ドイツではメインの仕事に就きながらボランティアとして消防士や救急隊の仕事をサポートする消防隊員が約100万人登録されているといわれている。他国に比べて非常に多い数だ。もともとボランティア精神が浸透しているドイツ社会ならではの事情といえるかもしれない。「DIVERA 24/7」は、ドイツの消防署や救急施設と数多く存在するボランティア隊員をつなぎ、緊急時に駆け付ける人員を効率的にマネジメントできる機能を持つドイツらしいサービスである。

火災や災害などの緊急時には、一刻も早い対応が必要になることはいうまでもない。ただ、ドイツのように地域に登録ボランティア隊員が数多く存在する社会においても、時と場合によって駆け付けられる人員が大幅に足りない事態が過去に起きている。そうした問題に備えるため誕生したのが、緊急時の人員マネジメントサービス「DIVERA 24/7」だ。

開発者であり、DIVERA GmbHの取締役を務めるBernhard Horst(以下ホースト氏)は、もともと救助隊のアウスビルドング(セオリー習得と実地での職業訓練を同時に行い、最終的に資格をとるドイツのシステム)を修了後、エンジニアや災害マネジメントの学位を大学で取得。さらに安全工学の博士号を取得した経歴の持ち主だ。彼自身が習得した知識や実践的な経験と、消防署や救急施設などの緊急事態に関わる事業者のニーズを把握し、「DIVERA 24/7」を開発。2015年にサービスを開始した。

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「DIVERA 24/7」の公式サイトのイメージ
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「DIVERA 24/7」の各種機能画面

消防・救助に向かえる隊員の状況をリアルタイムで“見える化”

「DIVERA 24/7」は緊急事態が発生した際に救助依頼をしたい事業者(消防署、消防団、病院、学校、企業など)が契約して導入するサービスである。無料プランでも50人までグループ登録が可能で、大きな組織向けには有料で登録人数無制限プランなど4つの契約形態がある。

例えば特定地域の消防署が「DIVERA 24/7」を導入し、その地域のボランティア消防隊員が事前にそれぞれのスマートフォンにアプリをダウンロードしておくとする。そうすれば、いざ緊急事態が発生した際には、消防署からアプリ登録しているボランティア隊員に一括で緊急出動要請のアラームを鳴らし、発生場所をGPSで示したり事態の内容(地下室で火災が発生など)を音声で発信したりすることができる。

緊急出動アラームを受けたボランティア隊員たちは、アプリ画面上に表示される救助場所や内容を見て、救助協力が可能で対応する場合は、何分以内に救助先へ到着することができるかを5分、10分、20分などの選択肢で選択。対応できない場合は、出動不可能の選択肢を選ぶだけとなる。救助に向かう際は現在地から救助先までの経路ナビゲーションが表示されるため、効率的に目的地にたどり着ける。

こうした各隊員の状況はリアルタイムにアプリ内に表示され、グループの中の誰が救助活動に参加可能で、何分以内に何人が救助地に到着見込みなのか、といった情報を一括で把握、管理することができる。このため、緊急時の人員招集や管理に画期的なサービスなのだ。

「DIVERA 24/7」のアプリでは、隊員が事前に自らの情報(主な滞在エリア、対応可能予定、出動不可能な日程など)を登録して隊員同士でシェアしておくことができるため、これらの各隊員の登録情報に基づいて、いざ緊急事態が発生した際には出動可能隊員のみに緊急連絡が送られる仕組みになっている。あくまでもボランティア活動という前提もあるため、ドイツ人が特に大切にしている休暇やプライベートの時間を妨げることも避けられるのだ。

緊急時の人員マネジメント需要により導入が拡大

「DIVERA 24/7」は2018年に、ハノーファーで開催された国際情報通信技術見本市「CeBIT」(現在はHannover Messeに統合)でイノベーション賞を受賞。その他、このサービスの導入ターゲットは緊急対応業務に関する事業者に限られていたため、各種見本市会場でのブース出展やドイツ国内の赤十字オフィスでのサービス説明会、利用者との意見交換会、全国各地の消防署への出張ツアーなどを開催しながら、サービスの存在をより多くの緊急対応機関にダイレクトに伝えていく活動を行ってきた。また、ラジオ放送ではインタビューに応じながら機能や仕組みを説明し、緊急時の救助活動というシリアスな業務を幅広い層にもPRすべく地道な活動を続けており、開発者や緊急機関関係者たちの意気込みが伝わってくる。

そうした活動の成果もあり、「DIVERA 24/7」はドイツ国内だけでなく、オーストリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルクなど、約5000カ所の緊急機関にて、約10万人の救助隊員が使用するまでに拡大している(2019年6月時点)。隊員以外にも、緊急時の人員確保や状況把握が必要となる医療機関、教育機関、危機管理セクター、大企業などの利用も増えてきているという。また、ボランティア隊員だけで構成される地域の消防団体などがサービスの利用を希望した場合に、地元企業にスポンサーになってもらい地域の防災機能を高めるという試みも始めている。

ボランティア文化とテクノロジーが融合した「DIVERA 24/7」の仕組みは、様々な災害や緊急事態に見舞われる日本にとっても学ぶところは多いだろう。

この記事は、TNCが主宰する世界70ヵ国100地域に暮らす約600人の日本人女性ネットワーク「ライフスタイル・リサーチャー」からの情報をもとに制作しています。日本と海外の価値を結ぶさまざまな企画・マーケティング分野で活躍しています。