世界有数の銘茶の産地として知られる台湾では、来客をお茶でもてなす「奉茶」の風習が古くから根付いている。北は亜熱帯、南は熱帯地域に属しているため暑い日が長く続く台湾では、水分補給は非常に重要視されている。急須と茶杯を置き、暑いなか道を歩く人々に無償で飲んでもらうという風習もこの奉茶文化の一つである。そんな中、政府が2030年までにレジ袋やストロー、コップなどの使い捨てプラスチック製品を全面禁止にする方針を打ち出した台湾では、この独自の文化である奉茶を活用して環境保護に取り組むアプリが登場した。その詳細を現地在住リサーチャーがレポートする。

国をあげて環境問題に取り組む台湾、加速する脱プラスチックの動き

近代化の進んだ今日、台湾の街には24時間営業のコンビニエンスストアが乱立し、いつでもペットボトル入りの飲料が手に入るようになった。しかし、環境に関わる業務全般を担当する環保署によると、台湾では1年に約45億本のペットボトルが消費されているという。プラスチック製品を生産するために大量の原油燃料や水などの資源を使用していることで、空気汚染、水質汚染、温暖化に影響を及ぼしているとされている。

総面積が九州とほぼ同じ3万6000キロ平方メートルという狭さ故に資源の少ない台湾では、ペットボトルの使用による資源の使用や燃焼によって生み出される空気汚染の問題が深刻化している。こんため人々の環境問題への意識も非常に高い。

プラスチック製品の削減を目標に掲げた台湾の環境保護制度は日本よりも進んでおり、2002年には既に無料レジ袋の削減に向けた政策が進められている。また、2013年には台北と新北市のスーパーでゴミ袋にも使える両用タイプのレジ袋の提供が開始されている。日本人の視点で考えるとスーパーで食料品を購入した後にゴミ袋に入れて持ち帰るという感覚は受け入れがたいと思うが、それをすんなりと受け入れている台湾人の環境意識への高さが伺える政策だ。

この画期的な策が功をなし、大手スーパーの調査によると8割から9割の客がエコバック、あるいはレジ袋を自宅から持参するようになり、レジ袋の提供数を3分の1に減らすことに成功した。

更に2019年には飲食店での店内飲食によるストローの提供を禁止。台湾といえばタピオカミルクティーやチーズティーなど日本でも流行した飲み物が有名だが、現在は蓋の部分に直接口を当てて飲むタイプや、セロファンで蓋をし、飲む時にそのセロファンをめくってそのまま紙コップに口をつけて飲むタイプが主流となっており、人々の生活に既に定着し始めている。

しかし、台湾政府が先行的な政策を打ち出している一方で、実際のプラスチック使用量にはさほど目立った変化もなく、脱プラスチックへの課題はまだまだ山積みのようだ。

街中の水飲み場を探せるゲーム感覚の地図アプリが登場

そこで今注目されているのが、2020年3月に民間団体「CircuPlus(循環經濟創業生態系社群)」が開発した「奉茶APP」というスマートフォンアプリだ。

アプリを開くと地図上に奉茶スポットが表示され(左)、各スポットの評価を見ることができる(右)(写真提供:TNCライフスタイル・リサーチャー)
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アプリを開くと地図上に奉茶スポットが表示され(左)、各スポットの評価を見ることができる(右)(写真提供:TNCライフスタイル・リサーチャー)

先に述べたように、台湾で年間消費されるペットボトルの数量は約45億本。そのうちの10億本がミネラルウォーターなどの飲料水のボトルである。レジ袋、ストローの使用量削減でもまだ改善されない台湾のプラスチック使用量に歯止めをかけようという目的で制作されたこのアプリは、台湾に根付く奉茶文化とエコの精神を融合した非常にユニークなアプリとして注目を浴びている。

奉茶APPでは、スマートフォンの位置情報機能を活用することで、自分のいる場所から最も近い「奉茶スポット」、即ち無料で水が提供される飲料水サーバーの場所を調べることができる(奉茶という名前だが現在無料で提供されている飲み物の殆どは水である)。スポットをクリックするとその場所の名称や特徴、電話番号、提供される水が「冷水・常温・お湯」であるかを見ることができ、そこを訪れたユーザーはその場所が清潔であったか等、五つ星形式で口コミを書くことができる。

寺院の奉茶スポットの様子(左)。訪れた奉茶スポットの履歴は個人記録として残せる(右)(写真提供:TNCライフスタイル・リサーチャー)
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寺院の奉茶スポットの様子(左)。訪れた奉茶スポットの履歴は個人記録として残せる(右)(写真提供:TNCライフスタイル・リサーチャー)