通信手段を確保し情報共有、地中を通す通信も候補に

一方、災害発生後は、被害状況や避難場所の情報を伝え、住民や従業員の安全を確保するための情報伝達も重要になる。そのための取り組みの一つに、LINEと国立研究開発法人防災科学技術研究所(NIED)の連携がある。2018年9月に協定締結を発表した。

この協定に基づいて、LINEに防災向けAIチャットボットアカウントを新設。ここで発災時の情報を収集する。加えて、府省庁や自治体が連携し、それぞれの防災システムを通じて集めた災害状況を共有。それらを迅速に把握・伝達し、効果的な災害対応を可能にする仕組みを作る。被災者向けには、当該アカウントへの情報の正確性の確認や問い合わせに対して、正しい情報を対話形式で自動的に回答する機能の開発も予定している。

LINEは国立研究開発法人防災科学技術研究所と災害発生時の情報伝達の仕組みづくり(出典:LINEのニュースリリース)

さらに、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)のユニバーサルコミュニケーション研究所が開発している「対災害SNS情報分析システム(DISAANA)」や「災害状況要約システム(D-SUMM)」とも連携させ、TwitterなどのSNSの情報も併せて活用することで、より正確かつ高度な仕組みを目指とという。

情報通信に関しては、一方的な情報発信だけでなく、まさに被災地の中にいる利用者とつながるネットワークづくりも重要である。そのネットワークを確保できれば、電話やメッセージのやり取りはもちろん、それらのやり取りができなくても位置情報把握などで役立つ可能性がある。

そのための手段としては、有事には既存の通信設備をすべて開放するというものがある。例えば公衆電話や、コンビニエンスストアなどのWi-Fiだ。ほかに、携帯通信事業者が臨時でドローン型の基地局を飛ばすといったアイデアもある。

そんな中での変わり種の一つに「磁気通信」がある。

インターネットをはじめとする情報通信は、電気信号を使った通信技術によって成り立っている。簡単に言うと、空気中に飛び交っている電波の強弱や、電波の周波数の細かな変化を意図的に制御することで、信号を伝えている。ただ、一般に電波や光は土中や水中は伝搬しにくい。全く伝搬しないわけではないが、減衰しやすく、長い距離の通信には使えない。海中の探査に音波を使うのはこのためだ。

そこで、電気通信とは異なる技術を使おうという試みの一例が、電気ではなく磁気を利用する磁気通信である。利用場面は限られそうだが、災害対応はシーンの一つに挙げられる。

大まかな仕組みは電気通信と同じで、伝えたい信号に基づいて磁気の強弱や周波数を細かく変化させる(変調)。受信側は、リング型のアンテナなどを使って磁気信号をキャッチし、その磁気の変化から信号を読み取る(復調)。

通信のスペックを見ると、例えばカナダのVital Alertが製造・販売する磁気通信製品では、1k〜9kHzくらいの周波数を使う。通信速度は2kビット/秒、伝送距離は800メートルほど。あくまでも緊急用ではある。ただ、土中などのシチュエーションに向けた解決策として、可能性はありそうだ。

分かりやすい利用シーンは、鉱山のような場所での通信。鉱山で採掘に当たっている作業員と、外にいる監督などの間での連絡手段として利用できる。例えば2010年8月5日にチリのサンホセ銅鉱山で発生した落盤事故のような場面でも、磁気通信があれば、もう少し連絡を取りやすかったかもしれない。地下や地中のセンサーからのデータを収集することもできる。

こうした特徴から、磁気通信は災害時に効果を発揮する通信手段になる可能性がある。電気通信と同じように、3点測量の要領で利用者の位置を測ることもできる。災害で地下などに取り残された人がいる場合など、磁気通信があれば情報伝達を続けられるし、場合によっては位置も把握できる。

もちろん、地下駐車場などの場所で位置検知したい場合にも有効だろう。自動運転車などで使うことも考えられる。Vital Alertに関しては、国内でも既にいくつか実証実験が進行中で、信号のノイズキャンセルの強化、200kビット/秒という狭帯域の活用シーンの探索をいるという。