また、コペンハーゲンには街の至る所に自転車専用道路と自転車専用信号機がある。歩道と車道の間に自転車専用道路があり、交差点には縦型の小さな自転車専用信号機が設置されている。自転車のルールも徹底しており、右側通行、追い抜きは左から、止まるときは手を上げる、曲がるときは手でその方向を指す、暗い時間帯はライトをつける(正面に白ライト・後方に赤ライト)など、様々なルールが定められている。

自転車専用信号機(左)は縦型でコンパクト。自転車マークが目印。自転車専用道路(右)は段差をつけたり、自転車マークをつけたり、色分けするなど、認識しやすいように工夫されている
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自転車専用信号機(左)は縦型でコンパクト。自転車マークが目印。自転車専用道路(右)は段差をつけたり、自転車マークをつけたり、色分けするなど、認識しやすいように工夫されている

ルールさえ守れば、コペンハーゲンでのサイクリングは最高に快適で、かなりのスピードを出して走ることができる。コペンハーゲン市内の自転車の平均時速は約16キロだ。ラッシュアワーに時速20キロでコンスタントに走れる場所もある。にも関わらず、安全性も高く、OECDの30カ国以上を対象とした調査(2011~2015年)によれば、コペンハーゲンは最も自転車事故による死亡率が低い都市のひとつなのだ。

さらに進化するコペンハーゲンの最新自転車インフラ

1982~2001年に基本的な自転車インフラを整備した後、コペンハーゲンは自転車を市の施策の優先事項に位置づけ、10年計画を打ち立てた。さらに、現在では「世界一の自転車都市」の確立を目指して「自転車ストラテジー(2011~2025年)」を実行中だ。

近年のコペンハーゲンの自転車インフラ整備のスピードには目を見張るものがある。歩行者と自転車のための橋の建設、自転車専用の橋「スネーク」の建設、ラッシュ時に時速20キロで走り続ければ赤信号で止まらずに走れるシステム「グリーンウェーブ」の導入、都市と地方を結ぶ「自転車用スーパーハイウェイ」建設、アプリを通じて利用する「電動の公共レンタサイクル」導入、効率的に自転車を収容できる駐輪場の拡充など、次々にイノベーティブなアイデアが実現されている。

自転車専用の橋「スネーク」。右側通行で両サイドから滑走できる。全長220メートル
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自転車専用の橋「スネーク」。右側通行で両サイドから滑走できる。全長220メートル
従来からある橋「Langebro」を走る自転車は1日4万台以上という混雑ぶりだった。混雑を緩和するために、その隣に、歩行者と自転車のための橋「Lille Langebro」を建設した。開通以来、1日1万1000台以上の自転車が走行するようになり、従来の橋の混雑が大幅に緩和された。写真は2019年に開通した「Lille Langebro」、全長175メートル
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従来からある橋「Langebro」を走る自転車は1日4万台以上という混雑ぶりだった。混雑を緩和するために、その隣に、歩行者と自転車のための橋「Lille Langebro」を建設した。開通以来、1日1万1000台以上の自転車が走行するようになり、従来の橋の混雑が大幅に緩和された。写真は2019年に開通した「Lille Langebro」、全長175メートル
自転車利用者向けの手すり、足置き場(左)。アプリを通じて利用できる電動の公共レンタサイクル(右)
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自転車利用者向けの手すり、足置き場(左)。アプリを通じて利用できる電動の公共レンタサイクル(右)

自転車先進都市コペンハーゲンが描く未来

現在、コペンハーゲンの「自転車ストラテジー」は「コペンハーゲン気候変動適応計画2025」のプロジェクトの一環である。世界的に気候変動への関心が高まるなか、2009年に「第15回気候変動枠組条約締約国会議(COP15)」が開催され、コペンハーゲン市は「環境に優しい街づくり」という理念のもと「自転車ストラテジー」を加速させた。自動車に代わる交通手段として自転車の利用が増加すれば、CO2削減につながる。都市と地方を結ぶ「自転車用スーパーハイウェイ」45ルート(計746 km)が完成すれば(2045年目標)、CO2排出量は年間1500トン抑えられるという。

さらに、自転車は市民の健康維持にも役立つ。コペンハーゲン近郊で自転車利用率が10%アップすれば、病欠は10万9000日減少し、年間74億7400万円以上の経済効果が生み出されると予測されている。自転車推進プロジェクトは、同時に環境保護や健康促進、経済効果にもつながるプロジェクトなのだ。

ノアポート駅の駐輪場。両サイドから駐輪可能な効率的なシステムで、自転車2500台を収容可能
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ノアポート駅の駐輪場。両サイドから駐輪可能な効率的なシステムで、自転車2500台を収容可能

調査によれば、いま市民が最も不満を抱いているのは「駐輪場不足」と「自転車道の幅の狭さ」である。コペンハーゲンの街には、駐輪場に収容しきれない自転車が溢れている。また、従来からある自転車道の幅ではカーゴバイクなどがゆっくり走っていると追い越しにくい。今後の課題は、これら市民から届く不満を取り除くことである。市はどんなイノベーティブなアイデアで課題解決に挑むのか。最新のテクノロジーとデザイン力を駆使して、世界をリードする自転車先進都市の未来を描くコペンハーゲンから目が離せない。

この記事は、TNCが主宰する世界70ヵ国100地域に暮らす約600人の日本人女性ネットワーク「ライフスタイル・リサーチャー」からの情報をもとに制作しています。日本と海外の価値を結ぶさまざまな企画・マーケティング分野で活躍しています。