植物に手を入れることなく、植物の内側で何が起きているのかが把握できる――。こんなユニークな技術を使ってサービスを展開している農業ベンチャー企業がPLANT DATA(プラントデータ)だ。「植物の声を聴く」という独特なコンセプトの研究をベースに、日本そしてオランダで事業を進めている。代表取締役CEOの北川寛人氏に、植物の声を聴くアプローチの中身と、そのアプローチが開く農業の可能性を聞いた。
――PLANT DATA(プラントデータ)が目指している農業の未来は何でしょう。
北川 近年、例えばヘルスケアの世界ではセンサーなどを使って、人間の体温や血流量といったバイタルデータを定期的に取得し、それを健康増進や美容といった様々な領域に適用しようという動きがあります。
当社がやろうとしてることは植物のそれに近いです。当社は今まで人間が見ることができなかった植物の生体情報を計測して「見える化」し、それを栽培管理に生かすためのサービスを提供しています。将来は、こうしたデータを活用することで、いわゆる篤農家の方のノウハウを凌駕(りょうが)する形式知を抽出して、農業はもちろん、植物に関わる様々な領域に貢献できる成果を出していきたいと考えています。

――プラントデータには主要な技術やサービスがいくつかありますね。
北川 当社では現在、3つの生体計測の手段を持っていますが、大きな売りの1つが「クロロフィル蛍光計測」というものです。これは、その植物が備えている光合成する力を見る手法です。
光合成とは、植物が光エネルギーを使って、水、そして空気中の二酸化炭素から炭水化物などの光合成産物を合成する活動を指します。この光合成の機能は、その植物が植えられている環境のストレスに敏感に反応するんです。対象は葉緑素を持つ作物、例えばトマトやレタス、ブドウなどですが、ユーグレナなどの藻類もOKです。
植物に対してクロロフィル蛍光計測を実施していくと、光合成産物が葉、茎、果実にどのように分配されているのかといったような、植物の内部で起きていることが可視化できます。これを応用して、人間の目だけでは気づきにくい、わずかな環境ストレスや病虫害の影響を特定しようというわけです。
植物の内側で起きていることが可視化できるので、目に見えるような障害が発生する前に、対策が取れるようになります。例えば植物にストレスをかけてしまった原因は、ハウスの室温設定だったのか、それとも葉かきだったのか。このクロロフィル蛍光計測による測定結果と、温度や湿度といった環境データとの相関解析を行うことで、原因を具体的に検証していくことが可能です。
これが結果として収量減少の防止、ひいては収量の向上につながります。
