新型コロナウィルスは私たちの生活様式を大きく変えようとしている。企業も活動や戦略の方向転換を余儀なくされている。特に人々の生活基盤を支える食関連の産業への影響は大きい。今回、食品大手のカゴメを率いる山口聡代表取締役社長にWithコロナの時代の戦略について聞いた(取材は2020年7月2日に実施)。同社はこの4月に「新型コロナウイルス対策本部」を設置した。山口社長は対策本部長として陣頭指揮を執り、全社的な方針に反映している。産地分散など山口社長が示す新型ウイルスへの向き合い方の中に、多くのヒントが含まれている。(全2回、前編)

カゴメ 代表取締役社長 兼 野菜事業本部長の山口聡(やまぐち さとし)氏。2020年1月に社長就任。4月に設置した「新型コロナウイルス対策本部」の本部長として、新型コロナウイルスへの全社的な対策でも陣頭指揮を執る。(写真提供:カゴメ)

──新型コロナウイルスの世界的な感染拡大について、現時点でどのように受け止めているのか、また、それを受けて御社のビジネスやサプライチェーンへの影響をどのように考えていらっしゃるかについて教えてください。

山口社長(以下、敬称略):私どもは食品メーカーですので(当然のことながら)国内外でけっこう大きな影響を受けています。今も状況は刻々と変わっていますが、感染拡大に伴って消費の中心が外食から内食に動きましたので、それに対して私どもの商品で言えば、内食向けのトマトケチャップや野菜飲料は伸びましたし、外食向け商品は短期的には大きく減った時期があります。

今、少しずつ経済が再開するモードに入ってきていまして、例えば学校給食が始まってお子さんが家庭内で食事をされる機会が減ってきたりするとトマトケチャップなどの家庭内需要が動きます。こういった消費動向には迅速に対応していこうというのが当社の動き方の基本です。サプライチェーンについては影響は受けてはいますけれども、他の産業に比べると大きなものではなく、分断は起きていません。

──原料調達についてはいかがですか?

山口:私どもの主力商品はトマトケチャップや野菜飲料ですが、そういった商品の原料となるトマトについては約9割を海外から調達しています。現地で夏に加工用トマトを栽培してもらい、その場所でトマトペーストという一次加工品にして、それを輸入して国内で再加工していろいろな商品に展開しています。

ただ、トマトは農産物ですから、豊作の年も凶作の年もあります。また年を追うごとに気候変動の幅が大きくなっていて加工用トマトの栽培リスクも高まっています。私どもはもともと農産物を原料にしてその良さを活用した商品を作ってきたこともあり、こういったボラティリティ(変動性)に対応するため、長い時間をかけて産地分散に取り組んできました。

トマトの場合なら米国と欧州という東西の分散、さらに豪州や南米を加えた南北の分散というように(リスク分散をした)調達体制を取っています。これまでやってきたこうしたことが今回の新型コロナウイルスの緊急時にも役に立ちました。現時点では原料調達あるいは輸入に大きな問題は生じていないというのが現状です。

人手不足のリスクに備える

山口:それから、国内では農(生鮮野菜)の事業もやっていまして、生鮮トマトを生産してスーパーなどで販売しています。こちらは、社内的には菜園と呼んでいる大きなガラスの温室を全国に持っていて、年間を通して栽培・出荷をしています。この温室は大きな植物工場みたいなものですが、ここも労働力は確保できていて、いろいろな他の会社の工場と同じように感染拡大防止に最大限配慮して続けていますので、国内の生鮮トマトのサプライチェーンもなんとか回している状況です。

ですから、(内外共に)サプライチェーンが分断してこれから再構築していくというよりも、いくつか想定される今後のリスクに対して、どうやって対処して、事業を維持していくかが私たちの直面している状況です。

──世界の感染拡大が広がっている状況で、世界的には最悪の状況です。いろいろな生産地が今後感染の危機にさらされています。今後も維持できるかどうか、今後の見通しについてはどうお考えですか?

山口:やはり危機的な状況だと思っています。今後どうなるかが読みにくいですね。ただ、今回新型コロナの感染拡大の中で初めてわかったことは、産地がある各国では農業や農産加工業というのはライフラインを支える産業なものですから、ロックダウンの対象にならずに除外されている、活動できるということです。

ちょうど北半球の産地ではこれから今年の加工のシーズンに入っていきます。これまでのところ苗の作付けや栽培についてはほぼ予定通りできています。ただ、これから起こり得るリスクは、いよいよ収穫となった時に、人手の確保ができるかどうかが懸念されています。例えば、アメリカの加工用トマトの主産地はカリフォルニア州で感染拡大が広がっている地域でもあり、人の確保については非常に大きなリスクと捉えています。現地とやり取りしながら状況変動の情報収集を頻繁にやっている状況です。

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グローバルに広がるカゴメグループの原料調達先。東西・南北と調達リスクを分散した産地構成になっている。(資料提供:カゴメ)