新型コロナウイルスの拡大によって特にダメージを受けているレジャー産業。2021年9月に北京市に開園したユニバーサルスタジオ北京(通称:Universal Studio Beijing)は慎重にコロナ対策をしながら、2022年3月時点で粛々と営業を続けている。また、万里の長城の一角(苏马台)に2014年に開園した古北水镇(通称:Water Town)も2020年春以降はコロナ禍でも集客可能な市場開拓に努力している。この二つのアミューズメントパークから、コロナ禍の中国のレジャー産業の現状と今後について、現地在住リサーチャーがレポートする。

ユニバーサルスタジオ北京園内の様子(筆者撮影)
ユニバーサルスタジオ北京園内の様子(筆者撮影)

ユニバーサルスタジオ北京、開園までの長い道のり

北京市通州区(tong-zhou)に位置するUniversal Studio Beijingは、米国ユニバーサル本社と中国北京市政府との間で2001年に設立合意をしたが、その後国務院の承認に長い年月が費やされ、ようやく2015年11月に正式に着工、基礎建設が開始された。2016年には米国本社から200人以上の米国人が北京市に赴任し、現地スタッフを指導しながら建設、スタッフやキャストの教育指導が開始された。

計画では2020年3月に開園予定であったが、コロナの影響で延期が余儀なくされ、1年半後の2021年9月にようやく開園の日を迎えた。開園時にはすでに9割の米国人スタッフは帰任し、2022年3月時点では約20人の本社米国人スタッフが北京で勤務をしているが、彼らもこの夏を目途に徐々に帰国し、来年以降はほぼ現地スタッフで運営が執り行われることになるという。現在では、約1万2000人ほどの現地スタッフが正規、非正規社員として働いている(Webサイト、および米国ユニバーサル本社役員の談話より)。

ユニバーサルスタジオ北京園内の様子(筆者撮影)
ユニバーサルスタジオ北京園内の様子(筆者撮影)

困難を極めたキャストの確保

ユニバーサルスタジオの目玉の一つである屋外のエンターテイメントやパレードのキャストなどは開園後の数年間は米国からのスタッフを起用したい思いがあったが、2020年春以降コロナ禍で米国人のみならず外国人全般へのビザ発給が中止されたため、キャストはほぼ現地の中国人、あるいは既に中国ビザを保持する外国人から起用することとなった。米国や日本の既存のユニバーサルスタジオと同じクオリティのエンターテイメントを維持するために、インストラクターのビザもままならない状態でのキャストの教育訓練に必要以上の時間を費やされることとなった。

パレードの様子(筆者撮影)
パレードの様子(筆者撮影)

来園者はほぼ北京市民

首都北京はコロナの厳戒態勢が2020年春以降なかなか緩和されず、中国国内のどこかで感染者が一桁でも増加しようものなら、その都市と北京との交通が暫定的に遮断されることが珍しくない。また地方在住者も北京に入京する条件が厳しく(PCRテスト陰性証明、数日間の隔離など)、北京はもはや観光地とは呼べない都市になってしまった。

そのため、2021年8月以降は北京市内のレジャー産業は北京市民のみ対象のマーケティングを余儀なくされ、SNSを駆使した情報発信(微信、微博、口コミアプリなど)を積極的に活用している。

開園延期によりユニバーサルスタジオは予想以上にマーケティング戦略を綿密に練る時間が与えられ、SNS上では2021年夏からKOL(Key Opinion Leader:中国の消費者に強い影響力を持つ、何らかの専門性を有するインフルエンサー)による園内でのアトラクション、レストラン、園内ホテルの発信が目をひくようになった。8月下旬にはソフトオープニングと称してユニバーサルスタジオ関係者、クライアント各社が招待され、徐々にSNSや口コミで園内の様子が市民に伝えられるようになった。同年9月の開園以降、園内では中国でも大人気のハリーポッターのコスチュームを纏った中国人の男女の姿が目立つようになり、淘宝網(タオバオ)ではユニバーサルスタジオ園内に着用していけるハリーポッターグッズ(120~300元程度)がヒット商品となった。

入場、ファストパス、園内ロッカー利用などが全て顔認証のみで非接触を実現

筆者が実際にユニバーサルスタジオを訪れた2022年1月は、冬場で開園から入場券(大人395~528元)を限定販売しているため、園内の入場者はまばらであった。ファストパス(1人550元)を購入すれば待ち時間はゼロだが、ファストパスがなくとも30分以上待つアトラクションはない。

入場券をミニアプリ(あるいはネット上)で購入、その際に身分証かパスポート番号を登録するため、入場時に必要なのは顔認証だけだった。予約番号や支払い証明などの提示も必要なく、スマホをポケットに入れた状態で、手ぶらでも入場できるシステムは空港の入国審査よりも簡単で、長蛇の列ができることは全くない。

ファストパスも顔認証のみで可能(筆者撮影)
ファストパスも顔認証のみで可能(筆者撮影)

驚くべきは各アトラクションに設置されている手荷物用無料ロッカーの使用方法だ。これもスマホQRコードさえも必要なく、顔認証のみで利用できる。利便性とプライバシーの議論になることも多いが、ビッグデータの活用において進化していることを感じた。園内で後日コロナ陽性者が出てしまった場合は、陽性者の行動範囲を確認後、至近距離にいた濃厚接触者に漏れなく連絡可能であること示唆している。

コロナの影響を多大に受けていながらも、SNSマーケティングやテクノロジーの活用で課題を解決し運営を続けていることがわかる。