「新しくできたホテルには、特別なゲストがいます!」――そんな新聞の見出しに興味を持って読み進めていくと、書かれていたのは「Wormen hotel(ワームホテル)」という名前。ミミズがゲストのホテルとはどういうことだろうか。

ワームホテルとは、サーキュラーエコノミー戦略の一環としてゴミの廃棄削減のための住民によるアイデアとして、アムステルダムで生まれたコミュニティコンポストのことである。生ごみや落ち葉などを微生物の働きを活用して発酵・分解させ堆肥に変えるコンポスト。日本では昔から伝承されてきた知恵であるが、オランダでもゴミ削減、野菜や果物の廃棄物を貴重な堆肥に加工するアイデアとして注目されている。ミミズが住むコンポスターを「ホテル」と名付け、中に住むミミズに餌(廃棄物)と快適な住環境を与えることが、地域住民で構成されるワームホテルオーナーの役割だ。ゴミの分別・資源の循環と共に地域住民のつながりを深めるワームホテルは、アムステルダムから順次オランダ各地で広がっており、人々の関心の高さが伺える。現地在住リサーチャーがレポートする。

直面するゴミの増加と処理問題

オランダ政府の中央統計局であるCBSの調べによると自治体の資料に基づく2020年の住民一人当たりのゴミ回収量は年間521kgで、前年に比べて6.8%増加しており1997年以来の増加率である。特にGFT(Groente/野菜、fruit/果物、tuinafval/落ち葉などの庭のゴミ)の増加が著しい。コロナの影響で在宅時間が長くなり、また飲食店が閉鎖されていたことにより自宅で調理・食事をする機会が増え、野菜や果物の皮や種などのゴミが増えた。あるいは時間に余裕ができたことによりガーデニングや家庭菜園を楽しむ人が増え、結果として草や葉、枝などの庭のゴミが増えたことに大きな要因があるという。

各自治体で回収されたGFTはコンポストに、あるいは発酵させてバイオガスを生成している。このゴミ(及び処理に要する費用)を削減するための対策の一つとして個人へのコンポストの推奨や、コンポスター(堆肥箱)販売を行っている自治体もある。

コミュニティで運営するコンポスト「ワームホテル」

コンポストとは、毎日家庭から出る生ごみや落ち葉などを微生物の働きを活用して発酵・分解させ堆肥(土の栄養)に変えるものだ。日本では昔から伝承されてきた方法だが、オランダでもゴミ削減の面から、あるいは堆肥を利用して作った農作物は安心・安全に食べることができるなどの利点からコンポストを行う人が増えている。ただ簡単なようで個人でコンポストを行う場合、方法を間違えると悪臭が発生する、虫が湧くなどの問題が発生し近所とのトラブルにもなりかねない。そこで地域の住民が互いに協力し、野菜・果物・食品廃棄物をミミズによって堆肥化するコミュティコンポストの取り組みを行っているのがオランダの「Wormen hotel(ワームホテル)」である。

各所で運営されているワームホテル。環境に優しい素材で作られている(写真提供:Wormenhotel)
各所で運営されているワームホテル。環境に優しい素材で作られている(写真提供:Wormenhotel)

ホテルと名付けられたコミュニティコンポストであるワームホテルは、近所の人達が数軒集まってホテルのオーナーとなり、ホテルの住民であるミミズに生ごみや落ち葉などを与える。「廃棄物の分別を促進し、廃棄物を原材料として活用できる意識を高めること」を目的としている。2015年、アムステルダムにおいて家庭の野菜・果物廃棄物を堆肥化するための自治体・住民・民間団体からのアイデアで始まった取り組みだ。

2015年、オランダで自治体許可により設置された世界初のワームホテル(写真提供:Wormenhotel)
2015年、オランダで自治体許可により設置された世界初のワームホテル(写真提供:Wormenhotel)

同時に近所の子ども・大人達が有機物の循環サイクルがどのように機能するのか、そして自然ともっと触れ合うことがどれほど素晴らしいかを学ぶ機会にもなっている。自家製の栄養素が豊富に含まれた堆肥は、家庭菜園やガーデニングに活用される。この活動を通じて近所の人同士の交流が生まれ、地域の廃棄物も削減でき、良質な野菜や植物が育ち、そしてミミズにとっても快適な環境を生み出すことにつながっている。人、動植物、地域、相互に良い関係をもたらすのがワームホテルの仕組みなのだ。

ワーム(ミミズ)が果たす役割

(写真提供:Wormenhotel)
(写真提供:Wormenhotel)

ワームホテルの住民であるワーム(ミミズ)は野菜・果物・落ち葉などの廃棄物を迅速に処理し、堆肥化がすぐに始まるため臭いが放出されず、害虫を引き付けず、ワームが自ら生成するバクテリア・菌類・酵素の助けを借りて高品質の土壌改良剤となる堆肥ができる。ミミズは養殖業者からオンラインでも簡単に手に入れることができる。その他にも既にワームホテルを運営している団体からミミズを譲り受けたり、助け合いのプラットフォームnudgeを介してミミズを手に入れたりすることも可能。こうしたプラットフォームでもミミズを通じて人々の交流が生まれている。

ミミズの食べ物としては野菜や果物の皮、ティーバッグ、コーヒーかす、卵殻などの有機生ごみ、小さな破れた段ボール、紙製卵パックなどが主流。パンや肉・魚の食べかすはドブネズミの発生につながるので不可。具体的な内容はホテルに掲示されている。