突如発生し世界に広がった新型コロナウイルスの影響で「非接触型サービス」に注目が集まっている。上海に現れた2つの特徴的な非接触型サービスは、技術先行ではなく、利用者のニーズをとらえることで人々の生活に定着している。現地からレポートする。

2018年前後に上海市内の「無人コンビニ」が日本で話題になった。当時の筆者(上海在住)は、見たことがないものについて日本から問い合わせがくることに困惑していた。無人コンビニのことは、現地の人に聞いても誰も知らなかった。唯一「見た」という情報は、上海市街地から直線距離で約60km離れている金山区にて、「見かけたけど営業している雰囲気ではなかった」というものだけだった。当時話題になった無人コンビニやロボットレストランは、その後も普段の生活圏に入ってくることはなかった(そもそも「実はなかった」説もあるほど)。定着しなかった理由は、無人である理由が明確でなかったこと、そして技術だけ先行して消費者のニーズにあわせて作られたものではなかったからだと感じている。

あれから約2年、突如発生し世界に広がった新型コロナウイルスの影響で「非接触型サービス」に注目が集まっているが、新たに登場して上海の人々の生活に受け入れられたサービスはしっかりと利用者のニーズをとらえているものに変わっている。

最新ロボットレストランは技術よりも楽しさを重視

「Caretta Land」の店内。客層は8割が子供連れのファミリー層(画像提供:TNC)

2020年3月にオープンして話題となり、5月に動画アプリの「TikTok(ティックトック」のグルメ部門(上海市内)で閲覧数トップとなったレストラン「Caretta Land(栖蠵/チーシー)」は、アカウミガメのロボットが料理を運ぶユニークなレストランだ。テーブル上のタブレットからオーダーし、支払いを済ませると、海底に見立てたフロアの下をお腹に卵(料理が入ったカプセル)を抱えたアカウミガメが泳いでくる。その後、各テーブルの横にある岩の下に産卵すると、岩の上にあるホタテ貝が開き中から料理が入った卵が出てきて、それを受け取るというシステムだ。

フロア下を移動するアカウミガメロボット。ロボットであることを思わせないデザイン(画像提供:TNC)

取材した6月時点も行列が続いており、1~2時間待ちの日もあるという。ただ、人気の理由は間違いなく「ロボットだから」ではない。ポイントになったのは、調理場からテーブルまで料理が空気に触れることがない非接触サービスをいち早く取り入れたこと、アカウミガメと海辺という癒しを感じるテーマ(ロボットらしさがなく、本物のウミガメのようなリアルなデザイン)、ヘルシーな低温調理メニューのみという料理へのこだわり、の3つの要因にある。

産卵を終えたアカウミガメが予想外のスピードでそそくさと調理場へ戻る様子は思わず笑ってしまうし、低温調理のためにオーダーから運ばれてくるまで20分以上かかり、その間プロジェクションマッピングの海の風景を眺めたり、家族や友人と会話をしたりとスローな時間を楽しめることも魅力だ。じっとカメが泳いでくるのを待つことやホタテが開いて卵が出てくる不思議なシステムなど、子供がときめく要素も詰め込まれている。

また、TikTokや「快手(クァイショウ)」などショートビデオ系SNSが全盛の中国では、「映える動画」が撮れることも人気レストランの重要な要素。自由に動画撮影も楽しめ、子供と一緒に盛り上がれることも人気の理由のようだ。

店舗側も、新しい技術のアピールではなく面白さと美味しさを提供したいと話す。従来の無人店舗やロボットレストランの最大のメリットとされていた「スピーディーで便利」といった要素は、外食分野においてじつはそれほど人々に求めてられていなかったのかもしれない。