道路の情報を利用してさまざまな交通機関を選択

道路からの情報で渋滞の状況が細かくわかるようになれば、効率的な移動を考えて電車なども含めた交通機関を選択するという行動にも繋がる。すなわち、道路の情報はMaaS(Mobility as a Service)を実現する上でも大きな意味を持つようになる。

MaaSとは、既存のさまざまな交通インフラや情報、決済を統合して提供するサービスだ。例えば、都内の自宅から地方の観光地に向かいたい場合、MaaSアプリを使えばそこまでの経路に加え、最適な移動手段をいくつか提示してくれる。そこに提示されるのは、鉄道やバスといった公共交通だけに止まらない。タクシーや自転車シェア、カーシェア、レンタカーなど、あらゆるモビリティサービスを組み合わせた最適解が提案され、それらサービスの予約から決済までが1つのアプリ上で済んでしまう。

鉄道利用観点からMaaSの研究を進めている、東日本旅客鉄道 総合企画本部技術企画部 次長の中川剛志氏は、「MaaSを実現するには、道路からのリアルタイムのデータが必要になる」と語る。各方面に向かう道路の混雑情報と鉄道の運行状況をマッチングさせれば、例えば山手線に車両点検などによる遅延が発生した際、「乗客一人一人の行き先にあわせて、あなたは次の駅で降りてバスに乗り換えた方がいいとか、あなたはこのまま乗っていた方がいいといったレコメンテーションサービスの提供が可能になる」(中川氏)。

これに似た仕組みとして、クラウドソーシングを活用し、バスを使って最適な移動手段を提供する「Beeline」という取り組みが、シンガポールにある。スマートフォン向けのアプリで、現在位置と目的地、到着していたい時刻を入力すると、そのルートとバス会社の提案が返信されてくる。バス会社が提供するサービスだが、提案するのは路線バスの組み合わせではなく、利用者の希望に合わせて経路を決めた「オンデマンドバス」である。バス会社からの提案に、自分の希望の経路がなければ、利用者が提案することもできる。もちろん、依頼したあとはバスがあと何分で到着するかなどの情報提供もある。

UberやGrabのような配車サービスのほか、カーシェアリングサービスなど、サービスの充実とともに、より利便性の高いMaaSができあがっていくはずだ。

道路そのものの進化でいえば、道路の使い方を変えていくという考え方もあり得る。BMWグループが発表した未来の電動二輪車専用の高架道路のコンセプトである「ビジョンE3ウェイ」は、その一つといえよう。「E3」とは「高架道路(elevated road)」「電気的(electric)」「効率的(efficient)」を表しており、巨大都市が抱える交通渋滞や大気汚染などの問題を解決することを目的としている。

具体的には、二輪車専用道路を高架化して自動車道路と分けることで交通渋滞を解消し、衝突のリスクも回避する(図2)。電気二輪車は排気ガスが出ないため専用道路は屋根で覆うことができ、雨や熱からライダーを保護できる。二輪車の速度は安全のため25km/hに自動的に制限され、自動化されたビデオ監視システムやAIシステムによって交通の流れも最適化する計画だ。

(図2)BMWの構想による未来の二輪車専用道路
(MotorwardのYoutubeより引用)

道路がメガソーラー発電所?

道路に、新たな役割・機能を持たせるという方向性もある。

道路には日中は常に太陽光が降り注いでいる。もし道路にソーラーパネルを敷き詰めることができれば、都心にも設置できるメガソーラーになるかもしれない。こうしたことから、海外では既に、道路にソーラーパネルを敷設する試みが始まっている。

米国では、ミズーリ州やアイダホ州などで、ソーラーパネルを道路に埋め込む実証事件が進められている。実験で使われたソーラーパネルは、エネルギー関連のスタートアップSolar Roadwaysが開発した、強化ガラスを使用して六角形に加工された多層型のモジュールである(写真2)。このソーラーモジュールは100トン以上のトラックの通過にも耐えられるほどの強度を持っているが、単に発電するだけでなく自ら発電した電力を使った、さまざまな機能を持っている。

(写真2)Solar Roadwaysが開発中の最新型のソーラーモジュール
(Solar Roadwaysのホームページより引用)

Solar Roadwaysのソーラーモジュールは、発熱機能で表面温度を3℃に保つことができる。これによって、多少の降雪ならば路面の凍結を防ぐことができるだろう。また、LEDライトが埋め込まれているため、複数のソーラーモジュールを連携させて道路標識を地面に表示させたり、文字も表示できる。さらに荷重センサーを持っているので、上に何かが乗っていることを感知して特定の明かりをつけることもできる。夜間に道路上になにか障害物が落ちていたりすると、その存在をドライバーに知らせることができるのだ。

Solar Roadwaysでは将来的には通信機能も持たせようとしており、これが実現すれば道路上で起きているさまざまな状況を自ら情報発信するスマートな道路が実現できるかもしれない。

中国の済南市でも、高速道路に太陽光パネルを埋め込んで発電する実験を行っている。実験区域の長さは1080メートルで、高速道路の照明と800軒の家庭に電力を供給するのに十分な発電能力があるという。こちらのソーラーモジュールも、温度や交通量、荷重などを監視するセンサーを埋め込むための空間が設けてあり、将来的には道路を通過する自動車が、交通状況や地元の天気などの最新情報を受け取れるようにする予定だ。

米国の計画も中国の計画も、ソーラーモジュールで発電した電力をワイヤレス充電システムを使って電気自動車に供給することを想定している。中国では電気自動車の給電実験も行われたが、1キロメートル程度の長さでは十分に充電できなかったという。