フードロス削減事業のベンチャー企業である、コークッキングの「レスキューデリ」事業が好評だ。フードコートなどの食店舗集積地で、閉店後に売れ残った食品を買い取り、それを帰り際の従業員に売る。2020年1月に東京駅構内のエキナカ商業施設で行ったフードロス削減の実証実験では、参加した6店舗のフードロスを1カ月間で約1トン削減することに成功。8月からはリニューアルした「グランスタ東京」内で実証実験を再開、11月には12店舗のテナントが参加している。この成果を受けて、2021年には本格サービス化する可能性を模索中だ。事業者、従業員、そして地球環境にもよいという新「三方よし」のレスキューデリ事業。担当者に話を聞きながら、「もったいない」を持続可能な事業に変えるビジネスの在り方を探る。

ヨーロッパモデルをベースにしたフードロス削減サービス

東京の玄関口となる国内最大級のターミナル駅の地下には、改札内最大のショッピングモール「グランスタ」が広がっている。コークッキングがここでフードロスの削減を目指す「レスキューデリ」事業の実証実験を実施することになったきっかけは、「JR東日本スタートアッププログラム」に応募し採択されたことだった。

JR東日本スタートアッププログラムは、JR東日本グループが展開するオープンイノベーション型の協業プログラムである。駅や鉄道など、同社グループの経営資源や情報資産を活用できるビジネスやサービスのアイデアを募集し、事業化を目指す。2017年にスタートして以来、ベンチャー企業を中心に63件の提案が採択されている。

コークッキングは2019年4月、「レスキューデリ」でこのプログラムに応募。8月に採択され、2020年1月に実証実験に臨むことになった。

「レスキューデリ」販売活動の様子(写真提供:コークッキング、以下同)

同社は本業でSDGs(持続可能な開発目標)に取り組む「SDGsベンチャー」の代表的な存在である。フードシェアリングサービス「TABETE」の事業化を実現したことで有名だ。

TABETEは消費者と店舗をマッチングするアプリとして実装されている。店舗側で営業時間中に売れ残りそうな商品をアプリに掲載し、店舗に買いに来てくれる購入希望者を募る。価格設定は250~680円と割安で、代金のやり取りはアプリ上で完結する。同社はTABETEを通じて、飲食店や小売店でロスになりそうな多くの食事を廃棄の危機から“レスキュー”してきた。

TABETEは2018年のリリース以来、着実に会員数を伸ばし、現時点で登録店舗数は約1400店舗、登録ユーザー数は約32万人を超えた。2020年10月には「TABETE レスキュー掲示板」も本格的に稼働し始めた。こちらは生産者と“規格外”とされる農作物や食品ロスの問題に関して理解ある購入者を結ぶサービスである。

川越一磨社長は2015年、「食」を切り口に「人間らしい創造的な暮らし」を提案するベンチャー企業として、コークッキングを立ち上げた。設立後、日本スローフード協会主催の食品廃棄について考えるイベントを手伝う機会があり、それまでも気になっていた食品ロスの問題と向き合った。啓蒙・啓発自体は重要だが、こうした活動だけでは世の中は変わらないか、変わるとしてもスピードがあまりにも遅すぎると感じたという。

事実、日本でも食品ロス問題が叫ばれて久しいが、削減量が目に見えて増えているわけではない。もっとスピード感をもってできることはないかと海外の事例を調べると、ヨーロッパでは日本にはない多岐にわたる取り組みが実践されていた。料理を使って様々な課題解決をするにしても、最低限でも食の持続可能性が担保できなければ、行き詰まることになる。そこでフードロスという観点から、食の持続可能性を維持できる事業を創出すべく、「TABETE」の開発に着手したのである。

コークッキングの川越一磨社長

少人数でオペレーションの効率化を図る

フードロス削減事業に関するナレッジの蓄積から生まれた「レスキューデリ」の仕組みは、いたってシンプル。「レスキューデリ」のスタッフが、その日店舗で売り切れなかった食品を買い取り、施設の従業員に割安で販売することで、フードロスを削減するというものだ。

販売場所は休憩室や従業員通路、催事場など、施設側との相談によって決まる。現在の主な商品はパンとおにぎり、いなりずしのほか、たまに弁当や菓子類も扱うという。

「レスキュークルー」と呼ばれる現地スタッフは、1月の実証実験当初から3人だけだ。施設によっては21時閉店の店舗もあれば、22時閉店の店舗もある。時間差を利用して作業を分担することで、3人でもオペレーションが可能だという。

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レスキューデリの仕組み。施設内の店舗にて余った商品を買い取り、帰途にある施設の従業員に販売する(出所:コークッキングのWebサイト https://www.cocooking.co.jp/rescuedeli/)

グランスタでの事業では、21時閉店の店舗の買い取りからスタートするため、レスキュークルーは20時55分には集合する。そのまま買い取りに行くクルーと販売場所の設営をするクルーとに分かれて作業を進め、22時閉店の店舗の買い取りを済ませれば、あとは販売業務に徹する。「レスキューデリ」の閉店時間は23時30分。閉店までにどうしても売り切れなかった商品は、レスキュークルーが廃棄まで担当する。

2020年11月末時点では東京駅のエキナカ商業施設内で12店舗が「レスキューデリ」を導入。2020年8月にリニューアルオープンしたグランスタ東京で10店舗、残り2店舗がエキュート東京の店舗だ。エキュート東京は店舗のみの参加のため、施設としてカウントしないが、グランスタ東京以外の施設では「たまプラーザテラス」と、もう1施設(名称は非公表)あり、計3施設、テナント17店舗が「レスキューデリ」によるフードロスの削減に取り組んでいる。

月額5万円のコストカットを実現した店舗も

参加店舗の増加に伴い、レスキュークルーの人数も増やす必要があるのではないか。「レスキューデリ」事業担当の峯岸晃希さんに聞いてみた。すると「店舗数も取扱量も増えたのですが、3人というクルーの人数は変わっていません。オペレーションを効率化するために改善を重ね、何とか3人で回せる形になっています」とのこと。

一時は3人では足りず、4人の配置が必要になったこともあった。途中から「レスキューデリ」を導入したエキュート東京のテナントがグランスタと離れている場所にあり、さらにグランスタとは別の入館証が必要だったため、エキュート東京での買い取りに時間がかかってしまい、クルーの増員が不可避だったのだ。しかし、エキュート東京にも協力を仰ぐことで、3人でも回せるように体制を整えたという。

またクルーが毎日番重(ばんじゅう。運搬容器)を持参しなくてもよいよう、店舗に番重を預け、買い取り前に店でパンを詰めておいてもらうようにしたことで、オペレーションの効率はさらによくなった。

峯岸さんは「施設側とお店の方の協力のもと、何とか成り立っているという状況です」と話す。だが、店舗にしてみれば、余ってしまったものを毎日分別してゴミ袋に詰め、ゴミ捨て場に捨てに行く手間があったところに、廃棄予定の商品を買い取ってもらったうえ、廃棄コストの削減にもつながるメリットは大きい。

2020年1月から実証実験を始め、11月時点までの全店舗の買い取り量はおよそ4トンになる。もちろん買い取った商品を完売できたわけではないので、買い取り量=フードロス削減量ではないが、成果は確実にあがっている。1月から3月までの販売食数が1700食だったのに対して、9月から現時点では3500食にまで伸張した。あるベーカリーでは、「レスキューデリ」を導入したことによって月額5万円のコスト削減ができたという。

コークッキングで「レスキューデリ」事業を担当する峯岸晃希さん