ARを活用する技術も注目されている。工場などでのAR活用例としては、スマートグラスを通して機械の操作パネルを見ると、そこに操作方法やメンテナンス手順が表示されるといったものがある。これにIoTを組み合わせると、一段進んだ工場の見える化を実現できる。

具体的には、スマートグラスやタブレットのカメラを通して見た画像に、機械内部の温度や圧力の状況、稼働履歴、メンテナンス時期など、センサーで収集した情報を重ね合わせる。こうすれば、現場でのトラブル対応や予防を迅速に進められる。ARをもっと活用すれば、既存の機械に新たなパーツを組み合わせた場合の製造工程のシミュレーションを、現場で必要に応じて実施できる(写真3)。フレキシブルな生産活動を実現しやすい。このように工場でのVRやARの活用が進めば、大掛かりな施設が必要な風洞実験などもコンピュータ上で行うことができるので、さまざまな規模の工場において、より多品種の生産が可能になる。

(写真3)PTCのIoTプラットフォームに統合されたARのデモ
iPadのカメラを通して見たパーツ内部の情報を、画面に表示させている。

中小工場におけるスマート工場への対応

工場内の見える化をはじめとするスマート工場づくりは、大手企業の大規模な工場だけではなく、中小規模の工場にも広がり始めている。それが積み重なれば、「つながる工場」が現実味を帯びてくる。

金属加工を軸にした多品種少量生産の小ロット製造代行サービスを展開している三松の例を見てみよう。同社は現在、月に約1万件の注文を受けている。約7割は単品での受注である。さらに、同じ製品でも週ごとに納品する個数が大きく変動することがある。いわば変種変量生産である。三松は、この複雑な工程を効率よく進めるための方法を模索していた。そしてたどり着いた答えが、工場内にある運搬用台車の所在をリアルタイムに把握する仕組みだった。

同社の工場では、製造工程の途中にある部材や部品を都度台車に乗せ、次の工程に送る。ただ次の工程までの時間が1日以上空いたりすると、スペースが足りないなど、生産性を損ねることがある。他の作業の都合などで台車が所定の場所から移動させられることもあり、次に使う際に「工場内で台車を探しまわらなければならず、その時間が無駄になっていた」(三松 代表取締役社長 田名部徹朗氏)。

そこで同社は、工場内で使用する台車の管理をビーコンによって行う位置情報システムを導入した。採用したのはパナソニックが開発したシステム。電波干渉の影響を受けやすい金属加工工場で検証を行った結果、ビーコンなら利用できると判断した。

(写真4)台車に貼り付けられたビーコンと工場内に設置された自社製のビーコン受信機

三松では、もともと独自の生産管理システムを構築しており、「工番」ごとに工程や納期を管理していた。新システムでは工場内にある約250台の台車すべてにビーコンを装着(写真4)。壁などに設置した60個の受信機によってその位置を把握し、リアルタイムにコンピュータ画面上に表示させる(写真5)。こうして、工番に台車の位置情報をひも付けることによって、ものの流れと工程がリアルタイムに把握できるようになった。

(写真5)台車の位置は工場内に置かれた生産管理システムで確認する

将来的には台車の移動自体を人が行うのではなく、「ロボットが台車を取りに行ったり、台車自体が自走してロボットの所に来るようなシステムの構築を考えている」(田名部氏)。大手工場と比べて、多品種少量生産を基本とした中小工場では、作業工程の無人化は難しいと考えられている。三松ではAGV(無人搬送車)やピッキングロボットなども自社で開発しており、それらと位置情報システムを連携させることで、中小工場における無人化のテストケースを自ら構築しようとしている。