イスラエルでは成人男性の62%、成人女性の55%が肥満といわれている。日本の肥満率は成人男性が33%、成人女性が22.3%であるため、イスラエル人の肥満率は日本のおよそ倍の数値となる。前回の記事でイスラエル人の食への意識の高さに触れたため、この肥満の数値には矛盾を感じてしまうだろう。彼らの食にはまだまだ改善の余地がありそうだ。今回は肥満の大きな原因となる「甘味」に対し、イノベーティブに向き合うイスラエルのスタートアップ企業を現地からご紹介する。

ベジタリアン比率は世界トップレベルだが人口の半数が肥満?

イスラエルの大手メディアJERUSALEM POSTによると、2019年時点で国内の男性62%、女性55%が肥満と診断された。2021年現在はコロナによる自粛の影響でその数値はさらに伸びたと予測される。前回筆者が書いた記事「ベジタリアン大国イスラエル 食の選択と最新フードテックで未来を変える」にてイスラエルのベジタリアン人口比率は世界トップレベルであると述べたが、それでもベジタリアンは全人口の13%程度なのである。肥満の数値にも表れているようにイスラエル人の大多数は単に美味しい食事を求める人々だ。そのため「イスラエル人はヘルシー思考」という安直な一般論化はできないことがわかる。食に関してだけではなく、イスラエル関連の情報は一部分が賞賛されたことにより、「イスラエル人はエリートだ」とか「ユダヤ人はお金持ちだ」など安易に一般化されてしまうことが多いため、その点には注意したい。実際のデータと照らし合わせると今回のように実態が見えてくる。

エルサレムのカフェで食べたチョコレートワッフル。美味しいが日常的に食べていたら肥満一直線だ(写真提供:Hatsuki Matsui)
エルサレムのカフェで食べたチョコレートワッフル。美味しいが日常的に食べていたら肥満一直線だ(写真提供:Hatsuki Matsui)

イスラエルにベジタリアンが比較的多いことは事実だが、この肥満率の数値は深刻だ。国の社会課題として対策が求められている。今回はこの状況を打破すべく、肥満の大きな原因となる「甘味」に向き合うイスラエルのスタートアップ企業をご紹介する。

Amai Proteins社が開発する画期的な“Amai(甘い)”タンパク質

Amai Proteins CEOのIlan Samish氏(写真提供:Amai Proteins)
Amai Proteins CEOのIlan Samish氏(写真提供:Amai Proteins)

イスラエルのスタートアップ企業Amai Proteinsは、その名の通り“甘い”タンパク質を開発するスタートアップ企業だ。彼らはマレーシア、中国、西アフリカなどの熱帯植物が生成する貴重な甘いタンパク質を独自の遺伝子操作技術で生成し、未来の甘味代替品として提案している。タンパク質学者でありAmai ProteinsのCEOを務めるIlan Samish氏は「砂糖を大量に摂取し続けることは著しく健康を害し、ゆっくりと自殺しているようなものだ」と警鐘を鳴らす。

同社の製品は既存の甘味代替品とは異なり、タンパク質そのものである点がなによりの特徴だ。彼らが開発を進める甘いタンパク質を使用すれば、タンパク質を摂取しながら、既存の製品の味を変えずに砂糖を30~80%削減できるという。本来タンパク質由来の甘味料は貴重で高価だが、彼らの技術により低価格で大量生産できる製法で提供可能だ。各国で使用するためには認証を得ることが必要だが、それが叶えば彼らの技術は世界中の人々の健康的な未来を支えていくだろう。

Amai Proteinsの甘いタンパク質を使用したテスター。特にクランベリージュースは酸味を感じず、甘くて美味しかった(写真提供:Hatsuki Matsui)
Amai Proteinsの甘いタンパク質を使用したテスター。特にクランベリージュースは酸味を感じず、甘くて美味しかった(写真提供:Hatsuki Matsui)
Ilan氏は取材用のプレゼンテーション資料を日本語で作ってきてくれた(写真提供:Hatsuki Matsui)
Ilan氏は取材用のプレゼンテーション資料を日本語で作ってきてくれた(写真提供:Hatsuki Matsui)

Amai Proteins CEOのIlan Samish氏から日本の方々へのメッセージを預かった。

「日本は食品技術革新のリーダーです。社名にAmai(甘い)という日本語を入れたのは日本の技術への尊敬を表すためです。トレハロース、ステビア、ソーマチンなど甘味料の活用において、日本はR&Dイノベーションのリーダーであり、社会に役立つ新しい技術を早期に採用しています。たとえば、現在市場に出ている唯一の甘味タンパク質であるソーマチンは、日本で最も普及しています。Amai Proteinsは、日本を最大の市場とみなし、世界とつながるための最も需要なパートナーおよびハブと見なしています。そのため私たちはすでに日本の多くの企業との交流を試みており、現在もパートナーを探しています」