世界共通の課題であるプラスチックごみ問題だが、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の先進国といわれるオランダでは、様々な取り組みが進んでいる。プラスチックごみの回収や削減に向けた取り組みを進めるのはもちろん、それと同時に、回収した廃棄プラスチックのリサイクル、原料としての新しい活用法の研究も進んでいる。今回は廃棄プラスチックを原料にした「家」の建設を進める企業の取り組みをレポートする。

廃棄プラスチックから家を建て、悪いイメージを払拭する

オランダでは、Boyan Slat氏が創設し世界的に知られる環境NGO「The Ocean Cleanup」に代表されるように、海洋や河川に廃棄されたプラスチックごみを先進的な技術で回収するプロジェクトが進められていると同時に、一般家庭や個人のプラスチックごみの捨て方、回収の仕組みも整備が進んでいる。例えば、0.5リットル以上のペットボトルはデポジット制度がとられており、空のボトルをスーパーマーケットに設置されている回収機械に入れると指定の金額が戻ってくる仕組みで回収率も高い。0.5リットル未満のペットボトルごみが対象ではないことが課題だったが、これらのペットボトルにも2021年7月から課金されることが決まった。

オランダに限らず、世界的にプラスチックのリサイクル活動が進んではいるものの、実際には汚れがひどいことが問題となっている、混合物が多すぎる等の理由で、リサイクルできずに焼却処分されることも多いのが現状だ。オランダの調査会社であるCE Delftの発表によると、2017年時点のオランダでは企業・個人から回収されたプラスチックごみのうち47.5%がリユース・リサイクルされたが、それ以外は焼却処分されていたという。ただ、近年の技術開発の進歩によって、より多くの廃棄プラスチックがリサイクルされ製品化できるようになってきている。

そんな中、プラスチックごみの悪いイメージばかりが強調される社会において、廃棄プラスチックを原料として活用した「家」を建てることで、プラスチック素材のイメージを回復しようというプロジェクトがひとつの企業の提案からスタートした。まもなく実現の日を迎えようとしている。

「save home」の外観(提供:Save Plastics)

オランダ東部にあるArnhem(アーネム)市で30年続くリサイクル企業Save Plastics。この企業にとって使用済みのプラスチックは廃棄物ではなく、貴重な原料だ。回収したプラスチックを再び溶かしてリサイクルし、新しい製品にするという循環を作り出している。

Save Plasticsでは環境改善に積極的に貢献し、より良い世界を次世代に残したいと考えている。プラスチックを何度も再利用ができる環境に優しい素材と捉えており、同社では汚染されたプラスチックごみでさえ、新たな命を与えることができるという。使用済みのプラスチックを再び価値あるものにし、廃棄プラスチックが存在しない世界を目指して活動している。

欧州各国をはじめ世界的にレジ袋の有料化や廃止、ストロー・コップなどのプラスチック製品の廃止や削減が進んでいることからもわかるように、「プラスチックは悪」というイメージが強調されている。そこでSave Plasticsでは、廃棄プラスチック原料から快適で持続可能な家を作ることで、プラスチックの悪いイメージを覆すことができないか、という案が生まれた。地域のプラスチックごみを利用し、快適さと耐久性を備え、モバイルで自給自足のバカンス気分を味わえる家がコンセプトだったという。

2018年夏に、Save Plasticsオーナーの妻から廃棄プラスチックで作る家の企画案「save home」が生まれ、建築事務所がこのアイデアに興味を持ち、2018年の終わりには紙面上で設計の準備が整った。その後、試行錯誤しながら実際に建設に取り掛かったのが2019年10月。設置場所は不動産会社協力の元に決定した。家は、あらかじめ輸送にかかるCO2排出に配慮して設置場所に近い場所で組み立てられた。モジュール型の構造で、必要に応じて再配置したり、接続可能なユニットで構成されたりしている。2020年4月上旬には完成した家が輸送・設置され(その様子はYouTubeで公開されている)、5月から入居予定だ。

実際に入居するのは、アイデア主であるSave Plasticsオーナー家族。実際に自らが住んでみることで改善する点を洗い出して改良し、その後に一般に販売する予定だ(現在、先行予約が可能)。モバイル性に優れ、輸送用に設計された柔軟な構造であるため、耐衝撃性を備えた耐用年数100年の家だという。優れた断熱性、ソーラーコレクター、最新技術によりエネルギーの自給自足が可能で、素材には可能な限り100%再生プラスチックが使用された、オランダ初のプラスチック製の家である。

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「save home」の内観(提供:Save Plastics)
4月に設置が完了した「save home」の様子(提供:Save Plastics)