画像認識は養鶏場にも活かされている。鶏舎のケージで隙間なく鶏が餌をついばんでいる場面をテレビで見たことがあるかもしれない。あの狭いケージ内では、圧死などさまざまな要因で死んでしまう斃死鶏(へいしけい)を健康管理・鶏卵品質向上の面から迅速に発見・処理する必要がある。

当然、作業員が目視で斃死鶏の検知を行うわけだが、そこには見逃しのリスクもあった。そこで鹿児島県出水市のマルイ農協では、画像認識と機械学習を組み合わせて自動化した「斃死鶏(へいしけい)発見システム」をNECと共同開発した。専用の台車を用いてケージ内を撮影し、撮影した動画をすでに学習済みの36万枚の画像と照合して斃死鶏を検知するシステムだ。

斃死鶏(へいしけい)発見システム。実用化はまだ先だが、実証実験を重ねて将来的には台車の自動走行も目指す(マルイ農協、NECの共同リリースより)

実証実験の結果、90%以上の精度で検知し、従来の目視による検知時間と比較して5分の1の時間に短縮できたという。これまで目視していたのは1鶏舎あたり実に8万羽。圧倒的な作業負荷の軽減につながった。

中国と米国、AI大国でも進む画像認識による農業合理化

当然、日本だけでなく海外でも農業でのAI活用は始まっている。

中国のIT大手、アリババグループはAIを養豚に活用する。2018年6月、グループ傘下でクラウド事業を手がけるアリババクラウドが「ET Agricultural Brain」と呼ぶAIサービスを発表。画像認識、音声認識、リアルタイムの環境モニタリングなどからなるこのサービスを利用して、日常的な豚の活動、成長指標、妊娠などの健康状態を監視する。例えば収量を改善すべき豚を自動で見分けたり、音声認識によって子豚を事故から守ったり、病気の兆候がある豚を早めに検知したりすることが可能になる。

中国・四川省の養豚業者、Tequ GroupはET Agricultural Brainを先行導入したことで、死亡率を3%まで減らせる可能性が出てきたという。また、1頭の雌豚が産む子豚の頭数が年に32頭と、これまでの数倍になると予測した。さらに大手果樹園ではET Agricultural Brainが大幅なコストカットに寄与したという。

独自の農業AIシステムを発表したアリババクラウドのサイモン・フー総裁(公式画像より)

早くから農業の合理化を進めてきた米国も負けてはいない。2011年、スタンフォード大学のOBらによりカリフォルニア州で設立されたBlue River Technologyは、機械学習、画像認識、ロボティクスを組み合わせた“スマート農機”を提供。広大な敷地を効率よく管理し、収穫性能を向上させるための最先端農業ソリューションを開発している。

最初に形になったのはレタスの間引き機能だ。大型トラクターの下面にカメラを設置し、ディープラーニングを用いた画像認識によって自動かつ等間隔でレタスを間引くことに成功した。これを受け、現在は「See & Spray Technology」を開発。カメラが雑草を見つけたら除草剤を自動的にスプレーして除草を行う技術で、主に綿畑で利用されているという。同社では今後、この技術をドローンの“目”に応用し、空中からの正確なSee & Sprayを展開していく構えだ。

See & Spray Technologyで雑草に除草剤を吹き付けている様子(公式YouTubeより)

インディアナ州の農業関連ベンチャー、Spensa Technologiesでは害虫駆除デバイス「Sentinel」に画像認識を活用する。ネットワーク化したIoT捕獲用ケースに入り込んだ害虫をケース内のカメラが自動撮影。学習済みのディープラーニングを用いて種類ごとに振り分け、ほぼリアルタイムでモバイルアプリやWebブラウザでその数を確認できる。駆除対象の害虫が集積率、そして害虫の傾向が瞬時に可視化されるため、今後の対策を立てやすくなる。それとともに、わざわざ害虫の確認に畑に足を運ぶ回数を減らせるため、負荷軽減につながるという。

Sentinelのイメージ(公式ページより)