立ち上がる新しいタクシービジネス、カギはマッチング

これらのサービスにより、どのような移動が可能になるか、もう少し具体的に見てみよう。

まずは配車サービス。利用者はスマートフォンなどの専用アプリを起動し、画面上の地図をタップするなどして自分の位置や目的地を示し、配車をリクエストする。すると近隣にいる配車サービスの契約ドライバーが応答し、利用者がいる場所まで駆け付けてくれる。あとは目的地に着いたら降りるだけ。運賃はあらかじめ登録したクレジットカードで自動的に決済されるため、その場で支払う必要はない。

ポイントは、呼び出してから駆けつけるまでの時間が短いこと。Uberの場合は「平均6分」(Uber Japanの高橋正巳・執行役員社長)。路線バスを待つよりも短い。空車のタクシーを待ち続けることもないし、タクシー乗り場で長蛇の列に並ぶ必要もない。しかも、決まった乗り場まで移動する必要さえない。

もちろん、呼び出した場所の近くに車両がいなければ、到着までの時間は長くなる。近くで大規模なイベントなどにより特定地域での需要が増えれば、車両が足りなくなることも考えられる。ただ配車サービスの事業者は、「時間帯や道路状況、需要の増減を踏まえ、それでも平均数分を維持できるよう車両の数・配置を管理・制御している」(Uber Japanの高橋社長)。地域ごとの需要の動向をリアルタイムに把握し、例えば需要が急に増えてきた地域ではダイナミックに単価を上げる。こうすることでドライバーがその地域に自然に集まるように仕向け、利用者を待たせないようにする。これらの制御は、独自のアルゴリズムを用いた計算に基づいて実施する。この管理・制御の仕組みを含めたマッチングシステムが、配車サービスのミソだ。

国内での配車サービスで最も効果が期待されているのが、公共交通機関が少ない中山間地などに多い、高齢者を中心とする“移動弱者”向けの対策である。海外で展開されているように、タイミング良く同じ方向に行く人がそろえばライドシェア(相乗り)にしてもいいし、食事や購入したものの宅配、発送したい荷物のピックアップなどのサービスを組み合わせてもいいだろう(写真2)。

(写真2)Uberは配車サービスをプラットフォームに多様なサービスを展開している 
写真はランチボックスなどを配達する「UberEATS」の画面(UberのWebサイトより引用)。ほかに、荷物を配達する「UberRUSH」などもある。

都市部でも、配車サービスは便利な移動手段の一つになる。都心では公共交通が整っているとは言っても、乗る場所と目的地によっては、必ずしも使い勝手はよくない。「公共交通を使うより多少割高」くらいの料金で利用できるのなら、わずか数分で迎えが来る配車サービスは魅力的な選択肢である。さらにライドシェアがあれば、今よりも安価な料金でタクシーを利用できるようになる。

ロボット型も実用へ、ドライバー不足の課題を根本から解決

もう一方のロボット型の無人運転車サービスは、人の操作ミスによる交通事故をなくせる可能性が高いことと、ドライバー不足の問題を解決できる点で、インパクトが大きい。地方においては採算悪化から公共交通が廃止されたり、極めて運行頻度が低くなったりするケースが多い。代替手段としてのタクシーも、ドライバーの高齢化による人手不足と、人件費が売上高の70%以上を占めるという利益率の低さから台数が減ってきている。そういった「労働者不足が招くタクシー過疎化の問題も、無人運転が実現されれば解決できる」(ロボットタクシーの中島社長)。

ロボットタクシーは、2020年の運用開始に向け無人運転によるタクシーサービス事業の準備を進めている(写真3)。利用イメージは、無人運転の自動車を利用する点を除けば、前述の配車サービスとよく似ている。スマートフォンのアプリなどを使ってタクシーを呼ぶ。地図上で自分の位置や乗車場所を指定して、その場所までタクシーが来ることを目指すが、位置特定の精度を考えると、当初は網目状に停車ポイントを決めておき、そこで乗降する形態になりそうだ。

(写真3)ロボットタクシーが目指すのは無人で動くタクシー配車サービス
(写真提供:ロボットタクシー)

もちろん、タクシーだけではない。路線バスなどにも無人運転は適用できる。ソフトバンクと先進モビリティが設立したSBドライブは、タクシーよりも、むしろ「特定ルートを低速で行き来する公共交通としての実用化を優先して考えている」(SBドライブの宮田証COO)。こうして安全な乗り物であることを印象づけ、無人運転を社会になじませていく狙いである。

