お湯に混ぜればすぐ飲める一人用の椎茸出汁(シイタケだし)商品を開発し、海外輸出にも力を入れるベンチャー企業がある。その名も椎茸祭(しいたけまつり)。同社が開発した「oh!dashi(お!だし)椎茸だし」は、紫外線を遮断する小さなパックに入った液体出汁で、原木椎茸を使った100%植物由来の食品だ。賞味期限が2年と長く、持ち運びも楽。日本国内の乾シイタケの生産量は、生産者の高齢化や後継者不足もあり、1984年のピーク時に比べて7分の1近くと減っている。他方、この商品は年々海外への輸出を増やしており、国内では若い世代にも広がりつつあるという。同社を立ち上げた竹村賢人さんは現在34歳。大企業を辞めてインドに渡り、デジタル分野の仕事を経て椎茸で起業した。独自の経験と視点でたどり着いた商品が、「フードダイバーシティ(食の多様性)」に象徴される食の新市場をどう切り開きそうか。竹村さんのストーリーから探ってみよう。

椎茸祭(しいたけまつり)というユニークな名前の会社を知ったのは、4年前のことだった。筆者が東京都世田谷区の経堂駅前で営むイベント酒場「さばのゆ」に、同社の若い男性スタッフがお酒を飲みにきてくれたのだ。彼を紹介してくれたのは、その少し前に塩麹料理のイベントに参加してくれた書道好きの女性。カウンターで和やかな会話が盛り上がり、しばらくすると「実は、椎茸のお出汁(だし)を作ってまして」と、彼から液体の入った小さなスティックを手渡された。

それが、原木椎茸を使った液体出汁「oh!dashi(お!だし)椎茸だし」だった。

原木椎茸という点に意味がある。世の中の椎茸の多くは菌床椎茸と言って、おがくずに栄養剤と椎茸菌を混ぜハウスで3~6カ月かけて育てたもの。それに対して原木椎茸は、山に生えている広葉樹に椎茸菌を打ち込み1年半~2年半の時間をかけて育てたものである。すなわち原木椎茸は、栄養剤などを使わず、山で育った木の栄養だけで育つ。なお、椎茸祭が使用している原木椎茸は山でクヌギを育てるところから手がけているものを使用しているという。

「長い時間をかけて山で育った原木椎茸は格別な旨味があります。手間ひまをかけて育てられた日本の伝統的な原木椎茸の魅力を手軽に味わっていただければと思っています」と若い男性スタッフは語った。

液体出汁「oh!dashi(お!だし)椎茸だし」のパッケージ。紫外線を遮断する小さなパックに8mlの容量で個包装されている(写真提供:椎茸祭、以下同)
液体出汁「oh!dashi(お!だし)椎茸だし」のパッケージ。紫外線を遮断する小さなパックに8mlの容量で個包装されている(写真提供:椎茸祭、以下同)

スティック上部の切り込みから簡単に開封できた。親指と人差し指で軽く挟んで容量8mlの中身をコップに入れる。そこに150mlのお湯を注ぐと、ほんのり良い香りの椎茸出汁のスープができた。飲んでみると、出汁のホッとする優しい味わいに気持ちがじわりと癒された。全身の筋肉がほどけていく感覚が広がる。

「お酒を加えても美味しいですよ」と、教えてもらい、日本酒を少し足してみると、その出汁割が旨かった。身体がポカポカ温まり、軽く酔いが回り、ぬるめの温泉に浸かったような多幸感に包まれる。

採取した原木椎茸
採取した原木椎茸

100%植物由来であるのも注目すべき点だ。たまに筆者の店に来てくれる近所のカレー店スタッフ(敬虔なイスラム教徒である)やベジタリアンの人たちも安心して飲めると思った。

「海外への輸出も始まってるんですよ」と男性スタッフは添えた。

スティック10本で1パック。パッケージを含めてちょうど100グラム。10パック1キログラム、100パック10キログラム。賞味期限も製造より2年と長く、輸送に向いている。これなら小売や飲食店でも使い勝手が良い。

「すごいですね!」と筆者が言うと、「うちの社長が面白いんです!」と、返ってきた。

使い切りのスティックタイプで、宗教なども含めた「フードダイバーシティ(食の多様性)」に配慮した商品。椎茸祭を立ち上げた竹村賢人さんは、とてもユニークな経歴の人だった。