肉や魚など、生鮮食品の包装が2021年を境に大きく変わるかもしれない。そんな食品包装技術が国内大手スーパーで採用され始めている。技術の名称は「真空スキンパック包装」。精肉の鮮度保持期間が従来に比べて3倍以上に伸び、フードロス削減効果が見込まれる。欧州では以前から普及している包装技術だが、ここに来て国内で広がり始めている。2020年にダイエーが口火を切り、2021年5月下旬からイオンリテールが関東の30店舗で展開を始めた。他の大手・中堅スーパーも導入を検討、一部で採用が続く。消費者に受け入れられれば、店舗内の生鮮棚や家庭内での食品保存や購入のあり方が様変わりし、未来の食のスタイルにも大きな影響を与えそうだ。

「真空」が未来の食のスタイルを変える、と言ったら言いすぎだろうか。

もちろん現時点ではまだそこまでハッキリとは言い切れない。しかし、少なくとも精肉の食品包装というジャンルでは、2020年から今年2021年にかけ「真空革命」とでも呼ぶような変化が起こっている。今はまだ小さな変化に過ぎないが、私たち日本人の未来の食を大きく変える可能性を秘めている。変化の核となっているのが精肉の「真空スキンパック包装」だ。

棚に陳列された真空スキンパック包装された牛肉。写真は、この5月下旬からイオンリテールの一部店舗(関東エリア30店舗)で展開が始まった「タスマニアビーフ」の真空スキンパック包装商品<br>(写真:高山和良)
棚に陳列された真空スキンパック包装された牛肉。写真は、この5月下旬からイオンリテールの一部店舗(関東エリア30店舗)で展開が始まった「タスマニアビーフ」の真空スキンパック包装商品
(写真:高山和良)

「真空スキンパック包装」とは、特殊なフィルムを使って食品をぴたりと包む技術を指す。

ラッピングに使われるフィルムは驚くほど柔軟性に富み、食材表面のごく微細な凹凸までそのまま写し取るかのようにすこしのわずかなすき間もなく包み込む。包まれた内部はほぼ空気が存在しない真空状態に保たれ、それでいて減圧によって食品の形を大きく崩さない。ステーキ肉やかたまり肉などはそのままの形が保持でき、イクラのようなごく柔らかい食材でも潰れることなくラッピングできる。

またフィルムは真空を保つだけでなく、特に酸素の透過を防ぐバリア機能を持つ。食材の酸化が抑えられるため鮮度保持期間が長くなり、フードロスなどの削減につながると期待されているのだ。昨年あたりからテレビやYouTubeなどで話題になり、見聞きした人もいるのではないだろうか。

大きな狙いはフードロスの削減

この「真空スキンパック包装」でラッピングした精肉を、今はまだごく一部の店舗でしかないが実際に買えるようになってきている。イオングループのダイエー、イオンリテールなど一部の大手スーパーの店頭に並び始めているほか、他の大手・中堅スーパーでも既に真空スキンパック包装を採用したり追随したりする動きが見られる。消費者の反応次第でさらに拡大する可能性がある。

真空スキンパック包装の国内における先駆けとも言えるのがダイエーだ。2019年11月に試験的に導入。昨年(2020年)5月から関東地方と近畿地方の全店で取り扱いを始め、話題を呼んだ。今年(2021年)4月末時点で最大14品目(牛肉6品目、豚肉4品目、羊肉2品目、鴨肉1品日、その他1品目)にまでこの包装による商品を拡大している。

イオングループではこの取り組みをさらにグループ全体に広げようとしている。

イオントップバリュ 生鮮・デリカ商品統括部 畜産商品部の杉本浩也部長。真空スキンパック包装されたタスマニアビーフの商品が並ぶ商品棚の前でイオングループの戦略や狙いを説明してくれた<br>(写真:高山和良)
イオントップバリュ 生鮮・デリカ商品統括部 畜産商品部の杉本浩也部長。真空スキンパック包装されたタスマニアビーフの商品が並ぶ商品棚の前でイオングループの戦略や狙いを説明してくれた
(写真:高山和良)

今年5月下旬から、イオンリテールの一部店舗でステーキ肉など高単価の輸入牛肉を真空スキンパック包装にして展開し始めた。まずは関東の30店舗から導入を始め、リブロースステーキ肉や、もも、すねなどのかたまり肉などの定番商品を中心に展開する。イオンのプライベートブランドを開発するイオントップバリュで畜産商品を担当する同社生鮮・デリカ商品統括部 畜産商品部の杉本 浩也(すぎもと ひろや)部長は次のように語る。

「イオンリテールの関東エリア30店舗で、タスマニアビーフの真空スキンパック包装を5月から供給する計画でスタートします。ただ、(プロセスセンター*に導入する)包装機械が高価なので一気には増やせません。われわれとしては関東エリアで実験して2023年までには全国で供給できるような体制にしたい」。

*プロセスセンター:生鮮品の加工や包装などを一括して行う拠点のこと。流通・小売業界では精肉分野を中心にこうした拠点を設けたり活用したりして効率化を進めている。

イオンが真空スキンパックに取り組む最大の狙いはフードロスの削減だ。杉本氏は「一番はイオンとしてフードロス問題の解決につながる商品を提案していこうということです」と商品化の狙いを説明する。