ドイツで2020年代のメガトレンドとされる「ネオ・エコロジー」の考え方は、経済・環境・消費が相反しないビジネスモデルで、誰もが手軽にサステナブルな生活を送れるような商品・サービスモデルを指す。サステナビリティが商品やサービスの中心に置かれており、悲観主義的ではなく「世界は自分たちの行動を通して良くなるのだ」という楽観主義に基づいている。「環境のためには我慢をしなければいけない」という禁欲ではなく、効率化とプラグマティズム(実用主義)、技術革新によってQOLを維持し、楽しみながら環境や社会に貢献する考え方だ。また、パッケージなど一部においてのみ環境対策を行うのではなく、ホリスティック(全体的)にサステナビリティをめざす動きであることが特徴だ。新型コロナウイルスの拡大によってあらためて環境問題やSDGsへの関心が高まる中、環境先進国ドイツではどのような「ネオ・エコロジカル」な取り組みが進んでいるのか。現地在住リサーチャーがレポートする。

環境意識が高いドイツだが、ここ数年、中食産業は増加の一途をたどっている。新型コロナウイルスによる外出制限期間を経て、ますますテイクアウトやデリバリーの需要は拡大しており、外食産業の生き残りのためにも重要な要素となっている。

そんな中、環境保護団体DUH(ドイツ環境支援)が2020年6月4日に出した「コロナ危機がゴミ危機になってはならない」という声明は、大手メディアで次々と取り上げられた。これによって非接触型生活によるゴミの増加問題、特に外食産業におけるテイクアウト食器のゴミ問題がクローズアップされることとなった。

ドイツの環境保護団体であるNABUの報告書によれば、2017年時点で既に使い捨てホットドリンクカップだけで年間2万8000トン、使い捨て食品容器は15万5000トンものゴミが発生していた。テイクアウト用食器の廃棄量は新型コロナウイルスによる外出制限の影響でさらに増加を見せ、リサイクルマークの「Der grüne Punkt(グリューネ・プンクト)」の発表によると、2020年3月から6月初旬までに包装ゴミの量は約10%も増加したという。

デポジット方式のリターナブルカップの導入が拡大中

近年問題になっていた使い捨て容器ゴミ問題にあらためて注目が集まる中、ドイツ各所ではスタートアップ企業発の「ネオ・エコロジー」の概念に則ったリターナブル容器の取り組みが活発になっている。

2016年以降、ドイツでは通常のテイクアウト用のホットドリンクカップに対して、デポジット制のリターナブルカップのシステムを提供するRECUPJust Swap It.などのスタートアップ企業が続々と生まれている。これまでゴミとなっていたテイクアウト用のコーヒーカップのリユースを推進する目的で始めたサービスを提供している。

RECUPの例でいえば、消費者はRECUPの提携店舗に行きコーヒーの代金に加えて専用カップのデポジットとして1ユーロ支払ってテイクアウトする。飲み終わった使用済みカップはRECUPの提携店舗に持参して返却すれば(購入店舗と異なってもよい)、1ユーロが戻ってくる仕組みだ。このようなデポジット方式のリターナブルカップでゴミを出さない循環を生み出している。業界最大手のRECUPは現在、国内3500店舗と提携を結び、2020年1月にはガソリンスタンドの「Shell」との提携も実現させた。

RECUPのリターナブルカップ(写真提供:RECUP)

こうした仕組みの導入はカップだけでなく食品容器にも広がっている。スイス発のスタートアップであるreCIRCLEは、10ユーロのデポジット方式のリターナブル食品容器システムで、スイス本国では1300の店舗、ドイツでも120の店舗と提携。ベルリン発のパッケージフリー・デリバリーサービスHoly Bowlyと提携を結んだことも話題となった。先述のRECUPも2019年のテスト期間を経て、2020年1月からミュンヘン、ケルン、ベルリンの3都市でデポジット5ユーロの食品ボウルのリユースシステム「REBOWL」の提供を開始している。RECUPの技術を元に500回の再利用に耐える食品容器を開発し、提供範囲を拡大している。

RECUPによる新サービスREBOWLのテイクアウト容器(写真提供:REBOWL)

QRコードを活用したデポジットなしのリターナブル容器サービスも続々

これまで食品のテイクアウト容器は、自分で容器を洗浄して持参する手間や衛生面の不安などから、リユースカップと比べるとあまり定着してこなかった。しかし、ゼロ・ウェイストやサステナビリティ、循環型社会という大きな潮流に新型コロナウイルスの影響も加わったことで、「こんなに簡単にゴミ問題に取り組めるなら試してみよう」と消費者が感じられる仕組みを整えたことで、2020年に入って存在感を高めてきている。

2020年6月にサービスを開始したミュンヘン発のスタートアップRelevoは、QRコードとアプリを活用したデポジットなしの食品容器リユースシステムを展開。専用アプリをダウンロードし、提携飲食店で容器に付いているQRコードをスキャンして確認画面を見せるとレンタル手続きが完了。14日以内に提携店舗に持参しQRコードを読み込んで返却するだけでよく、デポジット方式の面倒さを解消した。返却までにかかった日数に応じてポイントが加算され、自分が環境に与えたインパクトが「見える化」されるため、なるべく早く返却しようという意欲も高まる。

また、AS樹脂を原料にドイツ国内で製造される容器は化学物質BPAフリーで健康への配慮もされており、電子レンジや食洗器にも対応。1000回もの再利用にも耐え、使えなくなった容器は100%リサイクルできる。環境配慮をサービスの中心に据えつつも、手軽におしゃれなリターナブル容器を使用できる点が受けて、ミュンヘンのトレンドエリアであるグロッケンバッハ地区を中心に、ミレニアル世代に人気のカフェやレストランなど既に市内の50店舗以上との提携が実現している。

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Relevoのリユース容器。シンプルだが汎用性の高いデザイン(写真提供:Relevo)

その他、ケルン大学に端を発するスタートアップであるVytalも、アプリを活用しQRコードでレンタル手続きをするリユースシステムを展開している。14日以内に返却しない場合のみ10ユーロの代金が発生するが、購入ではなく「返却期限のないプレミアムサービスへの移行料」というコミュニケーションを取りつつ、返却を促している点がユニークだ。デポジット方式を取らないことで、返却率の増加および返却までにかかる日数の減少が見られたという。再利用回数10回で環境中立が達成でき、容器は200回もの洗浄に耐える。現在ケルンを中心にドイツ国内157店舗が提携を結んでいる。

また、ハンブルクではベルリン発のスタートアップであるTiffin Loopがステンレス製食器のリユースシステムの試験運用を始めており、プラスチックフリー生活を目指す人達の間で全国展開が望まれている。

このような潮流の背景には、2019年5月にEU理事会にて採択された使い捨てプラスチック製品の流通を2021年までに禁止する法案や、ミュンヘン市が2019年にゼロ・ウェイスト・シティ加盟を目指す意向を表明したことなどがある。

Relevoに関しては、連邦経済エネルギー省のINVESTプログラム(エンジェル投資家に投資額の20%の免税措置を取る起業支援プログラム)の助成も受けている。リターナブル容器をめぐってはEUや国・市レベルでの戦略も絡み合っており、これから市場がどのように発展していくか、その動向にますます注目が集まっている。