「パンガシウス」という耳慣れない名前の魚が市場を拡げている。なまずの一種で、海外ではよく食べられている魚だ。国内でも数年前から一部の間でどんな料理にも合う淡白な白身魚として注目を集めていたが、ここ最近になって広く浸透し始めている。背景にはSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の大きな流れがある。単に美味しく便利というだけでなく、環境に優しい水産物として評価を高めている格好だ。なぜ、今パンガシウスなのか。国内でパンガシウス普及を牽引してきたイオンリテールの商品企画本部 水産商品部 松本金蔵部長に話を聞いた。

“謎の魚”から美味しい魚へ

近年、イオンやコストコなどで「パンガシウス」という耳慣れない名前の白身魚を目にする機会が増えている。パンガシウスは「なまず」の一種で、「バサ」「チャー」などと呼ばれることもあるが、最近では、パンガシウス(Pangasius)という学術名の方が広がりつつある。

パンガシウスを使ったアクアパッツァ(写真提供:イオンリテール)

実際、パンガシウスを中心とした食用なまずの輸入量はここ数年でぐんぐん伸びている。財務省の貿易統計にまとまった輸入データが初めて載ったのが2012年のこと。当時670トンほどだった量が、2018年にはその10倍以上の7200トン近くにまで増えている。2019年はやや伸びが鈍ったものの、1〜11月では5800トン以上になっていて、計算では6300トン以上となり、2017年の量を超える数字に落ち着きそうだ。

データは他の食用なまずの輸入量も含むが、ほとんどはパンガシウスの冷凍フィレー、つまり冷凍の切り身と見られる。

財務省の貿易統計に、まとまった統計品目として「なまず(パンガシウス属、シルルス属、クラリアス属又はイクタルルス属のもの)」の項目ができた2012年以降のデータをグラフ化した(財務省貿易統計から筆者が作成)

SDGsの流れが普及を後押し

では、なぜパンガシウスはここまで市民権を得たのだろうか?

どんな料理にも合う淡白な味や手頃な値段、すぐに料理できるように骨が抜かれ加工された形で提供されたことなど、消費者に受け入れられた要因はいくつかある。ただ、その中でいちばん大きいのは流通最大手のイオングループがSDGsの流れの中でパンガシウスを積極的に拡販してきたことだろう。

イオンでは、2014年2月に「イオン持続可能な調達原則」というグループ全体の調達方針を掲げ、水産物についても天然の水産物に対する「MSC認証」や養殖水産物についての「ASC認証」を重視。グループの総合スーパー事業を担うイオンリテールが両方の認証商品の販売に力を入れている。

MSC認証は天然の水産物に対するもので、「海洋管理協議会」(Marine Stewardship Council、以下、MSC)というロンドンに本部を置く世界的な非営利団体が定めた基準に則った漁業に与えられる認証。もう一つのASC認証は、MSC認証の養殖版と言えるもの。やはり「水産養殖管理協議会」(Aquaculture Stewardship Council、以下、ASC)というオランダに本部のある国際組織の基準に沿った養殖業に与えられる認証だ。

どちらも資源保護や環境に配慮した水産物である証しとなる。ここ数年、世界中の漁業・養殖業の関係者、流通関係者から高く評価され、2つの認証を取った水産物の数はどんどん増えている。最近では、一般消費者にもSDGsというキーワードがかなり浸透し、罪悪感を持たなくて済む「ギルトフリー消費」や、社会問題や環境問題を引き起こさない「エシカル(倫理的な、の意)消費」を好むムードが広がっている。MSC認証やASC認証のマークが付いた食材・食品に対して付加価値を感じる人は確実に増えている。

イオンリテールが提供しているパンガシウスは、ASC認証を受けたものであり、こうした流れに合致した商品と言える。

イオンで販売されているパンガシウスの切り身。「ASC認証」を受けたものであることを示すラベルが付けられている(写真提供:イオンリテール)