培養肉。かつてSFの世界でしか耳にしなかった食べ物が、いち早く身近な存在となっている国がある。政府が積極的にフードテック企業を支援しているシンガポールだ。この国ではすでに、望めば誰もがこの「未来の食べ物」である培養肉を試食することができる。しかも、自宅を一歩も出ることなくそれが叶うのだ。今回はこの世界初の取り組みを、現地在住リサーチャーがレポートする。

代替肉開発を国を挙げて推進するシンガポール

foodpandaモバイル版のMadame Fanメニュー画面スクリーンショット(筆者撮影)
foodpandaモバイル版のMadame Fanメニュー画面スクリーンショット(筆者撮影)

代替食品開発および培養肉ベンチャーのEat Just(米国・サンフランシスコ本社)が、シンガポールにおけるフードデリバリー大手foodpanda(ドイツ・ベルリン本社)と手を組み、高級広東料理店Madame Fanの協力を得て実現したこの取り組み。毎週木曜日の11時から14時の間、デリバリー限定メニューとして、培養肉「GOOD Meat」を使ったサラダや餃子、チャーハンなどがオーダーできる。Madame Fanがデリバリー対象圏内に設定している地域内であれば、早ければ1時間以内に届けてもらうことが可能だ。

世界中で培養肉の開発が進む背景には、地球の温室効果ガスのうち、家畜の飼育に由来するものが大きな割合を占めている現状があるからだ。これを削減する術として、現在主流になりつつあるのが、着々とシェアを伸ばしている植物性代替肉製品だ。シンガポールでもいくつものメーカーが植物性代替肉製品を販売しており、大変身近な存在となっている。また、政府系ファンドも先進的なフードテック企業に積極的な投資を行なっており、シンガポールは食の未来を担う研究開発メッカとしても世界に知られるようになってきた。

シンガポール政府が行なっているサポートは資金面だけではない。植物性代替肉に比べて高度に先進的な技術によって作られており、未知のリスクが見込まれる培養肉についてもチャレンジングな姿勢を示している。各国が尻込みする中、世界に先駆けて培養肉の商業化を認可したのだ。世界で最も気軽に培養肉を試食することができる仕組みが実現した背景には、国を挙げての積極的な体制があることが大きいだろう。

胸踊るエクスペリエンスを演出

通常、foodpandaでデリバリーをオーダーすると、紙袋やビニール袋に入った、簡素なパッケージの料理が届けられる。しかしこの培養肉メニューを頼んだ人には、嬉しいサプライズが待っていた。

foodpandaで届いたオリジナルエコバッグに包まれたインパクト大の培養肉メニュー(筆者撮影)
foodpandaで届いたオリジナルエコバッグに包まれたインパクト大の培養肉メニュー(筆者撮影)

『History delivered.(歴史の1ページをお届けします)』

画期的な未来の食品は、上記の文字が大きくプリントされたオリジナルのエコバッグに包まれて届いた。さらに、竹製の再利用可能なランチボックスに入っており、徹底したサステナビリティへのこだわりが感じられる。今回オーダーした「GOOD Meat Asian Inspired Cultured Chicken Salad」は23シンガポールドル(約2100円)なので、採算を度外視していることは間違いない。