二酸化炭素の削減量を見える化。上部には「台湾の飲料水用ペットボトルの量を年間1%削減する」という目標が記載されている(写真提供:TNCライフスタイル・リサーチャー)
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二酸化炭素の削減量を見える化。上部には「台湾の飲料水用ペットボトルの量を年間1%削減する」という目標が記載されている(写真提供:TNCライフスタイル・リサーチャー)

奉茶スポットを設置してお茶を提供している寺院もあり、中には「平安茶」と名付けられたナツメやクコの実を煎じた甘めのお茶を振る舞う寺も登場。ご利益があると言われていることもあり、休日には寺院のお茶を飲むために行列ができることもある。

奉茶スポットで水、またはお茶を使用したユーザーは、「打卡喝水(スポットに立寄り水を飲む)」をクリックすることで自らの飲水記録を増やすことができる。尚、奉茶アプリで各地の水を飲むことによってポイントを貯め、提携の店やホテル、旅館で使用できる割引サービスを得ることもできる。

またメインページには年別、月別のアプリユーザー全体数が記されており、自分がペットボトルを買わずに飲料水スタンドを使用したことでどのくらいの二酸化炭素を削減できたかを標示させる機能もある。これにより、アプリの利用者は環境保護への意識を更に高めることができる。

企業の好感度アップや節約にも貢献

また企業は無料の飲み水スポットを提供することで集客につなげることができ、更に“環境に優しい店”としてのイメージアップや宣伝効果も期待できる。

現在、大型スーパーの「家楽福(カルフール)」は台湾にある関連店舗を含めた全店舗137カ所、大手通信会社の「遠傳FET(ユェンチュァンFET)」は台湾の全51店舗に無料の飲料水スタンドを設置し、奉茶アプリと提携している。提携店舗には水色の「奉茶マークシール」を配布しており、店頭に貼ってもらうことで新規ユーザーの獲得を増やしている。また、病院や図書館にも協力を依頼して奉茶スポットの規模を次々と拡大している。2020年内に1万2000カ所の飲料水スタンドの設置を目標としている。

街中の奉茶スポット(写真提供:TNCライフスタイル・リサーチャー)
街中の奉茶スポット(写真提供:TNCライフスタイル・リサーチャー)

もともと台湾人、特に女性の間ではステンレスのボトルにお茶や生薬を煮出した漢方ドリンクを入れて持ち歩く人が多く、日用品店には茶こしが内蔵された機能性に優れたマグボトルが多く販売されている。また、昨今の不景気から節約志向が上昇傾向にあり、丈夫なプラスチックのボトルに水を入れて持ち歩く台湾人が非常に増えている。そのため、飲み終わって空になったボトルにおかわりを継ぎ足すためにこのアプリを利用するユーザーも増えている。長年続く不景気にコロナ禍での追い打ちが重なって財布の紐を締める人々が増える中、お金をかけずに喉を潤し、環境にも貢献できるという点が消費者からの好評の理由となっている。

伝統的な奉茶文化とエコの概念を融合させたこのアプリは、環境保護と消費者の節約志向をうまく結びつけることに成功し、利用者が増えている。また、9月に3回目が開催された、社会課題解決のアイデアをプレゼンする総統主催の大会「2020年總統盃黑客松(総統杯ハッカソン)」で、奉茶APP は優れたグループに贈られる「卓越團隊賞」を300以上の団体から受賞している。

国を挙げてプラスチック削減に取り組み、国民の環境への意識も高い台湾。奉茶APPは、台湾に根付く風習からアイデアを得たことで消費者の生活に自然と馴染んでおり、楽しんで利用してもらうことに成功している。奉茶APPがこれからますます浸透すれば、台湾の脱プラスチックにも一役買うことになるかもしれない。環境問題への取り組みがもはや必須となり、多くの人の環境意識が高まっている昨今、奉茶APPのように、生活の一部として環境保護に貢献できるサービス発想が求められるだろう。

この記事は、TNCが主宰する世界70ヵ国100地域に暮らす約600人の日本人女性ネットワーク「ライフスタイル・リサーチャー」からの情報をもとに制作しています。日本と海外の価値を結ぶさまざまな企画・マーケティング分野で活躍しています。