18世紀よりヨーロッパからの移住が始まり、植民地としての歴史を持つオーストラリア。1901年、連邦政府が成立し「国家」が誕生。その後も移民を受け入れながら多民族・多文化国家を形成し発展を続けている。かつて有色人種の移民を禁止した白豪主義の時代を経て統合政策、そして多文化主義政策へと変遷を遂げたオーストラリアの日常は多様性に富み、各国の文化を尊重する姿勢は食生活、教育、週末のイベントにも反映されている。移民に対する無料英語レッスンや職業訓練、無料通訳といった移住後の公共のサポートも手厚い。オーストラリアの日常生活に浸透しているダイバーシティと政府による移民へのサポートについて、現地リサーチャーがレポートする。

多文化主義政策の背景

オーストラリアは18世紀にイギリスの流刑地となり、その後、19世紀半ばにニューサウスウェールズ州のバサーストという地域で発見された砂金をきっかけに、ゴールドラッシュが始まり世界各地から移民が押しかけた。その結果、様々な文化や技術・知識が流入、オーストラリアの発展に貢献した。戦後、移民政策が推進され、世界各国の出身者の移住が増加。1970年代に入ると、先住民や移民を含め全ての国民が平等であることを政府が公約した。

現在では「多文化主義」を掲げ、オーストラリアは多民族による独自な文化を形成する国家に成長。2018年のOECD(経済協力開発機構)の発表では、オーストラリアの総人口の28%が海外生まれ、親のどちらかが海外出身の移民2世の人口は46%に達したという。

日常生活に浸透する多様性

①スーパーマーケットでの各国の食材の販売、宗教上の食習慣に配慮も

オーストラリアの生活で日常的に利用する大手スーパーマーケットにも多文化主義は色濃く表れている。

オーストラリアのスーパーマーケット「Coles」のアジア食品のコーナー。日本食ブームの影響もありキユーピーマヨネーズやワサビは現地の人々にとっても一般的な調味料だ(筆者提供)
オーストラリアのスーパーマーケット「Coles」のアジア食品のコーナー。日本食ブームの影響もありキユーピーマヨネーズやワサビは現地の人々にとっても一般的な調味料だ(筆者提供)

店舗やエリアにより差はあるものの、都市部や移民が多く暮らす地域のスーパーマーケットのアジア、ヨーロッパ、中東のお菓子や食品、調味料のコーナーの品揃えは充実していると言えるだろう。日本の「キユーピーマヨネーズ」や「おーいお茶」といった食品も現地の人々にとって一般的な商品となっている印象だ。母国の食材を気軽に購入できる利便性の高さもオーストラリア移住の魅力の1つと感じている。

日本・韓国・マレーシア・タイなどのお菓子が並ぶアジアのお菓子コーナー(筆者提供)
日本・韓国・マレーシア・タイなどのお菓子が並ぶアジアのお菓子コーナー(筆者提供)

また、オーストラリアのスーパーマーケットではイスラム教の戒律に沿った食生活(ハラル)にも配慮がされている。イスラム教徒が食することができない食品として豚肉があげられるが、牛肉・鶏肉・羊肉など豚肉以外の肉もイスラム教の教えに則った調理器具・屠殺方法で処理された商品の購入が可能だ。

その他の食品にも「ハラル認証」されたことを証明する世界標準品質マークが記載されている商品が数多く取り揃えられている。イスラム教を信仰する人々にとって、一般的なスーパーマーケットで戒律に沿った食材を安心して手に入れられる環境である。

スーパーマーケットの精肉売り場。イスラム教のラマダン(断食明け)のお祝いとハラル製品の販売をアピールするメッセージ(筆者提供)
スーパーマーケットの精肉売り場。イスラム教のラマダン(断食明け)のお祝いとハラル製品の販売をアピールするメッセージ(筆者提供)

②点在する多国籍エリアと各国の行事を祝うイベント

オーストラリアの主要都市周辺には移民が多く暮らす多国籍エリアが点在している。各国のレストランや食材店・雑貨屋が集まり、異国情緒あふれる雰囲気を楽しむことができる。

筆者が暮らすシドニーも、チャイナタウンをはじめ、韓国人街・イタリア人街・ポルトガル人街・ベトナム人街等に簡単にアクセスができる環境である。食材の買い物や週末のお出かけスポットとして日常生活に馴染みの深い場所となっている。

シドニー南西部のベトナム人街「Cabramatta」はベトナムの食材店・カフェ・レストランを訪れる人々で賑わいを見せる(筆者提供)
シドニー南西部のベトナム人街「Cabramatta」はベトナムの食材店・カフェ・レストランを訪れる人々で賑わいを見せる(筆者提供)

また、各国のイベントの開催やお祭りを祝う風景もオーストラリアでは頻繁に目にする。例えば、チャイニーズニューイヤー(旧正月・春節)はオーストラリアの各都市で盛大に執り行われ、街中のあちこちに伝統的な装飾が施される。

中華圏で祝われる旧正月の時期はシドニーの中心地も縁起が良いとされる赤の提灯があちこちで飾られている(筆者提供)
中華圏で祝われる旧正月の時期はシドニーの中心地も縁起が良いとされる赤の提灯があちこちで飾られている(筆者提供)

その他、最高動員数5万人を超えるイベント「Matsuri Japan Festival」はシドニーの夏の風物詩として現地の人々にも人気が高い。日本の食べ物を売る屋台が軒を連ね、日本の観光地のPRや茶道や華道などの伝統文化のワークショップ等に浴衣姿で参加するオーストラリア人の姿も多い。

これらの諸外国の文化を堪能できるイベントを通して、楽しみながら異なる文化や習慣への理解を深め、多国籍の人々とで共存していることが実感できる。

シドニー・メルボルンで開催されるフランスのお祭り「So Frenchy So Chic」。ピクニックスタイルでフランスの音楽や食べ物を楽しむ人々(筆者提供)
シドニー・メルボルンで開催されるフランスのお祭り「So Frenchy So Chic」。ピクニックスタイルでフランスの音楽や食べ物を楽しむ人々(筆者提供)