SDGs(持続可能な開発目標)の実現が求められている今、「農」や「食」を核に社会課題の解決を目指すテーマパークが注目を集めている。カゴメが長野県富士見町に開園した「カゴメ野菜生活ファーム富士見」、ミュージシャンの小林武史氏がプロデュースした千葉県木更津市にある「クルックフィールズ」、岩手県陸前高田市にオープンする予定の「ワタミオーガニックランド」を題材に、新しいタイプのテーマパークがどのように社会課題を解決しようとしているのかを見ていく。今回(後編)はクルックフィールズとワタミオーガニックランドの取り組みをリポートする。(全2回)

前編では、カゴメと長野県富士見町による「カゴメ野菜生活ファーム富士見」を例に挙げ、「農」と「食」を切り口に社会課題解決に取り組むテーマパークの在り方を見てきた。

同じように「農」と「食」をテーマとしているが、そこに「サステナビリティ」「アート」といったキーワードを加えて、新しい時代のライフスタイルを提案しようとしているテーマパークがある。千葉県木更津市に昨年(2019年)11月に第1期オープンを果たした「KURKKU FIELDS」(以下、クルックフィールズ)だ。

千葉県木更津市にある「KURKKU FIELDS」(クルックフィールズ)のエントランス付近。この先に約30ヘクタールの広大な空間が広がっている(写真:高山和良)

このテーマパークは、音楽プロデューサーであり、一般社団法人ap bank代表としてサステナブルな社会を目指す活動に取り組んできた小林武史(こばやしたけし)さんがプロデュースしたものだ。ap bankは環境問題や自然エネルギー推進などに取り組んでいる。第1期オープンでは「食」「サステナビリティ」「アート」を軸に様々なコンテンツを提供し、段階的に拡充させていく予定だ。

「農」と「食」を中心とした「本質的な喜び」を提案

クルックフィールズとその運営母体である株式会社KURKKU(以下、クルック)の代表取締役会長兼プロデューサーとして、事業のクリエイティブ全般を統括する小林さんは、クルックフィールズを「食べるということを中心として本質的な喜びを提供する場所」と定義している。小林さんのミュージシャンとしての感性とサステナブルな社会実現のための様々な活動を通じて培った価値感や理念をつむぎ合わせた集大成、それが「クルックフィールズ」と言っていいだろう。

9月からクルック/クルックフィールズの代表取締役社長として事業経営とオペレーションを統括する江良慶介(えらけいすけ)さんも次のように語る。

「経済成長が生み出す未来という私たちの生活の基盤となっていた考え方に対して、多くの人が不安を持つ時代になっています。世界でも有数のメガ都市である東京との距離感(筆者注:自動車で1時間)を生かし、都市と地域のプラットフォームとして機能し、新しいサステナブルなライフスタイルを感じる場づくりを行っていきます」

2010年に設立された有機農業法人がベース

クルックフィールズが提案する「サステナブルなライフスタイル」のコアは、やはり豊かな「食」であり、それを生み出す「農」である。実際、クルックフィールズのベースとなっているのは、2010年にap bankの出資によって小林さんが設立した農業法人、株式会社「耕す」の30ヘクタールにも及ぶ有機農場だ。

園内には圃場のほか、乳牛や山羊の放牧場、平飼いの養鶏場、水牛の酪農場など、循環型の有機農業を営む設備がひと通りそろう。農場から出る牛ふんや鶏ふんは刈草や落ち葉、レストランからの残渣や収穫されない野菜などと一緒に発酵させ畑の堆肥として使われる。農場で使う電気も園内に設置された太陽光発電設備によって賄われている。

この圃場の部分に、レストランやベーカリー、シャルキュトリー(フランス語で肉加工食品の総称)、チーズ工房、ミルクスタンドなど豊かな「食」を味わい、購入できる施設が加わった。

左の写真はクルックフィールズの「農」の一部。スイスブラウン種の乳牛が放牧され、園内の圃場が見える。右の写真は「食」の部分。レストランやミルクスタンド、ベーカリーなどの施設で豊かな「食」を楽しめる(写真左:クルックフィールズ提供、写真右:高山和良)

サステナブルなライフスタイルを感じる空間

さらに、パーク内には前衛芸術家の草間彌生やフランスの現代美術家カミーユ・アンロなど著名アーティストの作品が常設展示され、野外ライブ演奏が楽しめるライブステージや、自然公園的な池や小規模ながら森林もある。「タイニーハウスビレッジ」という、一風変わった宿泊設備も備えている。来園者は、こうした空間でゆったりと過ごしながら、太陽光発電設備による自然エネルギーの活用や、植物や微生物の力を借りてパーク全体で水を循環させる仕組みなどに触れ、サステナブルな社会とは何か、そこでの新しいライフスタイルとはどんなものかを感じることができる。

クルックフィールズでは、多彩な体験プログラムが用意されている。パーク全体の取り組みを知るためのツアーや、園内のエディブルガーデン(食べられる菜園の意味)で育てられている野菜やハーブを収穫したり種まきをしたりする体験ツアーなどを通じて、豊かな「食」と「農」を体感できる。今年のコロナ禍によって実施できないものもあったが、最近になって少しずつ再開され始めている。

この9月20日には、屋外イベント「KURKKU FIELDS HARVEST (クルックフィールズ ハーベスト) 」が初めて開催された。このイベント中、屋外のライブステージではプロデューサーの小林さん自身が出演するライブも開催された。ミュージシャンがプロデュースするテーマパークならではの「アート」の部分が今後充実してきそうだ。

クルックフィールズの循環型農業の仕組みや、水の再利用や太陽光エネルギーの使い方などをイラスト入りで解説した看板。園内を散策しながらこうしたサステナブルな仕組みを実感できるようになっている(写真:高山和良)
園内のエディブルガーデンで収穫体験中の来園者の様子(写真提供:クルックフィールズ)