世界的にファッション産業の変革が求められるなか、イギリスではファストファッションから再生可能なファッションへと新たな潮流が生まれている。今回は、英国アパレル業界で注目を浴びているバイオマテリアル、財布と環境にも優しいバッグと洋服のレンタルサービス、若年層が夢中のデジタルファッションという3つのトピックを現地在住リサーチャーがレポートする。

使い捨てに歯止めをかけるバイオマテリアルの開発

ファストファッションから再生可能なファッションへ。イギリスのアパレル業界では、今、バイオマテリアル開発が目覚ましい。

Ananas Anamは、パイナップルの葉から抽出される農業副産物から、その名も「Piñatex」というファイバー素材を創り出して話題となったイノベーター企業だ。Ananas Anamを立ち上げた女性起業家Carmen Hijosaは、皮商品のデザインおよび販売に15年を費やしたが、フィリピンで化学的に大量生産されるなめし皮加工の現場を見て愕然とし、「レザーやPVC(ポリ塩化ビニル)に代わるサステナブルなマテリアルはないのか」という気持ちを強く抱くようになったという。

その後一念発起し、成人学生として王立芸術院でイギリスの博士号に当たるPhDを取得後、同院のインキュベーター制度を活用し、Piñatexの開発に着手した。ロンドンの名博物館サマーセットハウス内にあるクリエイターやイノベーター向けワークスペースを拠点に、Hijosaは現在も69歳という年齢をものともせず、生産農家の発展に貢献しながら、H&MやHugo Boss、Paul Smithなど、大手アパレル企業に同素材を提供するまでに飛躍を遂げている。

次に紹介したいのは、“成長する素材・ナノセルロース”から作られたバイオマテリアル素材のスニーカーを発表したModern Synthesisだ。科学者とデザイナー、研究者の異業種混合チームによって、「微生物織り」と呼ばれるバクテリアの横糸を縦糸の周りに成長させる合成生物学の新技術を生み出し、アパレル業界の使い捨て文化に歯止めをかける合成繊維の担い手として脚光を浴びている。公式サイトによると、この素材の強度は最大で鋼鉄の8倍にもなり、非常に軽量かつ堆肥化可能だ。このナノセルロース繊維をスニーカーのアッパーに真っ白い繭のように纏っていく様子は、まるで近未来映画のようだ。

Modern Synthesisのナノセルロース(撮影:Vita Larvo)
Modern Synthesisのナノセルロース(撮影:Vita Larvo)

優秀な女性デザイナーであり同社代表取締役であるJen Keaneは、「未来は、成長(develop)させるもので、製造(manufacture)するものではない。私たちが目指すのは、科学の力でアパレル素材のあり方を進化させ、サステナブルなクリエーションを可能にすること」という理念を語っている。

環境に優しい洋服やバッグのレンタルサービス

日本でも増えている洋服やバッグのレンタルサービスだが、イギリスでも認知度が高まっている。 Rotaroは、トレンド分析の専門家Georgie HyattとCharlie Knowlesによって設立されたサービスだ。例えば、プラダなど人気のラグジュアリーブランドのハンドバッグが4日間15ポンド、結婚式参列者用のワンピースも15ポンドと手頃な価格でレンタル可能で、翌日配達に対応。クリーニング費、返送料も無料。買取オプションもあり、なんと定価の70%割引というのも魅力だ。

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また、同社では一回のレンタルごとに2本の木を植樹するカーボンオフセットシステムを採用。必要な商品を購入せずにレンタルする仕組みによって、無駄な購入や廃棄処分を減らすことができるとしている。節約かつ環境への貢献につながるという強みで、今後ますます需要が高まりそうなサービスだろう。