りごとを解決すべく、新製品のMINAS A6シリーズを展開しています」。モータBUマーケティング総括 手塚幹雄氏はこう話す。
インダストリー4.0実現に不可欠な駆動と制御をともに支援
2015年に発売されたMINAS A6シリーズは、工業用ロボットなどの可動部分に設置され実際にモーションを司るサーボモータ(駆動・検出部)と、コントローラからの作業の指令を共有しモータに伝えるサーボアンプ(制御部)で構成される。サーボとは、物体の位置や姿勢などをもとに制御などを行う、ファクトリーオートメーションやロボット分野で欠かせない技術だ。
同社では、1933年にモータ事業をスタート。最初にFAサーボを発売したのは1983年のことだ。1993年には、MINASシリーズの生産をスタートし、2014年にはFAサーボ1000万台を突破した。市場開発が進む中国においては市場シェア20%でNo. 1(※)を誇る。

リアルシステムズ社
モータビジネスユニット 開発総括
「開発にあたっては、製造ライン、製造フロア、工場全体の設備に関する課題に目を向けました。設備立ち上げのリードタイムを短縮・生産効率の向上・高度な同期制御での加工精度の向上の3つです」。開発にあたったモータBU開発総括 加藤康司氏はこう話す。
では、工場の生産性を高めるIoTに欠かせない技術「サーボ」とは具体的にどのようなメリットを与えてくれるのだろうか。