店舗をプロモーションメディアとしてメーカーに提供

スマートレジカートの役割は、これだけではない。トライアルで取り扱っている商品のメーカーが、店舗内で自社商品をプロモーションするための“リテールメディア”として利用できるようになっている。

スマートレジカートのディスプレイには、利用者がバーコードを読み込ませたタイミングに合わせて、関連する商品の広告を表示させる。代わりに、その商品のメーカーからは、販促費・広告宣伝費を徴収する仕組みだ。スマートレジカートのディスプレイだけでなく、店舗の入口や店舗内の壁面に設置した大型ディスプレイも使って商品を印象づける(写真2)。

同店舗にはこのほか、買い物客が特定の商品が置いてある棚の前に来ると、その商品の広告を周辺のディスプレイに表示させたり、その商品を手に取ったタイミングで価格を変化させたり、といったことができる「スマートシェルフ」も設置してある(写真3)。西川氏は、これらのリテールメディアの取り組みについて、「テレビなどのマスメディアを利用したプロモーションは、コストが高い割に効果が見えにくい。リテールメディアならば商品の広告と販売が一体化するので、直接購買行動に結びつきやすい」と説明する。

(写真2)店舗奥の壁に設置した横長の大型ディスプレイ
(写真3)買い物客が来たら特定の商品をアピールする「スマートシェルフ」
棚の上に付けたセンサー(写真下)で人の動きを感知している。

スマートカメラで商品管理を効率化

前述した通り、トライアルではAIの目として、店内に約700台のスマートカメラを設置している(写真4)。そのうちの600台は商品単位で画像の取得を行い、商品棚の陳列状態とその変化を可視化している。従来は従業員が目視で行っていた作業をAIに代行させ、欠品を確認して自動発注も行う。残りの100台は、店舗内での買い物客の行動を可視化するために使われている。利用客の性別や年代を推定したり、通路での利用者の動きを分析している。

利用客の分析に使われているカメラはパナソニック製で、カメラだけで性別や年代が推定できるが、プライバシーを考慮して映像データは残さない。一方、商品棚を監視するカメラは導入コストを抑えるため、中古のスマートフォンを使って独自開発している。

(写真4)天井に設置されたスマートカメラ
商品棚を監視するカメラ(写真上)は、中古スマートフォンを使った独自開発。人物を識別するパナソニック製のカメラ(写真下)は、店内で威圧感を感じさせないようにポップなデザインに装飾している。

もともと小売業者としては、リアル店舗でどのように消費者に新しい買い物体験を提供し、効率化も実現するのかについて、いろいろなアイデアがあった。それがAIによって具体化できるようになった。「消費者の行動は、あらかじめ買うものが決まっている計画購買と、買う予定はなかったが棚に並んでいるのを見てついつい買ってしまうという非計画購買に分類できる。リアル店舗なら、家族や友人などとショッピングを楽しむことから生まれる非計画購買を喚起することで、新たな買い物体験を生み出すことができる」(西川氏)。

商品と利用者を絞って低コストで無人店舗を開設

現時点でAmazon GoやTakeGoのような未来型店舗を開設するにはコストがかかりすぎるが、もっと商品を絞り込み、利用者も絞り込めるようになれば、無人店舗を開設するハードルも下がりそうだ。

電動工具や物流用品などの通販を行うMonotaROは2018年4月、同社が事業者向けに通販で取り扱う工具や作業用具、研究用品などを販売する無人店舗「モノタロウ AIストア」を佐賀大学の構内に開店した(写真5)。無人店舗のシステム設計と運営はオプティムが行っている。

(写真5)佐賀大学の構内にある無人店舗「モノタロウ AIストア」