世界保健機関(WHO)の2018年の調査によると、タイの10万人当たりの交通事故死亡者数は32.7人(シンガポール2.8人、日本4.1人)で東南アジア地域でも1位、世界でもトップクラスだ。例年、4月半ばのタイ正月や年末年始の大型連休には、交通事故件数や交通事故死亡者・負傷者数が大々的に報じられている。それを考えると、接触レベルの軽微な事故は日々無数に起きているのだ。

バンコクでは毎日車を運転する人が多く、接触事故未経験者はほぼいないといっても過言ではない。軽く擦った程度であれば、互いに車を停めないこともあり、明らかに損傷がある場合でも事故相手の様子から誠実な対応が得られそうな人と判断できれば示談で済ませることも多いという。忙しい現代の人々は、些細な事故に時間をかけていられないという事情が大きい。そうした背景もあり、Claim Diの時間をかけずに事故や保険処理ができるサービスは画期的といえるだろう。

GrabやUberの保険調査版、フリーランス調査員の収入を生む

Claim Diには、当事者同士がスマホをシェイクして完結するKnock for Knock機能以外に、それだけでは不安な場合は保険調査員を呼ぶ機能も備わっている。利用者は、アプリで接触事故を連絡する際に「調査員を呼ぶ」を選択し事故現場情報などを送信。登録されている調査員がバイクで事故現場に駆けつけ、事故状況を確認し保険請求処理をしてくれる。アプリによる位置情報へのアクセス許可により、口頭で説明するよりもGPSで事故現場の特定が容易になり、調査員にとっても処理はスムーズに進められる。

このClaim Di保険調査員は、調査員用アプリ「Claim Di Bike」に登録するフリーランスの調査員だ。調査員になりたい人は、自分のバイクと免許証さえあればアプリをダウンロードして登録し、講習を受けるだけで誰でも気軽に働くことができる。調査員になると、自分の現在地近くで事故が起きた際に調査員派遣要請が送られてくる。その事故処理を受けたい場合には対応し、都合が悪い場合には受けなくてもよい。調査員の収入は、多い人になると月に8万バーツ(約29万円)にもなるという。東南アジアでも広がる配車サービスのGrabやUberの保険調査員版サービスとも言える。新しいフリーランスの働き方や副業のかたちとしても注目されている。

タイのスタートアップ業界では、初のInsurTech(保険×テクノロジー)サービスとして注目を集めるClaim Di。大手保険MuangThaiはClaim Diとパートナーシップを結び、同社自動車保険加入者向けに独自アプリ「MuangThai Claim Di」を導入。Claim Diの革新的なサービスインフラと連携して、自社の保険サービスを効率化したり顧客満足度を上げたい企業は今後も増えそうだ。そうしてタイ人の利用者が増えることで、長年課題だった渋滞の緩和やトラブルの軽減、さらには雇用増加にもつながる可能性がある。今後もタイのInsurTechサービスに注目したい。

この記事は、TNCが主宰する世界70ヵ国100地域に暮らす約600人の日本人女性ネットワーク「ライフスタイル・リサーチャー」からの情報をもとに制作しています。日本と海外の価値を結ぶさまざまな企画・マーケティング分野で活躍しています。