フードデリバリー専用の宅配ボックスが登場

3月の時点で上海市内1000カ所に設置された「自助外買柜(ズージューワイマイグイ)」は、フードデリバリー専用の宅配ボックスだ。上海で利用されている二大デリバリーアプリ「餓了嚒(ウーラマ)」と「美団(メイトゥアン)」が設置したもので、主にオフィスビルのロビーや駐車場付近、医療機関の職員用出入り口などに設置されている。

2月下旬に自粛期間が終わり通常の出社が始まった上海では、一時期オフィスビル側が非接触を保つためにデリバリーやバイク便の配達員を館内に入れない措置をとり、配達物は臨時で設置された屋外テントにまとめて置かれていた。そのため、料理を頼んだ場合は冷めてしまったり、逆に日が当たって傷んでしまったり、さらには他の人のものと取り違えるなどのトラブルが多発した。「自助外買柜」はそれらのトラブルを解消する仕組みとして、設置が始まると瞬く間に定着。普段ランチをデリバリーで頼んでいたビジネスマンや、外部との接触を特に気にする医療関係者の間ですっかり浸透している。

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上海市内のオフィスビル地下駐車場前に設置された「自助外買柜」(画像提供:TNC)

利用法もとても簡単だ。注文した料理を配達員がボックスに届けると、利用者のスマホにQRコードの付いた通知が届く。それを持って「自助外買柜」へ行き、スキャナーにQRコードをかざすと自分の料理が入っているボックスが開く仕組みだ。画期的な点としては各ボックスに保温と保冷機能が付いており、温かい料理であれば保温、サラダやアイスコーヒーなど冷やしておきたいものは保冷ができる(注文時に配達員に指示できる)。

白のランプのボックスは「保温」、青は「保冷」と一目でわかる仕組み(画像提供:TNC)

5月の報道によると、一カ所の「自助外買柜」の日平均オーダー数は200回だという。上海ではランチや残業時の夕食だけでなく、仕事中の飲み物もデリバリーで頼むのが主流。筆者が撮影に行った日も、ビジネスマンたちがボックスからミルクティーやコーヒーを取り出す様子が何度も見られた。また、最近では顔認証でボックスが開くタイプも出てきているという。スマホ不要で、手ぶらで取りに行けると好評だという。

6月以降、幸い上海市内では第二波の予兆や新たなクラスターが出ることもなく、新規感染者も水際(空港)での1~2人に抑えられており、日常が戻り始めている。だが、「自助外買柜」の利用率は低下していないという。利用者側は、食事をする時間がなくてもそのまま保温、保冷したまま保存できるため自分のタイミングで料理を取りに行ける。また、配達が混み合うランチ前などの時間帯をずらし、早めに注文して置いておける。配達員側も、届けたときに注文者を電話で呼び出し、取りに出てくるのを待つといった時間をカットできる。新型コロナウイルスの問題がなくても、元々存在していた利用者のニーズに応えられるサービスだったことが定着した理由だと思われる。

もともとキャッシュレスや非接触関連、デリバリー領域の各種サービスが社会に浸透していた中国では、今回の新型コロナウイルス危機を経て、今後さらに利用者の課題をとらえ、ニーズに合致した非接触型サービスの展開が進んでいくだろう。

この記事は、TNCが主宰する世界70ヵ国100地域に暮らす約600人の日本人女性ネットワーク「ライフスタイル・リサーチャー」からの情報をもとに制作しています。日本と海外の価値を結ぶさまざまな企画・マーケティング分野で活躍しています。