ソフトモビリティと緑化により、シャンゼリゼ通りも新たな姿へ

都市開発において、パリ市民が環境への配慮を重要視していることを証明するのが、シャンゼリゼ通り一帯をアースコンシャスに変えるプロジェクト案だ。シャンゼリゼ委員会(シャンゼリゼ通りの商店組合)が建築家のPhilippe Chiambaretta氏率いる「PCA-STREAM」に依頼したもので、「Réenchanter les Champs-Elysées(シャンゼリゼ通りを再び夢ある場所に!)」というプロジェクト名を掲げ、2030年の新たなシャンゼリゼ像を研究したもの。プロジェクト採用の如何はパリ市の決定を待つ状態であるものの、シャンゼリゼ委員会の計画は市に歓迎され、2020年には「Pavillon de l'Arsenal(パリ都市開発研究センター)」にて大々的な展示を行った。この展示で明らかにされたシャンゼリゼの未来像も、やはりソフトモビリティを組み込み、自然を取り入れている。ヒートアイランド現象の緩和や、雨水を蓄える都市づくりのために、都市の緑化は不可欠なのである。

ソフトモビリティを取り入れ、緑地化されたシャンゼリゼ大通りと凱旋門のロータリー(写真提供:PCA-STREAM)
ソフトモビリティを取り入れ、緑地化されたシャンゼリゼ大通りと凱旋門のロータリー(写真提供:PCA-STREAM)

このプロジェクト案が立ち上がった背景には、昨今のシャンゼリゼの不人気がある。IFOP(Institut francais d'opinion publique=フランス世論研究所)が2019年に行った調査によると、シャンゼリゼを訪れる人々の85%が外国人観光客であり、パリ市民の利用者はシャンゼリゼで働いている人や15分以内の移動をする単なる通行人を除くとわずか5%。パリジャン、パリジェンヌにとって、シャンゼリゼのイメージは「観光化されすぎている」「車の騒音がうるさすぎる」「のんびりと歩きたい環境ではない」「グローバルブランドの店しかない」など、非常にネガティブであることが分かった。この結果に危機感を感じたシャンゼリゼ委員会が、これからも「世界一美しい大通り」の愛称にふさわしい存在であるべく対策を講じたことがこのプロジェクトの発端となっている。

ソフトモビリティを取り入れ、緑地化されたシャンゼリゼ通り。石畳の道路は騒音を抑える舗装に(写真提供:PCA-STREAM)
ソフトモビリティを取り入れ、緑地化されたシャンゼリゼ通り。石畳の道路は騒音を抑える舗装に(写真提供:PCA-STREAM)

Pavillon de l'Arsenalで展示されたプロジェクト案を見ると、現状は石畳で片側4車線(路肩も入れると5車線)の大通りは、騒音を抑える舗装に変わり、自転車レーンが広く取られている。車道と歩道との境目は曖昧になっており、歩道はもはや公園と化している。また、凱旋門のロータリーとコンコルド広場のロータリーまでの2kmは圧倒的な量の緑で覆われており、子どもが車を気にせず存分に走り回ることができるような空間になっている。

市民が望むパリの姿の実現を目指す

パリ市民の反応を知るために、パリ市はPavillon de l'Arsenalの展示会場でプラットフォーム「Make.org」を活用し、市民の声を集めた。2020年2月から6月までの4カ月間で約10万人もの声が寄せられたことからから、不人気と言えども、シャンゼリゼ通りがパリ市民にとって重要な存在であることが伺える。

寄せられた意見を研究した結果、パリ市民はより自然が多く、歩行者を優先し、ソフトモビリティを取り入れた公共空間を望んでいることが明らかとなった。シャンゼリゼ通りを100%歩行者天国に変えるアイデアに対しては意見が分かれたが、ローカルの店を増やし、歴史的建造物を守りつつ近代化を進め、スリ対策を強化し、リラックスできる場所へと変化することも市民の願いだ。この研究結果を踏まえたシャンゼリゼ通り再開発プランの発表は、2021年内に行われる予定である。

パリ協定の目標に向かって行政を進めるパリ市と、アースコンシャスで住みやすい未来都市を望むパリ市民。エッフェル塔とシャンゼリゼ通りのプロジェクトを見ても、市と市民の利害が一致していることがよく分かる。日本はどうだろうか。2011年、日本政府は「環境未来都市」構想を掲げた。政治が国民のものであり、国民が快適な環境の中で暮らすことことを望んでいるのなら、二つの車輪が共に作動し、前進することは不可能でないはずだ。パリ市にその実例を見るように。

この記事は、TNCが主宰する世界70ヵ国100地域に暮らす約600人の日本人女性ネットワーク「ライフスタイル・リサーチャー」からの情報をもとに制作しています。日本と海外の価値を結ぶさまざまな企画・マーケティング分野で活躍しています。