レンジで温めるだけで炊きたてご飯が食べられる「パックご飯」の市場拡大が止まらない。かつては単身者向けや非常食といったイメージが強かったが、今ではすっかり日常遣いの食品として定着、多くの家庭に常備されるようになった。このパックご飯、業界の専門用語で言うと「無菌包装米飯」という難しい呼び名になるが、市場規模は20年以上にわたって右肩上がりで伸び続けている優良商品だ。20年間の成長率は毎年6%ほど。低成長が長びく日本経済の中で、規模は決して大きくないが、これだけ長期間、安定して伸び続けている商品はそう多くない。「サトウのごはん」で知られるパックご飯のトップメーカー、佐藤食品工業(サトウ食品)に、パックご飯が伸びている理由、そして米の美味しさを引き出す工夫を聞いた。

製品バリエーションが広がるパックご飯。標準的なものは200グラム入りのものだが、最近ではシニア層への広がりや若年層でも糖質を抑える動きを反映し、150グラム、130グラムといった少量パックの製品が伸びている。また、発芽玄米ご飯やもち麦入りのパックなど健康志向の商品も人気だという(写真:高山 和良)

この20年で生産量は3倍以上に拡大

“レンジでチン”するだけで、温かく美味しいご飯が食べられる「無菌包装米飯」、すなわち「パックご飯」の市場が拡大している。既に多くの人にとっては日常遣いの食品となっているが、データをつぶさに見ていくと、20年以上の間、毎年6%ほどの伸び率で成長し続けている。これだけ右肩上がりの状態が長く続く商品ジャンルは他に例を見ない。

実際に、農林水産省が公開している「食品産業動態調査」のデータを詳しく見ていくと、パックご飯市場の着実な拡大・伸張ぶりがわかる。

「食品産業動態調査」に無菌包装米飯の生産量データが初めて掲載されたのは平成11年(1999年)のこと。この年の生産量はまだ5万3970トンにすぎなかった。ところが、それ以来ずっと右肩上がりの成長を続けている。2011年には、11万139トンと1999年の2倍以上に拡大。昨年(2018年)には17万トンを超え、20年間で3倍以上の生産規模になっているのだ。

2019年の最新データはまだまとまっていないが、さらに増えることは間違いない。今年1〜9月のデータを昨年の同期間と比べると伸び率は約6.4%であることから、2019年の生産量は18万トンを超える計算になる。金額ベースの市場規模は、推定で700億円超と見られており、このままの成長が続けばあと5年ほどで1000億円を突破する。一つの食品ジャンルとしては軽視できない重要アイテムに育ってきていることがわかる。

パックご飯の生産量は年率6%ほどで伸び続けている。2019年度のデータは1〜9月までの統計データから筆者が計算したもの。金額ベースでは、2018年の市場規模は年間700億円を超え、このまま行けば5年ほどで1000億円を突破する(グラフは農林水産省の『食品産業動態調査』から筆者作成)

予想を上回る伸び

食品市場における注目株とも言えるパックご飯の現状と市場拡大の背景や美味しさの秘密などについて、「サトウのごはん」で知られる佐藤食品工業(以下、サトウ食品と略)執行役員で経営企画本部副本部長の渡辺今日子さんに話を聞いた。同社は年間で2億食以上(2018年時点)のパックご飯を生産しているこの分野のトップメーカー。同社では市場ニーズの拡大を受け、生産ラインの増強を前倒しで進めており、2019年4月には新潟県聖籠町に新しい工場「聖籠ファクトリー」を完成させ、6月から稼働させている。

サトウ食品では、パックご飯の市場が予想を上回るスピードで伸びていると見ている。

渡辺さんはその背景を次のように語る。

「何か大きな社会変化が起きてわれわれの読みが変わったわけではなく、もともと社会課題としてあった核家族化や少子高齢化に伴って家庭で炊飯する機会が減り、より簡便に時短料理が求められる中で個食対応がさらに進んだためと認識しています」

こうした強い市場の引きに対して、サトウ食品では、これまで生産ロットの少ない商品を休売してまでもメイン商材の供給に対応していたが、それでは対応しきれないと判断。新工場の建設・稼働を前倒しで進めることで、パックご飯の供給体制を整えた。

新工場はもともと2017年に計画し、2020年の完成、2021年頃の本格稼働を予定していたものだが、急速に膨らむ市場ニーズに応えるために計画を2年前倒しした。新しい聖籠ファクトリーの日産能力は20万食。既にある同社東港工場の63万食、北海道工場の20万食と合わせて、日産103万食を生産できる体制となった。同社の年間供給食数は約3億食に上がる。

サトウ食品のパックご飯の売り上げも右肩上がり。2019年4月期には200億円を超えた(グラフ提供:サトウ食品)