「あきだわら」「萌えみのり」「つきあかり」「にじのきらめき」……。これが何の名前かわかる方はまだそれほど多くはないだろう。知っている人はよほどのお米好きか、その関係者に限られる。これらは、いわゆる「良食味多収米」と呼ばれる米の品種や銘柄の名前。つまり、“美味しくてたくさん獲れるお米”のことだ。最近、業務用市場を中心に需要が高まり、新潟や東北などの米どころで生産が拡大している。一般消費者向けにも手に入るようになってきた。味の面でブランド米に迫り、単位面積当たりの収穫量で3〜4割程度多くなる例もある。米の売り上げは、「単価×収量」で決まるため、農業収益の安定化に寄与するとみて、取り組む生産農家が増えている。ブランド米を中心に動いてきた日本の米づくりを大きく変える可能性がある。

国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が開発した良食味多収米の新品種「にじのきらめき」(左側)とコシヒカリ(右側)の圃場での様子。この写真を見ると「にじのきらめき」の草丈は短く、倒れにくいことがわかる。肥料を多く入れる多肥栽培という方法ではコシヒカリに比べて30%弱多く獲れる。「にじのきらめき」の開発時の名前は「北陸263号」。(写真提供:農研機構)

一般にお米と言えば、コシヒカリを中心とするブランド米を思い起こす人が多いのではないだろうか。毎年、2月には日本穀物検定協会によるブランド米の食味ランキングが発表され、どの米が特Aランクになったかが話題になる。こうしたブランド米の評価は消費者の購買行動にも影響を与え、農家もブランド米を中心に生産計画を立てる。このように、日本の米づくりはブランド米を中心に回っている。

良食味多収米の代表的な品種「あきだわら」。最近になってスーパーマーケットで手に入るようになってきた。一般的な銘柄米と同等の価格で売られている。(写真:高山和良)

しかし、そうした状況の中で「良食味多収米」というジャンルのお米がじりじりと存在感を強めている。中食・外食向けの業務用ニーズが拡大し、一般的なスーパーマーケットや小売店でも手に入るようになってきた。強い需要に支えられ生産量が増えているためだ。ブランド米と比べれば生産量はまだずっと少ないものの、伸びは著しい。このまま広がっていけば、日本の米づくりを大きく左右する存在になり得る。既にその兆しは現れている。

最近、小売市場で手に入るようになった良食味多収米は「つきあかり」「あきだわら」「萌えみのり」といった銘柄だ。いずれも主に業務用に流通してきたもので、一般消費者から見ると黒子のような存在だったが、生産量が増えたことで店頭で目にするようになった。実際に口にした消費者の間に、手頃な価格で買える美味しいお米だという認識が広がりつつある。

米穀店でも良食味多収米が売られるようになってきた。都内の老舗米穀店、浅間食糧(東京都大田区)の店頭には、「コシヒカリ」「新之助」の横に良食味多収米の「つきあかり」が並べられている。その美味しさにリピーターが増えているという。(写真:高山和良)