平成最後の1年となった2018年は、多数の自然災害に悩まされた年だった。地震、台風、大雨、洪水、土砂災害、大雪――。全国各地で、様々な被害を受けた。ちょっと振り返っただけでも、日本は実に多くの自然災害に悩まされている。災害そのものは避けられない。ただ、先端技術を活用すれば被害を最小限にとどめる工夫はできる。これから迎える「令和」は、災害対策でも技術変革が進んでいくはずだ。

7月3日から8日にかけては、西日本や東海地方の非常に広範囲で長時間の記録的な大雨が降った。広島や九州北部などでは、大雨の影響で土砂災害が発生し、あちらこちらで家屋の倒壊や生き埋めの通報が相次いだ。

9月のはじめには台風21号が近畿を直撃。同じく9月の末には再び24号が直撃した。ともに「非常に強い」勢力の状態で上陸し猛威を振るった。

台風21号は徳島から近畿を縦断し、猛烈な暴風により都市部で屋根の一部が吹き飛ぶ、車が横転するといった事象が頻発した。もっと大ごとになったのは、高潮と高波により、関西国際空港が機能停止に陥ったこと。利用者や従業員ら最大約8000人が一時的に孤立。旅客便の運航が一部再開したのが3日後という、前代未聞の事態となった。

それからわずか3週間後には台風24号が和歌山に上陸し、東日本にかけて本州を横断。これに伴って首都圏の交通機関が事前の計画運休を実施した。

台風や大雨、土砂災害のほか、大きな地震もあった。4月の島根県西部、6月の大阪北部に加え、9月上旬には北海道地震が発生。厚真町で最大震度7を観測し、死者41人を出した。さらに、国内で初めて電力会社管内の大規模停電(ブラックアウト)が発生。約295万戸が停電した。

近年は、気候変動の影響か、大雨、洪水、そしてそれに伴う土砂災害の件数が増え、しかも被害のダメージが膨らんでいる。このままいくと、自然災害の被害はさらに拡大していきそうにも見える。

技術変革の時代と言われつつも、今の技術では、これら地震、大雨、洪水といった災害そのものを回避することは難しい。ただ、デジタル変革が進む中で、災害のダメージをできるだけ小さく抑えることはできる。「令和」は災害対策の変革が進んでいく時代になるだろう。以下では、デジタル技術が災害対策にもたらしつつある進化を見ていこう。

気象情報などのデータから被害規模・範囲を精密に試算

災害そのものを避けられない以上、災害対策では、的確かつタイムリーな被害の規模や範囲の予測と、災害発生後の状況把握、そして災害発生後の情報伝達手段の確保が重要になる。

このうち、的確かつタイムリーな被害の規模・範囲の予測は、まさにデジタル変革によって大きく進歩してきているところだ。いわゆるビッグデータに基づいて、人工知能(AI)などを使ってダメージを予測する。

一例が、ウェザーニューズが取り組んでいる、全世界の降雨状況の可視化・予測。NVIDIAと連携し、同社のスタートアップ支援プログラムであるInceptionに参画する日本のスタートアップ、dAignosis(デエイアイグノシス)がディープラーニング技術の開発を手がけるという。

同プロジェクトでは、日本を中心とした地域の衛星画像と、雨雲レーダー画像を教師データとして使い、ディープラーニング技術により、各地域の高精度な予測雨雲レーダー画像を生成する。これにより、気象レーダーなど気象観測インフラの整備が進んでいない地域、あるいは海上についても、高精度な雨雲レーダーを入手できることになる。

衛星画像から生成された仮想の雨雲レーダー画像(イメージ)(出典:ウェザーニューズのニュースリリース)

一方、AIを使って防災シミュレーションを手掛ける米ワン・コンサーンも、災害による各地の被害状況を手がける。同社は世界に広がる監視網を持っており、そこからのデータに基づいて災害発生後の被害状況を、素早く予測する。現時点で約1200万の住民の分布、65万以上のビルの築年数などのデータを持つと同時に、それぞれの状況をモニタリングしている。地震の影響が及ぶ範囲として見ると、約3600万人が監視対象に入るという。

最近の報道では、地震の震度や大雨時の降水量のデータを組み合わせ、さらに様々な災害の被害状況を予測できるシステムを、日本向けに開発するようだ。企業の事業継続計画(BCP)や自治体の防災計画づくりを支援する。

似たサービスとしては米IBMのグループ企業であるThe Weather Companyの気象予測もある。これは主に民間企業が生産計画などを立案する際のビジネス判断に必要な気象情報を提供するサービスだが、災害対策にも役立ちそうだ。