世界的に広がるサステナビリティの潮流を受けて、「アーバンファーミング」と呼ばれる都市型農業形態に注目が集まっている。いち早くこの分野に着目したアメリカ、オランダ、ドイツに加え、イギリスでも昨今、農業の概念を覆すようなアーバンファームが誕生している。生産の効率化や資源の節約といったメリットとともに、欧州連合(EU)離脱で揺れる最中にあって将来的に輸入食材の値上がりが懸念されていることもあり、イギリスで熱視線を集めるアーバンファーミングの姿をご紹介したい。

意外な場所を活用したアーバンファーミングの利点

アーバンファーミングとは、農地で作物を育てる既存の農業とは異なり、都市における空きスペースを利用して行う、都市型農業のことだ。ここ数年、使われなくなった大型倉庫、地下や屋上といった、意外な場所を利用して野菜を育てるアーバンファームがイギリスで台頭している。

業界を牽引するGrowing Underground(グローイング・アンダーグラウンド)のあるクラパム地区までは、ロンドンの中心部レスタースクエアから地下鉄でわずか15分。その地下鉄駅のさらに下、クラパムの活気ある通りの地下33メートルに広がっているのは、なんと第二次世界大戦時に防空壕だったトンネルを利用した地下農園だ。

防空壕だったトンネルを利用した地下農園(Growing Underground提供)

異色なのは、場所だけではない。「バーティカルファーミング(垂直農法)」を採用し、LED照射と栄養剤入りの水分を染み込ませたリサイクルの絨毯の切れ端を使用した水耕栽培では、日光も、農薬も、土も必要としないというから驚きだ。その上、水を循環利用することで通常の農地での栽培に比べて70%もの水分を節約できる。栽培に使用するトレーを横ではなく縦に積み上げることで限られた空間を有効活用し、光と温度が完璧に調整された環境で栽培できる利点がある。気候の変化に関係なく、一年中新鮮なマイクログリーン(若芽野菜やハーブ)が、収穫から最短4時間で消費者まで届けられる。

LEDを利用した栽培の様子(Growing Underground提供)

イギリス初の地下農園が誕生したきっかけは、子どもの時から友人同士だった2人の創始者、Steven Dring(スティーヴン・ドゥリング)氏とRichard Ballard(リチャード・バラード)氏が、サステナビリティについてパブで語っていた際に、ふと目に留まった垂直農法に関する本だった。そのアイデアを現実のものにしたこの農園スペースは、ドゥリング氏が映画製作を学んでいた学生時代、とある撮影のロケ地候補として訪れたこの防空壕だったため、2人の創始者が後にパブでこの本を手にした時こそが、全てのパズルがピタリとはまった瞬間だったという。