北欧デンマークの首都コペンハーゲンが「世界一の自転車都市」と呼ばれていることをご存知だろうか。様々なランキングで、コペンハーゲンは「世界で最も自転車に優しい都市」のトップに選ばれている。また、2021年には、コペンハーゲンが初めて自転車ロードレース「Le Tour de France(ツール・ド・フランス)」のスタート地点になる。コペンハーゲンがスタート地点として選ばれた理由は、都市レベルで自転車インフラが整備されており、自転車が人々の日常に根付いているからだという。環境に優しい移動手段、そして健康面でも注目を集める自転車の利用をいち早く推進し、魅力的な都市を実現したコペンハーゲンのいまを、現地在住リサーチャーがレポートする。
市民とともに作り上げた自転車都市の変遷


コペンハーゲンは「世界一の自転車都市」を目指し、市民へのアンケート調査を積極的に実施し、市民が自転車に乗りたくなる街づくりに取り組んできた。現在、コペンハーゲンでは、自転車が通学・通勤の交通手段の約50%を占めている。自転車が最も快適で速くて便利な上に、お財布にも健康にも環境にも良いという、良いこと尽くしであるためだ。


1907年にはすでに欧州トップクラスの自転車都市であったコペンハーゲンは、1960年代後半にはマイカーブームの到来により、自動車を優遇する政策にシフトした。しかし、1970年代にオイルショックが起こると、石油に依存しない交通手段として自転車が再び注目を浴びるようになった。また、交通事故の増加に伴い、自転車専用道路を設置すべきだというデモが行われるようになったのもこの頃である。そこで、コペンハーゲンは1980年代から集中的に予算を投下し、基本的な自転車インフラを整備すると、それに伴って自転車利用者も増加していった。

都市の隅々まで整備された、基本的な自転車インフラ
世界一と称される自転車都市コペンハーゲンの自転車インフラについて知りたければ、実際に自転車に乗ってサイクリングを楽しんでみるのが一番だ。筆者はコペンハーゲンの最新の自転車インフラを体感すべく、自転車でコペンハーゲン市内を走り回ってみた。まずは基本的な自転車インフラからご紹介する。
デンマークでは長距離列車・電車・メトロ・バスへの自転車持ち込みが許可されている。長距離列車に自転車を持ち込む場合は、チェックインして自転車の追加料金を支払う。コペンハーゲン市内を走る近距離電車(S-tog)・メトロ・バスへの自転車持ち込みは無料である。駅のホームにはエレベーターが設置されており、簡単に自転車を持ち込むことができる。