タクシーにせよ、バスにせよ、ドライバーが不要だから24時間運行が可能になるし、オンデマンド型にしても事前に予約しておく必要はなくなる。「ドライバーの人件費がかからないから、運賃も安く抑えられる。その分、様々なオプションサービスを付加することもできる」(SBドライブの宮田COO)。例えば、利用者の乗降を補助する車内案内係を乗車させるなどである。

課題は規制緩和、機能や地域限定で徐々に浸透

もちろん、自動運転や配車サービスを、前述のようなイメージ通りに実現するには、まだ課題が残されている。自動運転の実用化で最も高いハードルは法規制である。「車両には運転者がいなければならない」とするジュネーブ条約(道路交通に関する条約)に日本が批准しているため、ロボットタクシーやSBドライブが目指すドライバー不在での公道での自動運転は認められていない。

米政府の国家道路交通安全局(NHTSA)の定義では、自動運転は部分的な運転支援にとどまるレベル1、コンピュータ制御が操舵にまで及ぶレベル2など4段階に分けられる(表1)。完全に自律的に動く自動運転はレベル4である。ポイントは、「ドライバー不在」をどのように定義するか。例えば米グーグルは人工知能を連携させることで、ドライバーが同乗しているとみなされることを目指している。これに対してロボットタクシーが考えるのは、「遠隔監視機能と管制機能を併せて実装すること」(中島社長)である。考え方はメーカーやサービス事業者によって異なるが、いずれにせよ、ジュネーブ条約の改正が必要になるため、無人運転車が本格的に実現できるようになるのは当分先になる。

定義内容
レベル0 運転支援なし(どのような運転操作の場面でもドライバーに対して運転支援を行うシステムを搭載していない)
レベル1 運転操作を支援するシステム(横滑り防止装置、自動ブレーキなど)を1種類だけ搭載
レベル2 運転操作を支援する高度なシステム(車線維持=ステアリング操作とオートクルーズコントロール=加減速を1つのシステムで同時実現)を2種類以上搭載
レベル3 駐車場内や高速道路内など限定された交通条件で可能な自動運転など、条件付き自動運転システムを搭載
レベル4 完全自動運転システム(行き先を決めるだけで、乗員の運転操作が全く必要ない)
(表1)NHTSAの自動運転の定義

一方、Uberなどの配車サービスに関しても、国内では法規制の壁がある。タクシー業務として扱われるため、二種免許を持たないドライバーが業務を行うことはできない。海外で展開されているように、一般ドライバーが自家用車を使ってサービス提供できるようになるには法改正が必要になる。

ただ、提供地域や機能を限定すれば実現はできる。例えば無人運転のタクシーなら特区などで特定ルートを走るサービス、配車サービスなら既存の交通手段では十分な輸送サービスが確保できない中山間地域だけで提供されるサービス、といった具合である。取り組みが始まっている実証実験は、その原型といえる。

配車サービスも自動運転も、地方自治体からは早く事業を始めてほしいとの声が多い。そういった声に反応してか、安倍首相は2015年10月には国家戦略特区諮問会議で、「過疎地等での観光客の交通手段として、自家用自動車の活用を拡大する」と発言、11月には「2020年オリンピックで無人自動走行による移動サービスや高速道路での自動運転が可能となるようにする」と発言するなど、ライドシェアや自動運転の推進に力を入れていく姿勢を示している。

配車サービスに関して言えば、現在でも「公共交通空白地有償運送」の制度を利用することで、NPOなどが実費の範囲内で自家用車を使用した輸送サービスを提供できる。公共交通が整っていない地域で、規模限定にはなるが、運行管理者を1人置けば19台までは配車できることになっている。Uberはこの制度を利用し、2016年5月、京丹後市で一般ドライバーによるタクシー運用の実証実験を開始した。

今後は、移動手段に関しても所有から活用への流れが加速する。既に若年層は車の所有に興味を示さなくなり、車離れが進んでいる。自分で運転するのでなければ、移動中にゆっくり景色を眺めたり、SNSやゲーム、動画を楽しむことができる。そのための選択肢は今後も増えてくるだろう。無人運転や配車サービスは、そうしたモビリティのプラットフォームとして浸透していくことになる。

>>後編はこちら