新型コロナウィルスが人々の生活様式を大きく変えつつある中、企業も活動や戦略の方向転換を余儀なくされている。特に人々の生活基盤を支える食関連の産業への影響は大きい。今回、食品大手のカゴメを率いる代表取締役社長の山口聡氏にWithコロナの時代の戦略について聞いた(取材は2020年7月2日に実施)。同社はこの4月に「新型コロナウイルス対策本部」を設置した。山口社長は対策本部長として陣頭指揮を執り、全社的な方針に反映している。この後編では自動化・ロボット化、農業法人とのパートナーシップなど、新時代に向けた施策を語る。

(前編はこちら

生産現場は自動化とロボット化で対応

──生産現場の方では特に自動化やロボット化、また、ネットをうまく使っていくことについて、これまでにも進めておられたと思います。新型コロナウイルスの時代はよりいっそうスピードを持って推進することが必要だと想像しますが、それについてはいかがですか?

山口:おっしゃるとおりですね。生産現場は少し前までは人手不足が深刻な問題でしたし、生産性向上の観点からも、自動化やロボット化は大きな課題として取り組んできました。

ただ、新型コロナの時代は、作業上において人が密に接触することを避けなくてはいけません。まさにソーシャルディスタンスの考え方が新たに入ってきまして、それを具現化するのは自動化でありロボット化です。これまでの方針を継承してかつ加速化するということになると思います。

具体的には、今後の固定投資の計画の中にもかなり自動化関連が増えてくると思いますし、ここ数年私どもの主力工場がちょうど更新時期を迎えていましたのでトマトケチャップや飲料の工場でかなりの金額をかけて、更新投資を行ってきています。そういったタイミングでは倉庫の自動化や、工場内の例えばパレット積みのロボット化は相当なスピードでやっていきます。これから投資回収の効果を見ながらどのくらい投資していけるかがポイントになってくると思います。

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新型コロナウイルス対策本部からは大きな方針から細かい行動指針までが全社通達の形で出され、それを基に各部門ごとの方針に修正され実践される。写真はリモート環境での営業活動と工場内での新型コロナウイルス対策が実施されている中での工場内の様子、リモート勤務により人気がほとんどない本社オフィス。(写真提供:カゴメ)

人手とAI・リモートの両方を模索

──グローバルに展開している製造メーカーの間では、自動化・ロボット化について国内のマザー工場*を立ち上げてそこで積み上げたノウハウを海外に展開しようとするやり方がありますが、そうしたことについてどのようにお考えですか?(*製造業では技術開発や最新技術をいち早く実装し他の工場に展開する工場のことをマザー工場と呼ぶ。グローバル・メーカーではマザー工場で立ち上げた製造技術や生産ノウハウを内外の他の工場へ展開する)

山口:私どもの海外拠点はトマトの一次加工や、それから作ったピザソースなどのB to Bの製品が中心です。一方で国内の工場はB to Cの飲料、調味料が中心なので内外で生産の内容が少し違います。マザー工場を作ってそのノウハウを全世界に展開するというよりは、品質管理ですとか製造技術を日本のスタッフが海外に出かけていって伝承するやり方を取っていますので、そういった形を続けていくのかなと。個別の技術を担当する人間が伝えていくやり方が当面は中心になると思っています。

今回の新型コロナの感染拡大で人が行けませんし、実際に海外駐在の人間を戻したりもしていますので、どういうやり方があるのかについては模索中です。

──その時に現在のオンライン技術やサービスの進展が役に立つということでしょうか。

山口:そうですね。生産現場や品質保証面でもそうですし、少し前に発表しましたが、NECさんと一緒にAIを使って加工用トマトの栽培をもっと効率的に、あるいは栽培経験が少ない人でもうまくでき、余分な農薬や肥料を使わないという仕組みを整えています。これを、いま夏に向けて北半球の生産者さんにパッケージソフトとして売り込んでいて良い評判もいただいています。こうしたことも、リモートを通じてやっていきながら、新しい農業の形につなげていけたらという思いもあります。

このようにして、よりサステナブルな農業ができれば原料調達も中長期的に安定しますし、コストも下がっていくメリットもあります。このようなことを含めてリモートで何ができるかは今後の課題です。

──他との連携が重要ですね。

山口:私たちの長期ビジョンとして、トマトの会社から野菜の会社になるというものがありまして、そこに向かっているわけですが、トマトと野菜で少し違うところがあります。

トマトは種の開発も栽培技術の開発も自前でやっています。それに対してトマト以外の野菜は、すべてを自前主義で整えるのはお金も時間も相当かかってしまう。野菜はオープンイノベーションの枠組みの中でやっていくほうがスピードも上がると思っていますので、その点でトマトと野菜は違います。NECさんだけでなく、いろいろな種子メーカーや加工メーカーや研究機関とのオープンイノベーションのネットワークを広げていく中で取り組みを加速していこうと思っています。

オンライン取材で質問に答える山口社長。背景は同氏の思い入れのあるオーストラリアの提携農場の写真。(写真:編集部)